一回目の投薬 (赤×黒)


基地の一画に、宝を集めたエリアがあるのを 真墨は今朝になって初めて知った
財団がオークションで買い上げたもの、人を雇って探し出したものが そのデータとともに置いてあるらしい
「すごいのがいっぱいあったよ
 菜月、さっきさくらさんのお手伝いで行ってきたの」
自慢気に語る菜月の言葉に ふーん、と曖昧に返事をし、私物のファイルをぱらぱらとめくる
トレジャーハンターとしてやっていた頃の資料やらデータやら
真墨はそれらの整理が下手で、いつもいらないものまで持ち歩いては肝心な時に失くしてしまったり、
ここに入れたはずなのに、という場所から出てこなかったりする
もうトレジャーハントにはしばらく戻らないだろうけれど、それでも宝探しをやめたわけではないから
欲しいと思って情報を集めていたものは ちゃんと整理して置いておきたかったし
自分の生き甲斐はやはり宝探しで、
暁に勝ったあかつきには、ここを出て元の生活に戻りたいと思っていた
世界一のトレジャーハンターという名をものにして

「あっ、それもあったよ」
突然、菜月が手許の資料を取り上げた
「え・・・」
「これあったあった!
 月星人の小瓶っていうんでしょ? さくらさんが教えてくれたよ」
菜月の手に奪われていった資料は、5年程前に入手したもの
隕石が頻繁に落ちるといわれる南米の村で 不思議なものが多数見つかったとか
月星人の小瓶はその中の一つで、見つかるなり人の手に持ち去られて 世界のどこかの遺跡にかくされたと聞いた
一緒に見つかった 似た形をした瓶の中からは液体が流れ出ていて
土にしみこんだその成分を研究した結果、与えたマウスが寿命を越えて生き続けた
あっという間に噂は広まり
行方不明のもう一つの瓶に50億でも100億でも出すという人間が大勢出た
不老不死の薬
そんな高値のつく品物はトレジャーハンターの中でも知名度が上がる
真墨も、しばらくそれを追っていた時期があった
他の依頼があったり、それの情報が少なかったりで 自然後回しにされてはいたが それでもどこか新しい地へ行った時は必ず その小瓶の情報を探した
「お前、本当にそれだったのか?」
「うんっ
 だってさくらさんが そう言ってたもん」
発見から5年経っている
だが、誰かが見つけて誰かに売ったなんて情報は入ってこなかった
まだ、世界のどこかに隠されていると思っていたけれど
(まさか・・・明石が?)
それとも、この財団の他の人間が秘密裏に探し出したのだろうか
何にせよ、見てみたくて仕方なくなった
それで無言で立ち上がった

「収集品の整理には、今の時間はチーフがあたっています」
中央のモニタルームにいたさくらを捕まえると 彼女はそう言って真墨を見つめた
「午前は私と菜月さんでやりましたから
 もし暇なんでしたら、チーフを手伝ってあげてください」
大量の収集品の整理は一人では大変だからと
その言葉に ちょっとだけ気が進まなかったけれど 真墨は仕方なく保管エリアに足を運んだ
暁と二人きりはちょっと抵抗がある
それとなく、さくらに聞きたかった
これは、誰が探し出したものなのかと
(明石なのか・・・?)
そんなこと どう本人に聞けばいいのか
もし本当に暁が探し出してきたのだとしたら、きっと自分は嫉妬する
その能力に、才能に
狙った獲物はけして逃がさない彼の牙にかかって あの小瓶もここにあるのだとしたら

「お? どうした?」
保管エリアの一室に暁はいた
壁一面のガラスケースに並んだ収集品と 手許のコンピューターのデータを照らし合わせている
「何してんだよ」
「データが外部からぶっ壊されたらしくてな
 おかげで一から作り直しだ」
今朝は朝から財団中のコンピューターがメインもバックアップも全てウィルスにやられて大騒ぎで
結局 無事だったのは蒼太が個人的に持ってたデータだけ
彼の性格か趣味かはわからないが、この財団の膨大なデータのバックアップが彼の部屋から出てきて
被害はくいとめられたものの、
この収集品のデータだけは どこを探しても出てこなかった
「バックアップ取ったと思ったんですけど、すみません」
困ったようにそう言った蒼太は今、謹慎中
助かったとはいえ 財団のデータのバックアップを全て取るなど ほぼ犯罪行為
規律違反だな、と苦笑した暁に 彼はいつもの顔で笑ってた
「じゃ、謹慎してます」
チーフ、怒ってないですよね、なんて言いながら

