ZERO-17 揺るがない心 (蒼太の過去話)


蒼太は 屋敷内を必死に逃げていた
指定の箇所に爆弾を仕掛けることが今回の蒼太の仕事で、1時間前から作業に入っている
だが、屋敷はどこの王宮かという程広く、警備の数は並ではなく
この時期だけの増員の警備として紛れ込んだ蒼太は今、作戦遂行中に別動の警備隊に見つかってしまった
今夜はこの屋敷で会合が行われており、そのためにこの街中の警察組織から警備に人員を総動員しているかのような大騒ぎ
それでも人手が足りないと、地方から何人か人を呼んで人数を揃えている
それに紛れた蒼太と鳥羽の仕事は、ここで行われる会合で有利に話を進めるための場のセッティング
どうしても譲れない案件があるのだと、会合の一週間前に依頼してきた男は、死者を出さず、だが確実に自分が主導権を持って会を進めたいのだと言って高額の報酬を約束した
しかし、何といっても一週間しか準備期間がなく
死者を出すなという条件付
ろくな準備もできないと、誰もが断って 鳥羽のところに話が来た
「荒っぽくていいなら、1つだけ案がある」
その一言で、今回の仕事が決まった
そして今夜の決行の日を迎えている

(なんであんなとこに人がいるんだ・・・っ)
事前に入手した警備経路と時間割では この時間さっきの場所は無人のはずだった
もう100個以上もの爆弾を設置して、残り3個
そんな時に、いるはずのない茂みから人が出てきて本気で驚いた
一人くらい いなくてもバレないと思い ここでさぼっていたのだろうか
出会い頭に叫び声を上げられて 慌てて気絶させたときには時すでに遅し
近くを巡回していた別の者達に見つかって 今や侵入者だと騒ぎになっている
(まずい・・・っ)
鳥羽に指定された時間まで あと2時間くらいあったから この爆弾の設置は楽勝のはずだった
この一週間で鳥羽に叩き込まれた爆弾の取扱いに、蒼太は全身に冷や汗をかきながらも なんとか今まで無事にきている
一歩間違えればドカン、とまではいかないものだけれど
それでも、少しでもやり方を間違ったり手元が狂ったりしたらバチ、と火花が散る
すると無傷ではすまない
一週間の間に毎日のように それで指先に火傷や傷を作って 今蒼太の指先はボロボロになっている
(どうしよう・・・、これ以上騒ぎが広まったらまずい・・・)
逃げ回れば逃げ回るほど、広範囲に自分を探す者を作ってしまう
全ての爆弾を設置し終えた後なら、大人しく捕まった後 逃げるチャンスをうかがってもよかったが 今はまだ仕事が終っていない
ここで捕まったら 残りの仕事ができない
計画が狂うと鳥羽に迷惑がかかってしまう
(・・・どうする・・・っ)
思って、広い屋敷内の、外に通じるドアをあけた
そこで、何人かの男に取り囲まれた

乱暴に床に押し倒され、頭をつかまれて何度か床に打ち付けられた
視界がグラグラする
両腕が縛り上げられて 抵抗できない体制にされ 立たされる
フラ、と
身体が傾いたのに、ツ・・・と額を血が滑っていった
まずい、と思った
このまま拘束されたら、仕事が中途半端になってしまう

