悲しいくらいに、残るのは残像

ねぇ、ゴローちゃん
君は一体どこまで俺を理解してる?
ねぇ、優しいゴローちゃん
肯定しか許されないから、うなずくの?
ねぇ、可哀想なゴローちゃん
俺がいなくなったら君はどうする?

依存しているのはむしろ俺
いなきゃ眠れないのも俺だけ
悲しいくらいに捕われたこころ
残るのは君の背中の、残像

その白い身体に指を這わせて、ひどくゆっくりと快感を誘いながら
吾郎はそうっと北岡の目を見た
どこか、ありもしないものを見ている目だ
こういう時、彼はロクなことを考えていない
暗い影が、彼の頬をよぎっていく
「先生・・・・・・・・・?」

真直ぐな君には、俺のことは理解できないだろうね
君は、時々頑固で、
俺はいつも我侭で、
まるで交わらない2本の電信柱みたいだ
細い線で繋がって
まるで、それは俺と君のささやかな絆

理解してほしいなんて、言わないよ

彼のうすい唇に、自分のものを重ね、ピクリと反応した舌をからめとった
奪うように、奥深くまですべりこみ、
そうして、やわらかく歯をたてる
「・・・・ん・・・・・・・・・・・・・・ぅ・・・」
長くそうして、
彼が息苦しそうにするのを見て、ようやく安堵した
ああ、今やっと北岡はここにいる
「先生、ちゃんとオレを見てください」

君の目は強い
それから、腕も、
俺をすくいあげるように抱きかかえ、身体中をかき回して
まるでけだものみたいに奪っていく
貫かれた瞬間に見えるのは、君の顔でもない
薄暗い部屋でもない
残像
目に焼き付いた、悲しい残像
君の後ろ姿の

「ゴローちゃんは・・・俺に・・・繋がれたままだよ・・・」
北岡は、荒い息の下 とぎれとぎれにそう言った
「ゴローちゃんが・・・・」
言葉を紡ごうとする北岡を、吾郎は容赦なく攻め上げる
「あ・・・・・・・っ」
ビクン、と背を反らし
「あ・・・・・・・・・あふ・・・・」
その快感に浸り、言葉は消える
「ご・・・ゴローちゃ・・・・・・・・・・」
熱をもったそれは序々に、だが確実に限界へと追い上げられ
北岡の思考も完全に白の一色になる
「あ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ」
咽を震わせ、宙を見つめ、果てた後にその腰を抱いて無理矢理に己自身を埋め込んだ
「ひ・・・・・・・・・っっ」
悲鳴が上がる
力にまかせて奥まで突き上げると、声にならない声が上がった
「あ・・・・あぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」
まただ、
また、彼はここにいない
「先生、」
その肩を乱暴にベッドへと押し付け、めちゃくちゃに彼を犯した
「あ・・・あぐ・・・・・・・・・・っ」
ギシギシと悲鳴を上げるベッドに、深く身体を沈め
北岡は、喘ぎながら視線をそれでも一点に向けていた
何もない、その場所に
「何を見てるんですか、先生・・・・・・・・・・・・・っ」

ゴローちゃん、ここにいてね
理解なんかいらないから
欲しいなんて、ねだらないから
君が俺に背を向けるのは、その背に俺を守る時だけ
けして、去ってはいけない
去ってはいけない

やきついているこの影は、何なんだろう

身体の奥に、吾郎の熱いものを受け それで北岡は意識を戻した
「う・・・・・・・・・・・・・・つ・・・」
苦しげにしたら、そっと髪をなでられ それで相手の顔をその目に写した
「・・・・・・・・ひどいよ、俺 何かした?」
なんて乱暴な行為だったんだろう、と
身体に残った痛みに思う
「怒ってるの?」
上目使いに彼を見て、そうして浅く息を吐いた
「明日、立てなかったらゴローちゃんのせいだからね」
仕事、休むからね
脅しに似た、でもどこか子供の駄々のようなその声に吾郎は笑う
「何? それともゴローちゃんは本当はこーゆうのが好きなの?」
それには、いいえと短く返事が返ってきた
ということはやはり、何か彼の気に入らないことでもしたのだろうか
気づかないうちに
それで今のは、その仕返しなんだろうか
「俺にはゴローちゃんがわかんないよ」
肩をすくめてみせて、それから彼の方へとすり寄った
「わかんなくて、いいんだろーけど」
理解はいらない
違う人間だから
理解はできない
人は、本当のことばかりを表に出す生き物ではないから
だから今は、これだけでいい
「ここにいてね」
「はい」

悲しいくらいに、違う俺達
わかりあいたくもない、
求めても掴めないと始めから知っているものだから
そんなものはいらない
嘘と嘘の狭間で、この関係が終わるまで
焼き付いた残像が目の前にやってくる、その時まで
それまで俺は、ここで眠る


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