「蒼太がいれば楽なんだけどな」
収集品は膨大で、それらのデータを一から入れ直していくのは手間がかかる
朝、さくらと菜月が入れたものをチェックするのが暁の仕事だった
収集品の細かい部分はさくらではわからないことも多く データは所々ぬけている
そこを埋めて行きながら、間違いに気付けば訂正する
そんな作業を3時間も続けて、そろそろ暁も飽きてきていた
「お前もそういや詳しかったな
 手伝いにきてくれたんなら、そこの端末使え」
大きくのびをした
はっきりいって飽きた
データなど急ぐものでもないし、気長にやっていけばいいと 上からは言われている
蒼太の謹慎が解ければ 彼の手を借りてやればいい
こういうデータ処理に長けている蒼太で加われば 作業ももっと効率良く進むだろう
欠伸をひとつして、真墨に視線をやった
何をしに来たのか
彼は 手伝う気など見せずジッと壁に並んだ収集品を見ている
「欲しいもんでもあるのか?」
「・・・これ、どうしたんだよ」
その指が、一つのケースをコンコンと叩いた
小さな 赤色をした小瓶
暁が4年程前に手に入れた月星人の小瓶だった
「それ? 砂漠の行商人から買った
 日本円にして、500円くらいだったかな」
くく、と可笑しそうに笑った暁に、真墨は耳を疑った
「は?」
世の中にはこれを探している人間が山程いて
世界中の金持ち達が 100億でも200億でも出すと言っている不老不死の薬だぞ
「冗談だろ」
「本気
 探したけどな、1年程
 見つけた時には気が抜けた、がらくた市に並んでたから」
人の手に回り回って砂漠まできて、こんな風に
がらくた同様扱われているのが可笑しくて仕方なかった
封が開かない意味不明の瓶だと、商人は言ってたっけ
値段を聞いたら 気が抜ける程安値だった
「その辺りの市には盗品が出回ってるから、価値のわからない盗賊に襲われて奪われて
 そのまま、売られたんだろう
 それを価値のわからない商人が買い取って、俺に売った、そういうことだ」
わなわなと、真墨が震えているのが後ろから見ていてもわかった
もしかして、真墨もこれを探していたのかな、とふと思う
あの頃、大勢の人間が探していた
自分も噂を聞いて、不老不死の薬なんかがあるならぜひお目にかかりたいと探してみた
まず、発見された現地に行って 持ち去った奴のことを聞いた
そいつを探して半年
御対面は死体とだったから、その次はそこから小瓶を奪って姿を消した男を探した
そうやって、1年程追い掛けて ある砂漠の町で また死体と会った
それから10日後である
市で売られている小瓶を見つけたのは

「ま、俺はラッキーだったな」
いつもの調子の暁の声を聞きながら、真墨は驚きと腹立ちを通り越して呆れた
本当に何なんだ
彼には能力も実力も、運もついてる
努力たけではどうにもならない部分で、天が味方についてる
だから奴は強い、そんな気がした
奴こそ、天性のトレジャーハンターだと思った
「財団に売ったのか」
「いや、研究したいっていうから貸してやった」
もう、何を聞かされても驚かなかった
そういう奴なのだ
これにいくらの値がついているのか知らないわけではないのに
不老不死といわれる薬も、奴にとっては何の興味も抱かせないのか
「研究結果出たのかよ」
「薬はよく聞くらしいぜ」
「本物なのか・・・?」
「試してみるか?」
興味あるなら、と
言われて真墨は暁の顔を凝視した
試すだって?
何で?
まさか この自分の身体でか
「お前が自分で飲んで見りゃいい
 不老不死になれるかもしれない」
「な・・・っ」
ぽかん、とした
不老不死なんて本当にあるのか
あのマウスは、あの後もまだ生きているのだろうか
そもそも 自分は不老不死になりたくてこれを探していたんじゃない
死なない身体になんて興味はないし、欲しいとも思わない
ただ、高値がついているから
誰もが見つけだせない価値ある宝だったから 探していたんだ
手に入れれば、それだけで名が上がるし評価が付く
「本当かよ・・・そんなもん本当にあるのか・・・?」
「だから、試してみればいいだろ?」
冗談なのか本気なのかわからない顔で暁は言い、デスクの上にあるキーパネルにカードを差し込んだ
音声が流れて 鍵の解除が告げられる
「どうせこれは俺のものだから、試したいなら試してみろよ」
何の躊躇もなく、暁がケースを開けた
赤色の瓶を取り出して、ナイフで封印を切る
簡単に、その瓶は開いた
「お前が少し飲んだくらいじゃ、なくならないって」
大丈夫と
奴が笑ったのに、頭がぐらぐらした
何をそんな平然として言うんだ
不老不死とか、そんなのあるわけないのに、よく効く薬だとか、試してみろとか
こいつは俺をからかってるのか