蒼太が別室に入れられた頃には、屋敷の騒動はおさまっていた
会合は続いているのだろう
それはそれで助かったけれど、このたくさんの男達の中から どう逃げ出すか蒼太は迷った
催眠ガスは持っているけれど、これを使ったら死者が出る可能性がある
かといって、一人でこの人数を相手に丸腰で戦って勝てる気はしなかった
腕が縛られてロクに動くこともできないし
「どこの者だ、何の目的で何をしていた」
一人の問いに 蒼太は口を閉ざして目を伏せた
これも鳥羽に教え込まれている
尋問や拷問に対しては、何も言わない
何か言うとしても、その身に充分な責めを受けてから、と
でないと、吐いた言葉に重みがなく相手は信用しない
少なくとも俺はすぐに口を割る奴の言葉なんて信じない、と
そうやって 鳥羽から拷問を受け続けた日々のおかげで、蒼太はこういう状況でも恐怖はない
時には わざと相手に捕まって拷問を受け、その後 嘘の情報を流すのに使ったりもする
この身体でできることなら、何だってやる
今の蒼太は、そうやって仕事をしている
だから今も、できるならさっさと拷問でも何でもいいから進めてくれと思っていた
とにかく あと2時間以内にここから脱出しなければならない
「例のやつ やれよ」
「強情張ってると痛い目みるぜ?」
クツクツと、嫌な笑いが部屋に響いて、一人が短い鞭を出してきた
「脱がせろよ、服着てちゃ痛くないだろうからなぁ」
「少しは手加減してやれよ?あんたがやると肌が裂けるだろ」
この場を楽しんでいるような会話が飛ぶ
朝からずっとこの屋敷の警備をさせられて、休みもなく この者達も退屈だったのだろう
さぼっている人間がいるくらいだから、全員が全員 マジメに警備しているわけではない
今も、確実に現場を放棄してここで楽しんでいる者が何人もいる
「縛ってるからここまでしか無理だな」
「じゃいい、それで」
蒼太の制服のボタンをはずし、肩を露出させ縛っている腕のところまで服を剥ぎ取って 男達は蒼太を囲んだ
俯いたまま、来る痛みを覚悟する
同時くらいに、最初の一発が胸のあたりに当たった

「・・・・っ」
バシ、バシ、と
音は定期的に響き、合間に男達の薄ら笑いの声が聞こえ
じわ、と血の滲み出した肌は、蒼太の体温を上げていった
「こいつ、強情だな」
「いいかげん、疲れてきた
 誰か交代しろよ」
「じゃあ俺がやる」
20分も打ち続けると 鞭をふるう方が疲れてきて交代する
それを4回繰り返した頃、部屋は微妙な空気に変わっていった
「おい・・・」
「なんなんだよ、こいつ」
これだけ打たれて 肌が破れ血を流しているにも関わらず 蒼太は声を上げることもせず 未だ俯いて堪えている
悲鳴も上げなければ許しを請うこともしない
それが微妙に気味悪くて、男達は次第に言葉をなくしていった
(・・・諦めて、放っておいてくれないかな・・・)
いたぶるのに飽きて ここに放置してくれないだろうか
そうしたら、すきを見て逃げ出すんだけれど
この男達は、いたぶり方も中途半端で、不審者の扱いも中途半端だ
「おい、何とか言えよ」
「これ以上やったら死ぬんじゃないか?」
「こいつ言葉わからないとか・・・」
「そういや東洋系の顔してるな」
がつ、と髪をつかまれて顔を上げさせられた
目を閉じてやりすごす
下手に目を見られてしまったら、目の光で意思を読まれるかもしれない
鳥羽に何度も 目の光を消せといわれたけど 結局それができないままだったから
目の光なんてどうやって消せばいいのかわからないまま、あの教育を終えてしまったから
「どうする、こいつ喋らないな」
「何が目的かわからないと対処のしようがないだろ」
「だいたいこいつ何してたんだよ、誰か見た奴いないのか?」
「本署に送ったほうが良くないか?ここで相手しててもどうにもならん」
ここは、大切な会合の場で、
この会合は明け方まで続く予定となっている
同じ屋敷の最上階では、今も要人達が難しい話を進めていて それには街や国や権力者達の様々な思惑と利益がからんでいる
そんな大切な場所に、こんな不気味なものを置いておくのも、と
誰かが言い出したのに 蒼太はまずいと心の中で焦った
時間がない
ここから本署とやらに送られたら 逃げ出しても戻ってきて残りの爆弾を設置する時間がなくなってしまう
どうにかして、ここに残るか
たった今 ここから脱出するしか道はない
しかし、こんなに囲まれた状態でガスも使えないとなると、手がない

思考を重ねた蒼太の耳に ドアが開く音が聞こえてきた
側にいた男達も一斉に振り返る
カツカツ、と規則正しい靴音で部屋に入ってきた男は、この異様な空気の中 そこにいる男達と蒼太を見て、つめたい声で言った
「何してる」
その声に、ドキ、とする
鳥羽だ
彼は依頼主の秘書として会合に出席しているはずだった
この時間、休憩でも入ったのだろうか
突然現れた 胸に要人の印である華をつけた男に 警備の者たちは一様に驚いたように身を緊張させた

