あまいゆめを見よう、あたたかいホットミルクみたいな

ある日、疲れて仕事から帰ってきたら仕事場の机の上に見知らぬ汚い猫がいた
「・・・・・・・・・」
何、これ?
どこから入ってきたのだろうか
防犯設備ばっちりのこの家に、猫の入りこめるすきなんてないと思うんだけど
「あ・・・・・・・すみませんっっ」
キッチンから慌ててゴローちやんが出てきたのを見て、ああ、と
やっぱりこの男か、と
自然溜め息が漏れた
「あのね、ゴローちやん
 俺が動物と子供が嫌いだって知ってるでしょう?」
彼は手に、ミルクの入った皿を持っている
「すみません・・・・・・・あんまり弱ってたので・・・」
「とにかく早くどけてよ、これ」
「あの・・・・元気になるまで面倒見てもいいですか?
 本当に弱ってるんです・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・飼うってこと?」
「元気になったら飼い主を探しますからっ」
必死の目しちゃって、
こんな汚い猫なんかのために、お願いされちゃったよ
俺にどうしろっての?
しょうがないな、って許可してやればいいの?
動物は嫌いだって言ってるのに
「・・・・わかったよ、だから早くどけて」
机の上には大事な書類が山程あるんだから
破られたり、汚されたりしたら大変だよと
呆れ顔で、猫を大事そうに抱き上げた彼の顔を見た
まったく、優しいのはいいけどもうちょっと気を使ってほしいよね
猫ごときで、俺を不機嫌にさせてどうするのさ
「それ、早くどっかやってよ?」
こっちは疲れてるんだから、と
ドサリとソファに座った
いつもなら、僕が帰ってきたら世話をやいてくれるのに、今日は猫にかかりきりでそれもなし
なんだか、腹が立つ
猫なんかにやきもちなんてのも滑稽で口にもできないけれど、
それでもなんだかゴローちゃんを取られたみたいで、気分はすこぶる良くないんだな

シャワーを浴びて出てくると、いつのまにか猫がきれいになっていた
「あれ、洗ったの?」
「はい、あんまり汚いんで・・・・」
ミルクを飲んで少し元気になったのか、さっきはぐったりしていた猫も、今はすわってこちらを伺っている
「ふーん・・・・洗えばまだ見れるじゃない
 真っ白できれいだね〜」
灰色で、ドロなんかがついてて、げっそりと濡れた印象だった猫が、きれいに洗われて乾かされて 今は真っ白のふわふわの毛をしている
そうして見ると、まぁさっき程は不快に思わない
「良かったです、食欲もあるし
 すぐに元気になると思います」
「そう、それは良かった」
こんなにきれいだったら飼い主もすぐ見つかるだろう、と
安心したら、急に猫がすくりと立った
「え・・・・・・・・・・」
とてとて、と歩いて奴は足下まできて
ソファに座っている俺の膝の上にぴょんと乗った
「え・・・・・・・・?!」
元気じゃないか
いや、それより何乗ってるんだ
いや違う、突然何なんだ
俺に、どうしろっていうんだ
にゃあ、と小さな声でひとつ鳴くと、奴は俺の膝の上でまるくなった
「ちょっとゴローちゃん〜」
どうしようもなくて助けを呼ぶ
「どうかしましたか?」
片付けをしていた彼がキッチンから出てきて、そして俺の膝の猫を見て驚いたように笑った
「なつかれましたね、先生」
「えぇ?! ちょっと・・・・迷惑だよ〜」
猫ってこんなにすぐになつくものなのか?
動物になつかれたって困ってしまう
「そんな・・・扱い方も知らないのに・・・」
それに動けないじゃないか
こんなところに座られたら
「先生、いい匂いがするのかな?」
「・・・・・石鹸の匂いが好きな猫なんかいるの?」
「さぁ、撫でてあげたら喜びますよ」
「・・・・・・・・」
どうしようもないので、ゴローちゃんの言うとおりにそっと猫の背を撫でてみた
柔らかい
それから、あたたかい
「・・・・・・・頼り無いな〜なんかやっぱり好きじゃないよ・・・」
あまりにも小さすぎて、怖いくらいだ
「そうですか? 可愛いじゃないですか」
相変わらず 優しい目をして彼は猫の背や、頭や、咽を撫でた
ゴロゴロと、気持よさそうに猫が少し顔を上げた
「あ、この子 今ごろごろ言った
 この子の名前、ゴローにしようか〜」
途端ぴくりと猫が起き上がる
「あ、ゴローが起きた」
僕の膝の上でひとつのびをして、
それから猫は僕のことを見た
そんな気がした
すりすりと、猫が腹のあたりにすりよってくる
「・・・・・・本当に先生になついてますね」
おかしそうに彼が言って、それで俺も少しおかしくなった
変なの
自分を嫌ってる人間になついてどうするんだ
野生なんだったら、もう少し警戒心ってのを持たないと
「まったく、変な猫」
だけど、ふわふわの毛は手に気持よくて、その上奴がすりよってくるもんだから、なんとなく可愛いところもあるんだな、なんて
思っていた
そると突然、その猫が取り上げられる
「?」
「先生、お食事ができてるんです」
猫をとりあげて、ゴローちゃんは言った
「ああ・・・うん・・・」
驚いた
急にするから、びっくりするじゃないか
抗議しようか、と
彼の顔を伺ったら、それはそれは可愛い顔をしていた
やきもち、みたいな