真墨を壁際へと追い詰めながら 暁は手の中の瓶に指を浸した
冷たい水の感触
液体はちょっと青色がかっていて、暁の指に付着する
「興味あるんだろ?」
本物かと聞いたのはおまえじゃないか、と
逃げ場なくこちらを見上げている真墨の頬に手を触れた
そのまま、戸惑う唇を指でなぞった
冷たい指先
する、と口の中へ入れると 僅かの抵抗があって真墨はぎゅ、と目を閉じた
「まぁ、味はひどくまずいらしいけど」
途端、舌の上に乗った薬の味に 真墨が苦虫をかみつぶしたような顔をした
「な・・・んだよ、」
びり、と舌が震えて、抗議の目がこちらを見上げる
「たった一滴じゃ効き目は1時間程度かな」
「一時間て・・・?」
不老不死が? と
その言葉に くす、と笑みがこぼれた
「研究の結果、媚薬だって判明した
 人体に使った結果、一口で狂う程イったってさ」

暁の言葉に、ざわざわと背中が冷たくなっていった
「な・・・・んだと」
「一滴なら死にはしない
 あんまり危ないんで、また封印されてここに戻された、そういうもんだ」
暁が瓶にふたをして、またガラスケースに戻した
カードでロックをして、戻ってくる
その様子を見ながら いつのまにか足が震えている
鼓動がドクドクと、いつもより早いのも気になった
身体が、どうかしている
背中は冷たいのに、腹の下あたりが熱い

「どの程度感じるか教えてやろうか
 身体中が性感帯になったみたいに、どこ触られても感じるし、卑猥な言葉を言われただけでイけるらしいぜ? 想像で」
くく、と
耳もとで暁が笑ったのに、ぞく、とした
身体を何かが走っていく
頬に触れられて、首筋に舌を這わされて
それだけで、痺れそうになった
「あ・・・、あっ」
熱さはうずきを生んで、囁かれる言葉に わけのわからない期待のようなものが膨らんでいった
「薬がきれるまで、何度でもイかせてやるよ」
ざわざわと、血がめぐっていく
震える咽から 勝手に声が漏れた
「どうしてほしい?
 入れる前に身体中舐め回してやろうか?
 指つっこんでかきまわしてやろうか? それとも、俺の口でいってみるか?」
言いながら、暁は首筋から肩へと舌を這わせ、
胸の突起に歯を立てた
「あああ、あ・・・っ」
カクガクと、もう立ってもいられないくらいになってる
言葉が頭を麻痺させて、行為が身体を痺れさせる
震えるのを、軽く抱き上げられた
「ふ・・わっ」
そのままテーブルに座らされ、服を取られた
抵抗などできない
この薬のせいで、わけのわからないまま 行為の続きを求めてしまっている自分がいる

熱を持ったものを口に含む様子を見て またグラリといきそうになる
暁の舌がざらりとした感触を伝える
どうにかなりそうだった
「ふ、うう、う・・・く」
溢れる透明な雫を舐め取って、そのまま全部を奥までくわえこんで執拗に舌で弄る
熱い口内で、真墨は必死で意識を保とうとした
自分ではどうしようもない疼きが、全身を抜けていく
身体を支えている腕が がくがくと震えた
「う、う、う・・・・・・っあああっ」
拡散する熱
ひくひくと、全身が痙攣したみたいになるのを押さえられない
イっても、熱が引かない
笑って、暁が言った
「さすがに早いな
 次は、どうしてほしい?」
指でいかせてやろうか?
それとも、入れてほしいか?

一度いかされても まったく引かない熱に、身体の痙攣は止まらなかった
容赦なく足を開かせられ、濡れてうずいている入り口に指が入れられる
「あああ、あふ・・・っ」
クチュ、という音が響く
わざと出しているのか、それはしばらく耳について
そのせいで、また意識が麻痺しだした
いやらしい音、自分が感じている音
暁に翻弄されて、暁にいいように扱われて、こんな風に感じている
どうしようもないくらい感じている
抵抗もなく、
もっと欲しい、と思っているなんて

