ふざけあってるような関係
心地よすぎて、怖いくらいに

「ねぇねぇ、ゴローちゃん
 俺、携帯変えたんだ」
真新しい携帯を上着のポケットから出して、北岡は帰ってくるなり言った
嬉しそうに顔をほころばせながら、
新しいおもちゃで遊ぶような、子供の顔をして

(・・・・・可愛い・・・・・・)

声に出さないながら、書類の整理をしていた吾郎はその手を止めて彼をみやり
いつものようにデスクについた主人にお茶を入れるべく、キッチンへと向かう
「ねぇ、ゴローちゃん 俺に電話かけてよ」
後ろ姿を追うように、声がかかり
「今ですか?」
振り返って、吾郎は北岡の顔を見た
「そうだよ
 やっぱり新しい電話の最初は、ゴローちゃんからの電話がいいよ」
にこり、
手の中に電話を持ち、ヒラヒラと手を振って、彼は笑った

やれやれ、

(子供・・・・・・・・)

彼が子供が嫌いなのは、彼もまたそうだからなのだろうか
小さく微笑して、吾郎は側の電話を取った

ピ.ピ.ピ.ピ.ピ.ピ・・・・・

ここへ来て最初に覚えたもの
彼へと繋がるナンバー
耳もとのコールにわずかに遅れて、ルルルルル、と
北岡の手の中のおもちゃが軽い音を鳴らした

「はい」
彼の顔がほころぶ
受話器から聞こえる音と、少しはなれた、それでも姿の見える場所で笑ってる北岡の声がほぼ同時に聞こえる
「由良です・・・・」
いつものように、
もうこれだけ長く一緒にいれば、声でわかるだろうに
律儀に吾郎は名乗って、それから目を伏せた
いつも、
彼に電話をする時、吾郎はこうやって目を伏せ
北岡の姿を想像する
今、どこにいるのか
車の中か、相手先のオフィスか、街の中か、それとも

「ゴローちゃん、どうしたの?」

いつものように答えた北岡に、吾郎はクス、と笑った
「・・・紅茶にします? コーヒーにします?」
くだらない内容
それでも心地いいのはどうしてだろう
受話器から聞こえてくる声、空気を伝って届く声
遠くて、近くて、近い声
「コーヒーがいいなぁ、疲れてるから甘いやつ」
にこり、
吾郎が顔を上げて、北岡を見遣ると同じ様に彼も笑った
「じゃあ、すぐに入れてきます」
うん、という返事を聞いて電話をきる
もう一度だけ、北岡に視線をやってキッチンへと入りながら吾郎は一人、微笑した

相変わらず、バカげているけれど
まるで子供のママゴトみたいだけれど

「お待たせしました」
「ねぇねぇ、ゴローちゃん
 当分、俺に用事の時は電話してね」
コーヒーのいい香が漂うオフィス
悪戯な目をして笑う、主人
「はい・・・・・」
「ここにいてもだよ」
「はい」
にこり、
満足気に笑う様子が、とても愛しくて
ここがこんなにも心地いいから
電話というものが届ける声が、

遠いようで、本当は近い

少なくとも自分達はそう感じることができるから
こんな遊びも、たまにはいい


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