「あ、ゴローちゃん
 ゴローが俺になついたから妬いてるんだ?」
意地悪気に言ったら、彼は無言でうつむいた
猫はしっかりとその手に抱かれている
「ゴローちゃんが拾ってきた猫だもんね〜
 ゴローちゃんが面倒みてあげてるんだし
 なのに俺になついたから妬いたんだ〜」
彼は、無言でスタスタとキッチンへ向かった
可愛いなぁ、
こんなことで妬いちゃって
そう思った時、目の前に白い物体が飛んできた
「え?!」
「あっっ」
突然、猫がゴローちゃんの手をすりぬけて俺めがけてジャンプした
トス、
胸のあたり着地した奴は、そのままがりがりと爪をたてて俺のパジャマの首元へと入ろうとする
「うわっ?!」
驚いたのと、衝撃におもわずドスンとソファに倒れた
「先生っ」
「わーーーーーーーーっっ何なんだ突然?!」
そのすきに奴は完全にパジャマの中に潜り込み 中でもごもご動いている
「ひゃあっ、何?!
 何してんの?! ゴローはっっ」
くすぐったい
それから、爪がひっかかって痛い
「あはは、くすぐった・・・・・っっ」
あまりにも突然すぎて、あまりにも意味不明で
なんだかおかしくなってきた
「あはっ、あいたたっっ」
くすぐったいのか、痛いのか
「ゴロー何してんのっっ」
奴をひっぱりだそうとしても、重さとくすぐったさとで、腹に力が入らない
起き上がれなくて、猫をどうしようもない
「ちょっとゴローちゃんっ、助けてってばっ」
笑いながら、言った
それと同時くらいに、彼の手がパジャマにかかって それを思いっきり胸まで捲り上げられた
むず、と彼が猫をつかむ
そして、とす、と床に放した
「あはは、息苦しかった〜」
乱れた呼吸を整えようと、やっとソファから起き上がった
だが、それも一瞬で、今度はゴローちゃんの体重がかかってきた
「え?!」
ポスン、
また寝かされる
「何? どしたの?」
パジャマの上着は捲りあげられたままで、
露になってる胸のあたりに、彼が口つけるのが見えた
「ひゃっ」
感触に声が上がる
自分でもびっくりする程の声
「ちょ・・・・ゴローちゃん、どーしたの? 急に」
「・・・・・・・逆です」
「は?」
また口づけられる
今度は突起を、舌で舐め上げられ また声が上がった
「あっ、あふ・・・・・・・っ」
びくびく、と背が反る
「何? 何が逆・・・・?」
彼の顔を見ると、怒ったような顔をしていた
「猫にあんな名前つけないでください
 あれは明日、飼い主探してきますから」
めずらしく、憮然とした調子で彼は言った
その言葉に、ピンとくる
ああもしかして、
もしかしてこの男は、俺じゃなく猫に妬いてたのか?
あの猫があんまり俺にベタベタして、
あげくに自分の名前で呼ばれたりして
だから妬いてたってのか?
柄にもなく、こんな強引なことして?
(・・・・・・・・・可愛い奴・・・・・・・)
俺の頭を読んだのか、彼は少しだけ照れたようにうつむいた
それから、その顔をかくすように俺の胸に口付けをくりかえす
「ひゃ・・・・・・・・・・・・」
そこら中に舌を這わされて、ゾクゾクと快感が背を上ってきた
「ごろ・・・ちゃん・・・・・」
「先生の身体を触っていいのはオレだけなんです」
むっすりと、彼は言った
そんな言葉めったに聞けない
彼が妬いてくれてるなんて
こんなこと言ってもらえるなんて、猫もたまには役に立つじゃないか、って
思ってしまう
心地いい優越感に、浸ってしまう
「そーだよ、もっと触って・・・・・・」
目を閉じた
そうしたら、すぐにくちびるにキスをくれた
彼の、こういうところが好き
俺の欲しいものは何でもくれる
俺の、今一番欲しいものをわかってくれてる
「俺にこんなことできるの、ゴローちゃんだけだよ」
返事のかわりに、もう一度長いくちづけをもらって
それで俺は笑った
「あの猫、ここで飼ってもいいよ?」
「だめです、」
即答だった
同時に、そわそわと熱を持った中心に触れられた
「あぁ・・・っ」
一気に思考が飛ぶ
「あ・・・あふ・・・・・・・・っ」
彼の手は優しく、適格に俺を高めて導いていく
話してる余裕も一気に消え、猫のことも頭から消えた
快感だけ
彼の与えてくれるものだけが、身体の全てを支配しようとしている
「あ・・・・・っ、あっ、ゴローちゃん・・・・っっ」
必死に彼にしがみついたら、強い腕で抱き締めてくれた
やがて、意識がグラグラ揺れて
それで、彼の手にいった
彼の名を、呼びながら