「不審者を捕まえたので何をしていたのか尋問していたところです」
そのわりには、服をひんむいて鞭で打つなど 尋問らしからぬことまでしているけれど
「こいつがあまりに抵抗するので 少し痛めつけはしましたが」
規定では 一警備員がこんな風に捕らえた者に対して体罰的なものを与えてはいけないことになっている
その現場を押さえられたのに、言い訳したのか
血を流して黙っている蒼太と、居心地悪そうな男達を見比べた後 鳥羽は懐から銃を出した
「今 上で何をやってるか知ってるだろ?
 不審者は殺せばいいんだよ」
いちいちこんなことするだけ時間の無駄だ、と
言った途端、銃声が響いた
がくん、と
蒼太の身体が崩れ落ちる

「ちょ・・・っ、待ってくださいっ
 そんなことをされては困ります、いくらなんでも・・・っ」
「お前ら チンタラしすぎなんだよ
 それでこいつが逃げて上に何かあったら責任とれんのか?
 ここはいいから さっさと警備に戻れ」
続けて3発 蒼太に向かって撃った鳥羽に 男達は蒼白になってパラパラと部屋を出ていった
廊下が静かになったのを確かめてから、舌打ちして鳥羽が寄ってくる
4発撃ったうち、最初の1発は確実に当てた
腕の中に弾が埋まってるのを確認しつつ止血の応急手当をして、気絶している蒼太に着付け薬を飲ませる
残りの3発は足と肩と腕に掠らせただけだから たいした傷ではない
「う・・・・く」
びく、と
震えて目を覚ました蒼太の縄を解き 鳥羽は痛みに顔をしかめた蒼太を無理矢理に立たせた
「手をかけさせるな
 あと30分で仕上げろ」
「は・・・い」
左腕が痛みで動かせなかった
こんな状態であと3つ 爆弾の設置などできるのだろうか
しかも時間がない
「とっとと行け
 終ったら病院でも行ってろ」
俺は朝までかかるから待たなくていい、と
言われて 蒼太はグラつく視界の中 必死に歩いた
出血でめまいがひどい
でも倒れるわけにはいかない
警備に見つからないよう、調べた警備の時間割を思い出して歩いた
頭の中で30分のカウントが始まる

痛みが、全身にガンガン響いた
痛み止めを飲みたかったが、それを飲んでしまったら感覚がにぶる
ただでさえ右腕しか使えない上 細かい作業をしなくてはならなく、視界はだんだんとかすんでいくようで
こんな中 痛み止めなんて飲んで手足の感覚が鈍ってしまえば 爆弾の設置なんてできそうになかった

鳥羽が今回作った爆弾は、置いてスイッチを入れればいいというものではない
探知機に反応しないよう 蒼太が触るまではカムフラージュされているのだ
鳥羽に教わった手順でコードをつなぎ変えて初めて 爆弾として動き出す
コードを取り出して、はずし、別の場所に繋ぎ変えて、元に戻す
震える手で全神経を集中させても、一発ではできなかった
バチバチ、と手元で火花が散るたびに 指先の皮膚がはじけ、爪が割れる
苦痛が、全身をしめつけるようで冷や汗が伝う
どうしても片手ではできなくて、動かない左手を無理矢理に使った
ギリ、と腕が捻じ曲がるような痛み
だんだんとわけがわからなくなって、視界だけがグラグラ揺れた
必死に、
頭の中のカウントに追われるように 蒼太は作業を進めた
他には何も考えられなかった

30分後、警備の穴を抜けて屋敷の外に出た蒼太は、裏に待っていた組織の車にたどり着いた途端気を失った
全身が冷たくなっていくのを感じる
浮遊感と泥に沈むような感覚の両方を覚えながら 覚醒する前の段階
夢をみているような場所に ずっといた
目を覚ましたのは、次の日の昼だった

