1回目の調教 (赤×黒)


トレジャーハンターか、と
真墨の入隊書類を見て暁は呟いた
懐かしい響き、トレジャーハンター
未知の財宝や謎に魅せられて、命を賭ける男達の姿
まだ覚えている
あの頃のように熱く騒ぐ血は 今も確かにこの身体に流れている
「それであんなに身軽なのか」
今日、初めての訓練で真墨はその身体能力の高さを見せつけた
模擬試合でさくらを負かすほどに その戦闘能力は高い
うまく使えば 自分と並んで前線で使える駒になる
その予感に暁はくく、と声を出して笑った

今朝、会った途端に まるで今にも飛びかかってきそうな勢いでこちらを睨み付けていたっけ
なぜそんなに目の仇のようにするのか
あの試験で負けたことが そんなに気に入らなかったのか
何にせよ、子供っぽいやつと
暁は一人ごちた
途端、背後から伸びてきた手に 書類を奪われる

「おっ・・・と」

持っていたコーヒーの入った紙コップを落としそうになり かろうじて堪え、
暁は首だけを回して 突然出てきた手の主を見た
「なんだ、お前か
 お疲れさん」
真墨が、面白く無さそうな顔で立っている
何かからみに来たのか
それとも、さっきの訓練の時みたいに 勝負しろと言いに来たか
「これ、何だよ」
「お前の入隊資料」
聞いて、奴は一度暁に視線をやった後 その書類をめくった
「・・・なんだよこれ」
「うちの財団は神経質だから
 入隊にあたって過去の経歴は全部調べあげるみたいだぜ」
お前の輝かしいトレジャーハントの記録もその通り、と
言って暁はコーヒーを咽に流し込んだ
そのノーテンキな後ろ頭に書類の束がぶつけられる
「いって、お前 何するよ」
ばさ、と書類は真墨の足下に落ち
頭をさすってもう一度真墨を見た暁の胸ぐらをつかんで 真墨は怒鳴るように言った
「こんなのどうでもいいっ
 お前、もう一度勝負しろっ」

やれやれ、と
暁は先に立って訓練場へ行く真墨の後ろ姿を見て苦笑した
さっきの訓練で3回連続 床に組み伏してやったのに まだこの威勢だ
元気がいいというか、負けず嫌いというか
「まだやられ足りないのか?」
それとも 力量の差がわからないか?
おもしろい奴、と
落ちた書類を拾い上げ、暁も立ち上がった

足りないなら、足りるまでやってやろうか
わからないなら、わからせてやろう

誰もいない静かな訓練場で、二人は向かい合った
「ハンデやるよ、俺は素手でいいから」
「ふざけるなっ」
「ふざけてないぜ」
「ハンデなんかいらないっ、お前も武器を持てっ」
喚くような真墨の声
もう、挑発に乗ってる
すぐにカッとして、周りが見えなくなるんだな
そんなんじゃ まだまだプロとは言えないと思うぜ

「そういうことは、俺に勝ってから言えよ」
本気で動いた
頭に血ののぼった真墨は、行動が一瞬遅れた
その差が、デカいんだと さっきも言ったのに聞いてなかったのか
それとももう、忘れてしまったか
「く・・・っ」
真墨の背後に回って、腕を後ろで締め上げた
ぴくん、と
走った痛みに動きが止まる
「くそ・・・」
「力は五分だぜ?
 無理して動くと折れると思うけどな」
無理矢理に逃れようとするのを、体重をかけて締め上げる
「あぐ・・・っ」
悲鳴に似た声が上がって、完全に真墨の動きが止まった
さすがに、ここで無理をする程バカではないというわけか

(経験かな?)

大人しくなったのを見て、第二の抵抗が始まる前に そのまま床に引き倒した
「ぐっ」
肩から落ちるようにして、髪をつかんで顔はぶつけないようにしてやった
顔面から落ちると顔が曲がるだろう
そんなことになったら、せっかくの可愛い顔が台なしだし

「あ・・・・く」
それでも、自分の体重と暁の体重の両方の重みをかけられて、床に叩き付けられたんだから 相当に痛みがあったのだろう
声もなく、腕の下で痛みに耐えている様子に どうしようもない位ゾクゾクした
たまらない奴
せっかく奴から寄ってきたんだし、このまま楽しませてもらおうか

