■つめたいひかり■ 1 ■ 2 ■ 3 ■ 4 ■ 5 ■ 6 ■ |
つめたいひかり scene.1 |
シンとした夜 キレイな、ハヤテ 最初に身体を重ねたのはいつだっただろう 何を、考えていたんだろう 「オレはハヤテが好きだよ・・・」 「何で笑うんだよ そう、まるで気でも狂っているかのように 「大事だよ」 ハヤテのハヤテという自我さえも 二人して、ベットへと倒れこむ 獣の欲望が頭をもたげる 「ハヤテ・・・・好きだよ・・・・っっっ」 その生さえも 抵抗しないハヤテ オレがハヤテを好きなんだ いつか仲間に言ったことがあった はじめて好きだと告げた時 オレじゃなくても同じことをする 「お前くらいだろ それは少しもなぐさめにはならない オレの時もそうだった、と そして真夜中 つめたいひかりの月がのぼる |
つめたいひかり scene.2 |
暗い森の中 ヒカルはただ歩いていた いつからだろう 「ハヤテか好きなんだ」 そうか、と 「でもそれは 恋や愛という感情じゃない」 間違えてはいけない、と彼は言った 恋や愛なんか知らない ハヤテは誰かをこんなに好きになったことがないから だから、わからないんだ 「・・・・・可哀想なハヤテ」 そしてヒカルは自嘲した
「いいよ、お前が望むなら」 それが彼のこたえ 「いいよ、それでお前を失わずにすむなら」 つきはなされたら、側にはいられなくなる 「差がありすぎるんだよな」 つぶやいてヒカルは苦笑した 「好きにしたらいい」 それだけ言うのがやっとの、疲れ果てた可哀想な人 こんなにも違う ああ、ハヤテはオレがいなくても本当は平気なんだ お前を失うくらいなら、と自己犠牲を払っているけれど 「最低・・・・・そんなの絶対許さねーよ」 つぶやきは冷たく 「放してなんかやんねーよ」 相変わらず、月はつめたいひかりを放つ |
つめたいひかり scene.3 |
月は静かに地上を照らす けだるい身体を、ハヤテはゆっくりと起こした 「そうやって、おまえはいつもオレを見ないんだな」 痛みをたたえた眼で、泣きそうな眼で言うあの少年 「ハヤテ、こんなにも好きなのに」 幼い頃から見てきた少年 「おまえを抱きたい」 獣みたいな、眼 「好きなんだ、ハヤテ」 ああ、と 「・・・・どうして、あのままじゃダメなんだ・・」 つぶやきは、少年に届かない とても、哀しかった 「恋はいつか冷める」 こんなにも想ってるんだと言った少年 「ヒカル・・・どうしてダメなんだ・・・」 想っている 「ハヤテにオレがいらないなら、オレはここにはいられない」 冷たい眼をして言った少年 「好きにしたらいい」 おまえを想っているから 「・・・・・何でもするから・・・」 想いはすれ違う そうして二人、どこへゆくのか 「ヒカル・・・・・・・」 見ていたもの いつから、あの少年は笑わなくなったんだろう 「ヒカル・・・笑って・・・」 そのためなら、なんだってするから 「ヒカル・・・・・・・・」 痛い声 どうしたら、あの少年は幸せになれるんですか? 月はただ、シンシンとひかりを降ろす |
つめたいひかり scene.4 |
森に朝か来ると、淡いひかりがあたりを包む 「・・・・なんで楽になれないんだろう」 そんなことを考えながら朝を迎える 「失くさないために、ここにいる」 そう言った彼の想いが、わかる時が来るんだろうか うつむいてヒカルはまた考える 朝日の中、ハヤテはベットに座っている ガタン・・・と 「ハヤテさ、こーゆうのって辛い?」 耳の奥で妙な音がしていて 「何・・・・・・・・?」 悲しいんじゃない 「ヒカル・・・・」 それは哀しい名前 少年の想いは届かない |
つめたいひかり scene.5 |
森を歩きながらヒカルは絶望を見つめていた 「・・・ごめん」 心が痛かった 「あきらめられないから、消えるしかないんだ」 想いは消せない いっそいなければ、 そんなこと、考えたことがないとは言えなかった 「・・・・消えよう」 それしかヒカルには、できないから どこまでも歩いて、どこまでも遠くへと歩いて 誰に、救えるというのか 「ハヤテ・・・・・頼むから・・泣くな・・」 「オレがやめないと」 いつでも幕はひけた 哀しく、少年はその場に座った |
つめたいひかり scene.6 |
2日たっても、ヒカルは戻ってこなかった ただもう無意識に、その森へとかけてゆく 「わかつてないのはお前の方だ・・・・!!」 「・・・・・目をあけて・・・・」 「ヒカル・・・違うのに・・・」 ポタポタと涙が落ちる
森の中、少年はつぶやくように言った ああ、と この先もきっと 少しすれ違ったまま歩いていく二人 森に光はささない |