最初の約束

パチパチと燃えるたき火
それを見ながら、ボクはただぼんやりと そこに座ってた

「なんだ、寝ないのか?」
少しぶっきらぼうに、あの人は言いました
「あ・・・僕 眠らなくても平気なんです」
「・・・・・あ、そう」
彼は、どこか不機嫌にそうつぶやくとドカ・・・とそこに腰を降ろしました
「ったく何がどーなってんだかな」
ブツブツとキツイ目をしたあの人が少し恐くて、
僕はただ その横顔を見つめてることしかできませんでした

帰れない、なんて

30世紀からここにやってきた僕達
敵にはめられて、あげくに帰れなくなってしまったなんて
皆どうしていいのかわからずにただ、
こうして不安な夜を迎えました
「ドモンさん・・・・」
声をかけると 彼は無言でこっちを向いてくれました
「ドモンさんは強いですね
 どーやったら そんなに強くなれるんですか?」
ブラウン管の向こうの人だった彼
戦う横顔をいつも見てた
憧れてた、人
その人が今 こんなにすぐ側にいるなんて

「・・・・のんきな奴だなぁ」
こんな時に、と

不機嫌だった彼が、そうして少し笑ってくれました
「お前は度胸がすわってんな
 帰りたいとか、思わねーわけ?」
苦笑する彼に、僕は笑うことしかできませんでした

あんな場所に、帰りたいだなんて思わない

「しかしまぁ・・・こーゆうのは人生のスパイスだと思えばいいか」
楽観的に、笑う彼
きっと こーいう人なんだろうな、と思い描いてたそのままの人
優しくて不器用で、ちょっと乱暴で、ストレートで
「ドモンさん、僕ずっと憧れていました」
その言葉に 彼はまた苦笑しました

「あんま かいかぶるとヤケドするぜ?」

その一瞬の本気の目に、身体中に電気が走ったみたいになりました
「どうして・・・・?
 僕 ドモンさんはきっと強くて優しくて素敵な人だと思ってました」
そして、
その通りだったと 今思っている

「ばーか
 何も知らないんだから 簡単に人を信用するんじゃねーよ」

もしかしたら悪人かもよ?
だまされやすい純真なお前を、傷つけるかもよ?

「いいんです、僕ドモンさんになら何されても平気です!」

突然に、彼は大声で笑い出しました
他のみんなが起きてしまうかと思うくらいに
びっくりしてしまう程に

「お前、昨日今日会ったばっかのヤツに簡単にそんなこと言うなよな〜
 そんなんだと悪い奴に捕まるぜ?」
なんて子供なんだ、とか
今どきこんな奴がいるとはな、とか
彼はしばらく笑って ちゃんと聞いてはくれなかったけれど

「いいんです
 ドモンさんがもし悪い人で 僕のこと傷つけたって それは僕が望んでドモンさんの側に
 いたからついた傷なんですから
 僕がドモンさんの側にいた証になるから」
彼はしばらくキョトンとして
「よくわからねーよ」
そういって苦笑しました
それから、彼はくしゃくしゃと僕の髪を乱暴に撫でて、
そして優しい顔で言いました
「ま、オレはお前みたいな奴に、悪いことなんてしないけどな」

にこり、
顔が自然にほころんで、やっぱりこの人は僕の思い描いていたままの人だと再認識しました
優しい人
ずっとこの人の側にいたい
「僕、ドモンさんが好きです」
「それは、どうも」
少しだけ、彼が照れたのがわかりました
そうして、彼はそわそわと上を向いて僕と目を合わさないようにしながらいいました
「お前みたいなのは、ぼやっとしてて心配だから
  おれがしっかり見ててやるよ」
ドモンさんがついてる、安心しな と
彼の言葉に 胸がぎゅうっとあったかくなるのを感じました
こんな気持ちははじめてて
こんな言葉を、言ってもらったのも初めてでした
「約束するよ」
「ハイ」
彼がもう一度、今度はさっきよりも乱暴に 僕の髪を撫でました
照れ隠しなんだと、わかりました
それがくすぐったくて、心地よくて
僕の中に、あたたかい灯がともりました
ドモンさんという名の、灯
彼のくれた約束
それがある限り、僕はどんなことになってもこの人の側で生きていけます
この約束が、ある限り

2000.05.21

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