「鳥羽さん・・・」
「起きたか」
「仕事は?」
「終った」
その言葉に、成功だったのだなと思いつつ 鳥羽がいて成功しないはずもないかと思い直す
全ての爆弾の設置が終わった後、会合に秘書として出ていた鳥羽は 依頼主を代弁してこの屋敷に仕掛けた爆弾の場所と威力、爆発させた場合の被害を参加者達の耳に囁いた
そうして、ここにいる全員の命を人質にとりながら 依頼主のどうしてもゆずれない案件を こちらに有利に進めさせ 反対意見が出ればリモコンをちらつかせて脅しつつ
強引に決定させた
その場の駆け引きは緊迫し、部屋にいた要人達のボディーガード全員を相手に たった一人で切り抜けなければならないのだから 鳥羽の今回の負担はかなり大きい
「どんなに強引な手でもいい、可決してしまえばこちらのものだ」
依頼主の言葉通り、かなり強引な手だったけれど 脅しで10発ほど爆発させて見せ、
何か妙なまねをしたら 部屋の真下にしかけてあるのを爆発させると脅した
「あの依頼主 今後大丈夫なんでしょうか」
「さぁな、知ったこっちゃないな」
まぁ、この世界 こういうことはよくやる手だからお互い様だろ、と
鳥羽は言い 蒼太の病室の窓を大きく開けた
昨夜のうちに この病院に運び込まれた蒼太は 手術の後 入院と言い渡され ここにこうして横たわっている
「しかしお前はほんとドジだな」
「すみません・・・」
あんな作業 ミスするものでもないだろう、と
呆れたように言いながらも 鳥羽は怒ってはいないようで 窓から入る冷たい空気を吸い込みながら 煙草に火をつけた
この人は病院だろうがどこだろうが いつでも煙草を吸っている
まぁ、ここは個室だし、この病院も組織の息がかかっているから鳥羽に文句を言う人間もいないのだろうが
「お前はしばらく寝てろ
 新しい依頼が入ってるが、まだ調べることが山ほどある
 プランが立つまで寝かせておいてやるから さっさと治せ」
「すみません・・・っ、僕も何かやります」
「いらん」
即答されて 言葉をなくした蒼太に 鳥羽はニヤ、と笑った
「ここの看護婦にいい女がいたぞ
 退院まで遊んでもらえ」
冗談めかしく言って、鳥羽はご機嫌に窓の外を眺めていた
次の仕事がどんなものなのか、教えてはくれなかった
「じゃ俺は行くかな
 病院ってのは何もなくてつまらんからなぁ」
きゅ、と煙草を消して鳥羽は言い 横になっている蒼太の髪を撫でて部屋を出ていった
急に病室が静かになる
目を閉じて 蒼太はそっと息を吐いた
もっと仕事がしたい
鳥羽と並んでする仕事が、楽しくて仕方がない
次はもっと役に立ってみせる、と
いつもそればかり考えている

実際、鳥羽はとても働き者だった
2.3日で終る仕事から、3ヶ月くらいかかる仕事まで 大抵の依頼は引き受けてこなしていた
次から次へと依頼は来る
一つ終ればまた一つ、と
間をあけずに仕事をする様子は、まるで何かに追われているようで
今も 昨日一つ仕事が終ったばかりなのに もう次の仕事のために出ていってしまった
生き急いでいるような印象
でも、彼も蒼太と同じ いつ死んでもいいといったような目をしている
どこか、悟ったみたいな、諦めたみたいな
ある種 同じものを持つもの同士が強く感じるものを 蒼太は鳥羽の中にも見ていた
(鳥羽さん)
天井を見つめて 浅い呼吸を繰り返した
痛みが、どくんどくんと血の流れに乗るように全身に回る
鳥羽と行きたかった
こんな痛みなど 平気だった
鳥羽が来いといったらすぐにでも行ける
もっとたくさんの仕事をして、もっとたくさんの世界を経験して、
鳥羽の隣で、彼のようになりたい
彼がこの裏の世界を堂々と歩いているように、自分もそんな力をつけたい
鳥羽の隣を歩くために

