片目盲目、見えなくても同じ

オロオロと、北岡は小さな病院の待ち合いにいた
真夜中
いつものごとく、トラブルに巻き込まれ電話で吾郎を呼びつけてから2時間がたつ
彼が来てくれて、北岡は助かった
今夜の襲撃者は計10人
どいつもこいつも、がたいばかりがデカイ男達で
さすがに一人では逃げ切ることができなかった
車を走らせながら吾郎に電話し、彼の指定した場所までなんとか逃げた
それから吾郎と合流して、北岡は疲れた顔で笑った
「ああ、助かったよ」
バイクでかけつけてきた吾郎も、主人の無事な顔を見て安堵を顔に出した
「追い払ってから言ってください」
そういう台詞は、と
彼は狭い路地で追っ手を引き受けた
それからは、爽快
吾郎の腕は、たしかに確かで、あんなチンピラみたいな奴等の10人くらい何でもなかった
見た目軽いパンチでデカい男が吹っ飛ぶ様はいつ見ても爽快だと北岡は満足する
彼の後ろで、ただ見ていればいいのだ
吾郎が自分を守るのを
少し離れて、絶対の信頼を置いて見ていればいい
全てが終わって、吾郎が振り返るのを

夜の闇に、それは一瞬だけ光った
「ゴローちゃ・・・・・っ」
声を上げたのと、何かの破片が散ったのは同時だった
「!」
パリン、と
鈍い音がして、吾郎の左のこめかみあたりにキラキラとしたものが飛び砕けた
「ゴローちゃんっ」
「来るなっ」
思わず駆け寄ろうとしたのを制されて、
だが、次の瞬間には吾郎の左に忍び寄っていた人影が地に沈められた
「・・・・・・・・・ハ・・・・・」
ポタポタと、黒い液体が落ちていく
血だろうか
そして、砕けて飛んだのは辺りに何本も転がっているビール瓶か何かか
「ゴローちゃん・・・・」
「・・・・・・・・大丈夫です、先生も、無事ですね?」
ようやく彼が振り返った時には、その顔の左半分が血に染まっていた
「病院・・・・・・・・・」
ガクガクと震えそうになるのを必死でこらえながら北岡はつぶやく
そうだ、病院へ行かなければ
彼の血
こんなに大量の彼の血など見たことがない
動揺して、それからの記憶はあまりない
気づけば、真夜中の道を車で突っ走っていた
そして今、彼の懇意にしている個人医を訪ねている

「頭は縫いましたから大丈夫ですがね、
 ガラスの破片が角膜を傷つけてましてね、それが・・・」
しばらくして出てきた医者はそういった
ガン、と衝撃が降りてくる
「・・・・治るんだろうな?」
「経過を見ていかなければ何とも言えませんが、最善は尽くします」
「最善じゃだめだ、治せっ」
思わず、医者にくってかかった
ああ、何ということだ
角膜?
目をやられたってことか?
もしかしたら見えなくなるのか?
どうしたらいい?
もし、治らなかったらどうしたらいい?
「先生、」
グルグルと、頭に血がのぼっていたのも その声に一気に消えた
「ゴローちゃんっっ」
慌てて駆け寄ると、頭に包帯を巻いて、それから左目にも同じように包帯を巻いて、
彼が苦笑してそこにいた
「すみません・・・油断して・・・」
「ちがうっ、いいんだっ
 そんなことじゃなくて・・・・」
ああ、何て痛々しい
痛いだろうか?
どうしよう
このまま彼の目が見えなくなったら
「大丈夫ですよ、」
彼は、困ったように少しだけ笑って、
それから医者にぺこりと頭を下げた
「帰りましょう、先生 明日も仕事ですから」