「あっあっあっ、明石・・・っ」
2本、3本と指を増やされて、身体に圧迫を感じながら 真墨は暁の服を掴んだ
執拗に動く指は 何度か身体を重ねただけで真墨の感じる部分を知り尽くしてしまったのか
与えられる攻めに 今にも意識が飛びそうになる
「どうした? もうイきたいのか?」
意地悪い声
それでまたゾゾ、と何かが背を走っていく
ダメだ、暁の全てに感じる
息遣い、声、くちづけ、舌の感触、指、それから その存在
「くそ・・っ、あ、う、・・・・あ・・、ひっ」
「感度いい身体には一滴でもきつかったか?
 でもまぁ めったにできない経験だ、悪くないだろ?」
ぴくん、と
今度は自分の身体に白濁を吐いた真墨を見て 暁は静かに笑った
息遣い荒く、目に涙を浮かべてこちらを睨んでいる真墨を可愛いと思って
それから まだ薬で萎えないその身体に苦笑した
(処女がヤリ狂ったくらいだもんな)
そっと、汗で額にはりついた前髪をすく
それだけで びくりと肩を震わせて いいようのない表情を見せた
見てるこっちが それだけでイケそうだ
「そろそろ、欲しいだろ?」
力なく投げ出された真墨の足
震えているのは 薬の抗力に身体が悲鳴を上げているからだろう
それを上げさせて、開かせた
抵抗はなく、ただ悔しそうな 今にも泣き出しそうな目が睨み付けてきただけだった
「欲しいだろ? 」
意地悪く もう一度聞く
「この中に入れられて、奥までぐちゃぐちゃにされて 壊れるくらいに犯されたいだろ?」
囁いたら、びくと震えて、それから真墨はぎゅっと堅く目を閉じた
あの反抗的な彼がこれだ
声に、言葉に反応して、想像だけでイケるらしいと
調査報告に呆れたものだけれど
(すごい薬だよな、実際)
人を死に至らしめると判断され、ここにこうして保管されている
不老不死よりやっかいだなと 思った
だが、今 身体の下で震えている真墨の姿は悪くない
「入れてほしいなら、そう言えよ
 そうしたら いかせてやるから」
そのままじらすように、首に、肩に、胸にと くちづけを繰り返して
下でもうグダグダに濡れているものを舐め上げた
「あああ・・うっ、」
声も我慢できないで、未だ与えられない欲しいものに 後ろをひくひくとさせて
真墨は背を反らせて嗚咽を漏らした
「泣くなよ、いいようにしてやるから」
素直になったらな、と
その言葉に、彼なりの限界だったのだろうか
「い・・、いれて・・」
入れてくれ、と
震える声で懇願した

真墨の中は溶けそうに熱かった
(すごいな)
行為は薬のせいで、痛みをもたらさないのか
悲痛な悲鳴のかわりに、快楽の声が上がった
「あああ、あ、・・・明石・・っ」
深くまで腰を進めて、涙に濡れた目を見つめながら何度もその身体を突き上げた
「ひ、ひっ、あっ、あう・・・・っ」
ガクガクと身体が震えている
声も、もう掠れている
だが、まるで行為に溺れるように 真墨は暁の服を掴んで放さなかったし
暁もまた、もう3度目の解放を迎えようとしている真墨に手加減なんかできなかった
からみつくような熱さの中を、貫いて奥まで突き上げて
何度も何度も熱を注いだ
やがて、真墨が声を上げて果てたのと同時くらいに自分も果て
今度こそ、ぐったりと意識を失った真墨の頬に 暁はそっとくちづけた

真墨を側のソファに横たえ、散々に汚してしまった机の上を片付けて
さっぱり進まなかったデータの整理を途中で放棄し、暁は壁のガラスケースに並んだ子瓶を見遣った
世界中の金持ちが欲しがった不老不死の薬が 実はただの媚薬だったなんて、と
少しおかしくて
だが それはそれで こんなに強力なものなら別の人種に高く売れるだろうなと思ったけれど
結局手許に残したのは、なんとなくいつか誰かに使ってみたいと思ったから
悪戯心のようなものが芽生えて、そう言ったら研究者達は蒼白な顔をしていたけれど
「こんなもの使ったら相手が死んでしまいますっ」
「一口くらいならいいんじやないの?」
「それでも気が狂う」
「だったら、一滴」
笑った暁に 冗談だと思ったのか 研究者達は眉を寄せて言ったっけ
「一滴なら、まぁ・・・身体に害は残りませんけど」
それでも相手は相当に大変ですから、使わないでくださいねと念を押された

真墨がこんな薬のことを言い出さなければ きっと忘れたままになっていただろうけど

ぐったりと 起きる気配のない真墨に視線をやって、暁は笑った
たまになら、あんな風な真墨も可愛くていいかもしれない


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理