2週間後、鳥羽が現れた
来るなり鍵をかけて、窓を閉めカーテンを引く
仕事の話だろうか、と起き上がった蒼太に 鳥羽は僅かに笑って包帯のまかれてある腕を ガツ、と掴んだ
「・・・・っ」
思わず声を上げそうになる
それを必死にかみ殺したら 背中に冷たい汗が伝った
「体力は戻ったか?」
「はい・・・」
答える声が震えないよう 気をつけた
「痛みは?」
「もう大丈夫です」
本当は つかまれている部分から千切れそうに痛いけれど
「いつ退院できる?」
「いつでも行けます」
医者はあと2ヶ月はここにいろといっていたが、そんなことはどうでもいい
鳥羽が迎えにきたら、いつでも出ていく気でいた
腕はまだ動かないけれど、それでも日に日に回復している
「いつでも、ね」
言いながら 鳥羽は蒼太の服に手をかけた
「テストしてやろう、耐えれたら連れていく」
そのまま、蒼太の身体をベッドへと押し付けて 身体を開かせて高めてゆき
慣らして濡らして挿入した
病み上がりに無理をさせられた身体が悲鳴を上げる
痛みと、疼きが両方身体の中でからまりあうようにして、わけがわからなくなった
どうにかなりそうなくらい、感じた

この痛みが自分をおかしくする
鳥羽に抱かれるということが、自分を正気でいられなくする

鳥羽は相手が怪我人だということを全く考慮しないやり方で蒼太を扱った
四つん這いにして後ろから挿入すると 深く深くに押し入ってくる
怪我をした腕は使い物にならず、片方の腕だけでは身体を支えきれず
蒼太は尻を突き上げるようにして ベッドのシーツに顔をうずめた
悲鳴を、上げそうになる
痛みは容赦なく響き、腕が根元から千切れそうだった
なのに、震えるほどに感じるのだ
鳥羽に抱かれているということが これ程に感じさせるのか
それとも、この痛みを伴うものがあるからこそ、なのか
わからなかったが、蒼太は必死で感じた
全身で感じた
この行為になれた今では、男に抱かれるのにたいした抵抗はない
自分が女を抱くのと同じく、自分を抱く男がいる
その程度の認識
行為が好きなわけではなく、仕事上必然的にそういう機会が多いだけだったけれど、
だからこそ、蒼太は心の底から こういった行為に感じることは少なかった
自分から求めることも ほとんどなかった
感じたふりをしても、いったふりをしても、強制的に勃たせて射精しても、
この身が震えるほどに満足する相手なんていなかった
だけど今は違った
たまらないものが、身体の奥からこみ上げてくる
痛みに身体は悲鳴を上げているのに、気持ちはいくらでも求めてしまいそうなくらい飢えていた
もっと、と
懇願してしまいそうになる
鳥羽を相手に、そんなことできはしなかったけれど

1時間ほど 蒼太を犯してテストした鳥羽は、開放した後ぐったりとしつつも気絶しなかった蒼太に 満足そうに笑った
「まぁこの程度回復してりゃ大丈夫だろ」
そうして、煙草に火をつける
部屋にあの香りが充満していくのを感じながら 蒼太は未だ震える身体を抱いた
鳥羽はいつも、求めただけ与えてくれない
こんなに感じても、こんなに求めても、
それを言えないから、いやたとえ言ったとしても 与えてくれないだろう
わざと、飢えさせているような 意地の悪さや
自分が気が向いただけしかやらない 自己中心的さを感じる
でも、それが鳥羽という人間だから
蒼太がこれほどに焦がれる存在だから
今も、とっくに限界を迎えて痛みに麻痺した身体とは逆に 心は行為の続きを求めてやまない
もっと抱いてほしいと、願っている
「車の中で話をしてやる
 30分で支度しろ」
「は・・・い・・・・」
蒼太の、必死に隠しているこの欠乏感を鳥羽は気づいているのか、いないのか
それ以降は一切 蒼太には触れず 窓を開けて煙の充満した部屋の換気をした
その後ろ姿を見ながら、
どくん、と熱い身体の熱を必死に殺し 蒼太は身体を起こした
この願いを鳥羽に知られないよう、隠さなければならない
彼とずっと一緒にいたければ、彼の望むような距離を保っていなければならない
自分に言い聞かせて、蒼太はそっと息を吐いた
大丈夫、我慢すればいいのだから
辛いのも苦しいのも飢えているのも我慢していればいいのだから
そんなこと、簡単なことだと言い聞かせた
捨てられることに比べたら なんでもない苦しみだと、言い聞かせた


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