最初の調教を、始めよう

片腕で真墨を押さえ付けたまま、そこらに転がっていた真墨の剣を取り上げた
柄についてる布を外す
さっきの訓練で この布を持って剣をぶんぶんと振り回していたっけ
真墨の武器は彼に色々と改造され、どんな風な攻撃が出てくるかわからないから面白いと、その時に思った
その布を取り外して、それで真墨の腕を縛った
腕を背中に回したまま、床に肩と顔をすりつけるようにさせられて
まるで四つん這いの獣みたいだ
「お前にぴったりの格好だな」
見下ろしたら、怒りにギラギラした目が睨み返してきた
こんな時にも その目の鋭さが消えない
それが、たまらない

「さて」
ガツ、と
靴で突き出された尻を踏み付けた
「グ・・・っ」
怒りにか、羞恥にか 真墨の頬が紅潮する
「今がミッション中だとして、俺がお前の敵だとして、お前は今完全に捕われてるわけだが
 この状態で、お前はどうやって逃げる?」
ポケットに入れていた さっきの書類を取り出した
ぱらぱらとめくっていく
6ページ目に 何年か前の真墨のトレジャーハントの記録が載っていた
「あの遺跡の生存者なんだな、お前」
その言葉に、ピクンと真墨が反応した
それはトレジャーハンターの間では有名な ずっと東の国にある遺跡で、
ある金持ちの依頼で何人ものトレジャーハンターが探索に出ては死んだ地だった
第何隊目だったかの探索の時、一人だけ生きて戻った男がいて
彼は戻るなり、宝も報酬も置いて姿を消した
「く・・・っ」
真墨は何も言わなかった
ただ、怒りをいっぱいに目に浮かべ 暁を睨み付けている
「当時、話題になってたぜ
 なぜ、男は宝も報酬も捨てて逃げたのか
 なぜ、男だけがあの場所から戻れたのか」
黒い髪、黒い目の真墨
そういえば、あの東の果ての遺跡で見つけた男も こんな風な髪の色だったかもしれない
「あの遺跡には人間の脳をどうにかしちまう花粉を飛ばす花が咲いてる
 入った者は皆、頭をやられて気が狂った
 狂った者達は その場で本能のままに暴れまわった」
そうだろ? と
その言葉に真墨は 呼吸を止めた
なぜ、それを暁が知っているのか
そのことは、あの遺跡に行った者しか知らないはず
そして、あの遺跡に入った者は 狂って互いに殺しあうのだ
あの時 仲間の手が何本も何本も伸びて来て
丁度こんな風に 真墨を押さえ付けた
そして誰も彼もが狂っていく中、まるで宴の贄のように その男達の手で犯された
何が何だか、当時の自分にはわからなかった
そして、その男達の手の中から 逃げる力もなかった

「おまえ・・・・」

声が震えた
あの忌々しい記憶
こんな風に土に組み敷かれて 何本もの手で押さえ付けられて
どんなに叫んでも、どんなに暴れても逃げられなかった
理性を失った人間はこんな風になってしまうのかと、ただ恐ろしかったあの時
初めて受ける陵辱に いっそ自分もさっさと気が狂って
何もわからなくなればいいのにと思った

長い間 そうして仲間達に犯されて、ようやく気を失った後のことは何も覚えていない
気付けば、自分は側の村の宿のベッドに寝かされていて
枕元には、依頼主から聞かされていた 古代の聖杯が置いてあった

「おまえが・・・まさか・・・」

暁を睨みつけた
あの時、誰かが自分を助けたのだ
あの狂った宴から
狂った男達から
そして、自分だけが生還した
助けてくれた誰かが置いていった宝とともに
屈辱だと思った
そして、あの場に行って理性を保ち、聖杯を探し出し自分を助けた男がいるのだと思うと悔しかった
どれ程に鍛えられた身体と心
誰もが気を狂わせて
誰にも負けないと自負していた真墨にも なす術のなかったあの場所で
(くそ・・・っ、おまえが・・・っ)
よりによって、お前が、と
唇をかんだ
痛みが、頭の芯に響いていくようだった

乱暴な手付きで、暁の手が肌に触れた
ドクン、と心臓が鳴る
あの汚らわしい行為を思い出す
ゾク、と背に 今はもう慣れてしまった何かが走っていった
身体が熱くなる

「やっぱりお前 慣れてんな」
がくがくと震える腰をしっかりと捕まえて、暁は浅く息を吐いた
ろくに準備もしなかった真墨の身体に 己のものを突き立てて 深く身体を繋げている
そんな乱暴な行為ですら、最初悲鳴を上げて咽を震わせていた真墨は
やがて荒い息づかいを隠そうともせず、今 わずかに声を漏らしている
「あっ・・・あっ、く・・・・っ」
暁が腰を動かす度に ぞぞぞと背を何かが伝う
自分のものだけでない熱が、無理矢理にこじ開けられた部分から流れ込んで気が変になる
あの時、あの遺跡で自分も少なからず花粉を吸い込んで
おかしくなってしまったのか
こんな行為に、感じるなんて
こんな奴に組み敷かれて、身体を震わせ喘いでるなんて