家に戻ると、彼は北岡のために紅茶を煎れた
「・・・・・ゴローちゃん、何でそんなに平気そうなのさ」
大分と、落ち着きを取り戻したものの 北岡にはまだショックが大きく残っている
同じ説明を医者から聞いているにも関わらず、どうして彼はそういつも通りなのだ
「平気ですよ、別に
 多少見にくいですが、普通に見えますし」
「だって、そのまま失明するかもしれないんだよ?!」
「しないかもしれないじゃないですか」
無言で彼を睨み付けると、彼は苦笑して側へきた
「これ飲んで落ち着いてください」
「落ち着いてるよっ」
テーブルに置かれた紅茶が、いい匂いを漂わせている
「大丈夫ですよ、丈夫ですから」
「・・・・・・・そーゆう問題じゃないよ」
見上げると、いつものように彼は立っている
その表情は、むかつくくらいにいつも通りで
「ゴローちゃんは自分が大切じゃないの?」
「先生の方が大事ですから」
先生が無事なら、と
彼はまたいつものように笑う
「・・・・・・身体張るような給料あげてないよ」
「もらってますよ」
北岡は、うつむいて
それから浅く息を吐いた
大丈夫だろうか、本当に
あの医者は名医だし、現代医学は驚く程に発達してる
失明なんてことにならないだろうか
彼の大事な目が、自分のためなんかに使い物にならなくなったりしないだろうか
「先生」
吾郎の声も、聞こえない程に北岡の思考は沈んでいく
「先生」
何度目かの呼び掛けにも反応しない北岡に、吾郎は溜め息をついて彼に触れた
「先生、」
「え・・・・?」
彼の座っているソファに膝をつき、そのままそっと彼の身体を倒す
「・・・・・・・ゴローちゃん?」
ポスン、と
完全に寝かされ、北岡は吾郎の顔をみつめた
「平気ですよ
 もし両目とも見えなくなっても、先生のツボは心得てますから」
「!!」
そのまま、吾郎は目を閉じて北岡の首筋にくちづけを落とした
「ちょ・・・・・・・・・っ」
「だから、大丈夫です」
何がだから、と
言おうとして、今度は手でシャツをたぐられ中をまさぐられた
「んっ」
こんなに気が沈んでいるのに、まるで関係なく身体は反応し、
吾郎は目を閉じたまま、いつもの場所へと刺激を与える
「ご・・・ゴローちやん・・・・」
彼の腕にしがみついて声を上げる
首筋から、下へと彼の舌が這い回り、
同時に疼き出した中心をその大きい手で包み込まれた
「ん・・・・っあふ・・・・っ」
ザワザワと、身体中を快感が走っていく
優しい愛撫
いつも彼がするのと同じ、北岡の感じる場所を知り尽くしたやり方
「あ・・・・あっあっ」
ビクビクと、背が反り声がどうしようもないほどに濡れる
「ね、平気でしょう?」
「あぅ・・・・あぁぁっ」
彼が耳もとで笑うのを感じた
目を閉じたままで、
彼は何でもない顔をして、いる

何度も何度も愛撫を繰り返され、
優しくひどく身体のいたる部分を撫で上げられ、
北岡は頭の芯が麻痺する寸前まで追い上げられていた
「あ・・・あっ、ゴローちゃん・・っっ」
服はいつのまにか全て脱がされて、彼の指が奥まで入り込んで中をゆっくりと開くようにかき回している
「あふっ、あぁ」
入れて、と
喘ぐ息の下言った
ツ・・・と指がぬかれ、かわりに固いものがそこにあたる
「ゴローちゃ・・・・」
「先生」
優しい彼の声
それから、濡れて求めている入り口に彼の圧力がかかった
ゾクリ、と波に似たものが身体から沸き上がる
「あ・・・・・・・・」
彼のものを飲み込みながら、北岡の身体はほとんど限界をむかえていた
「あ・・あぅ・・・・・・・・」
いかせて、いかせて、と
最後の刺激を求めて、北岡は吾郎の身体にしがみつく
「ごろーちゃ・・・・・・・っっ」
「先生」
一番奥まで彼を受け入れ、
だがそこで吾郎は動きを止めた
「先生」
「あ・・・あう・・・」
ギリギリで止められて、いい様のないもどかしさが北岡を支配する
「先生」
「な・・・何・・・?」
喘ぎながら目を開けた
「目、やっぱ見えないと困ります・・・・
 先生のいく顔、見れない」
開けてもいいですか、と
彼の言葉に、ゾクリと
また身体に高揚が満ちた
「いいよ・・・いいよ、見てて
 ちゃんと、見てて・・・・・・っっ」
そして、
彼で、いかせてと
それだけ言った
吾郎が目を開けたのをかろうじて視界の端に捕らえて、
それからは、ただもう与えられる強い衝撃と繰り返される愛撫に果てた
彼のものを、奥に熱く感じながら

ぼう、と北岡は彼が髪をすく感触を感じていた
「ゴローちゃん・・・・・ 」
「はい」
いつもの落ち着いた声が返ってくる
「・・・・よく考えたらね、俺が心配してやることなかったよね」
吾郎の手は相変わらず、ゆっくりと北岡の髪をすき
それに気持よさそうにしながら北岡は悪戯っぽく笑った
「ゴローちゃんは俺を守るのが仕事だもんね」
「はい」
「うん、じゃあもし、ゴローちゃんの目が治らなかったら
 その時は俺のをあげよう」
それでふと、彼の手が止まって 困ったような顔が覗き込んできた
「俺は目が片方でもあんまり不自由しないけどね
 ゴローちゃんが片方しかないと戦いにくいでしょ?」
だから、と
北岡は笑った
「ゴローちゃん的には俺の目もらっちゃうのは気がひけるだろうから
 何としてでも治さなきゃね」
俺が心配するまでなく、自力で治すよね、と
それで吾郎は少し笑った
「はい」
見えないと、不便だということがわかったし
その言葉に北岡も笑った
「俺のあんな顔見れる特権、みすみす失くすなんてバチが当たるよね」
はい、と
いつもの返事に、北岡は満足した
それなら大丈夫だ
心配などしなくても、吾郎の目は失明したりはしないし
もししたとしても、かわりはここにある
北岡は目を閉じた
盲目、それも悪くない


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