「傷、ついてますね・・・・・」
ぼんやりとしていた俺の身体をなでながら、ゴローちゃんが苦笑していった
「何?」
「猫のひっかいた傷がちょっとついてます
 ・・・・・先生の肌、白いから目立つ」
ああ、と
それでことのはじまりを思い出した
「・・・・・・すぐ消えるよ、そんなもん」
「そうですが・・・・」
撫でている彼の手を握った
「・・・続き、する?」
俺はいかせてもらったけど、まだゴローちゃんは何もしてないし、と
言うと彼は、少しだけ笑った
「先生の夕飯が先ですね」
冷めてしまいます、と
彼はいうと、もう一度だけキスをした
優しい、触れるだけのキス
心地よさに目を閉じる
気持ちいい
彼の側は居心地がいい
「ねぇ、ゴローちゃん」
支度に立った彼の背中に言った
「明日の朝、コーヒーじゃなくてホットミルクがいいな」
あの子と同じやつ
今はおとなしく、こちらを見て見ぬふりをしている白い猫と同じやつ
あまい、こんな時間みたいな
彼の側という、空間みたいな
「わかりました」
彼が笑う
それで俺の機嫌はまた良くなる
ああなんて、支配されてるんだろうなんて思いながら彼を見遣る
それでもここが心地いいから、手放せないとひとりごちて


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