「はっ、あっ・・・・・ふ・・・・・」
ぽたぽたと、透明な液体が床にいくつも落ちていった
「随分と、よさそうだな」
耳もとで囁くと、びくんと顔を上げて反応する
思った通り 真墨の身体は慣れている
この行為に
昔、あの遺跡で助けた時に ひどく犯された痕があったのにちょっとだけ心を痛めて
後遺症が残らなければいいなんて思ったものだれれど
「残っちまったんだな、後遺症」
精神の方に、と
冗談めかしくつぶやいて、暁は深く深く腰を沈めた
「ひぁ・・・」
グチュと、いやらしい音が響いていく
たまらないなと思いながら、熱い身体の中を何度も激しく突き上げた
泣き出しそうな声を上げて真墨が震えるのが 妙に心地よかった

やはり自分は こういうのがたまらなく好きらしい

ずるり、と
身体を放すと 真墨は小さく声を漏らして それでも先程と変わらない目を向けて来た
「聞いたことあるぜ
 男に誘いかけて、ヤってる最中に襲って宝奪ってく奴がいるってな」
暁の言葉を、真墨は黙って聞いていた
あの日から、自分の中で何かが狂ってしまったのだ
あの花の花粉
仲間達のように 自我が完全に壊れる程は吸い込まなかったのだろうけれど
あの経験が、あの闇が
真墨の中で何かを変えた
汚らわしいと嫌悪する行為
しばらくは、何度もゆめに見て飛び起きた
だが、そういうことが2度目起きて
山奥だかのキャンプ地で男に囲まれて犯された時に ふっきれてしまった
バカ面下げて 男を犯すけだもの達
やらせて、油断しきったところを叩き斬った
6人もの手から逃れて、一人笑った
ばかな奴ら
男が男を犯して、精液吐いて、油断しきって、やられるなんて

「俺はそんなマヌケじゃないからな」

くく、と
可笑しそうに暁が笑った
悔しさと、怒りと、それから 何かもっと別の感情が身体中に広がっていく
本当は、奴がこういう行為に出た時に思ったのだ
いつもみたいに、お前も油断しきった時にやってやると
この身体に夢中になって、我を忘れて、バカみたいにイってる時に殺してやると

(くそ・・・っ)
だが暁は、そんなスキ一つも見せなかった
それどころか いつまでもいつまでも冷静で、余裕で
真墨の方が 与えられる痛みと快楽と言葉に翻弄された
捕われて、どうしようもなくなった
こんなバカな行為に声を上げて感じて、いってしまったのは自分の方だ
暁は今も、可笑しそうに笑ってる

「修行が足りないぜ? 真墨」

資料をくるくるっとまるめてポケットにしまい、それからようやく真墨の腕の戒めを解いて
そのまま ぐいっと腕を引き、暁は真墨を無理矢理立たせた
がくがくと膝が萎えている
それを必死に抑えて 自分で立とうとしたのを抱き上げられた
「は・・・っ、放せっ」
「立てないだろ? 部屋まで連れてってやる」
「いらないっ、今すぐ下ろせっ」
拳をドン、と奴の肩に叩き付けた
こんな恥ずかしい格好で部屋になんか戻れるか
女じゃないんだ
こんな風に抱き上げたりするなんて
「おろせっ、下ろせばかっ」
足をばたつかせた
腕も振り上げた
このまま落とされてもいい、抱き上げられているよりマシだと
暴れ続けたら 側でくくっと暁が笑った
「何がおかしいんだっ」
いつもいつも、こんな風に笑いやがって
余裕かまして、いつも俺だけ必死になって
「そういう生意気は 俺に勝ってから言えっての」
不敵に笑った唇は 笑みの形をしたまま真墨の唇に重ねられた
グラリ、と
視界が回りそうになる
舌の感触を感じて、ぞく、とした
これ以上 何かされたら本当に気が狂うかもしれないと 深くくちづけられたまま ぼんやりと考えた
身体がまた、熱を持つ
もう、今は、抵抗する気にはならなかった
遠くで暁の笑う声が、聞こえた
それも 心地いい


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理