休日
朝からドシャブリの雨で部活も休み
でも午後には裏切ったように晴天が広がり、
思い出したように身体がうずいた

「リョーマーーーーー」

ピカピカ太陽の下
いつもいいタイミングであらわれるあの人
どこかで見てんじゃないの?
なんて思ってしまう程に

「おい、まさか寝てねーだろーなー
 リョーーーーーマーーーーーーーーーーー!!!」

呼び声は響き渡る
「寝てないよ、失礼だな」
「降りてこいよ、河川敷行かねぇ?」
ツイ・・・と指さす先には 自転車の前かごにおさまりのわるいバッグ
飛び出しているのはジュースに、マックの紙袋、そして細いラケット2本
そのまんま まるでピクニック
「今いく」
「そうこなくちゃな〜」

身体がうずく
こんな天気のいい日には 動いていないと始まらない
喧噪に近い場所にいつもいるから
うるさいくらいのあの人の側にいつもいるから

「乗れ、飛ばすぞ」
まるで転がるように自転車は走り、景色は飛んで風が追ってくる
「ひまなんだ、桃先輩」
肩ごしにそう言うと おまえこそ、と
あの声で返事が返ってくる
子供みたいな、大人みたいな
優しいんだか、意地悪いんだかわからないような
あの声
「いい天気だな〜こんな日に練習が休みなんてもうけだな〜」
「他の皆は遊んでないで練習してるかもね
 そしたらスタメン落ちるかもよ?」
「ばぁーか
 一日さぼったくらいでこの桃様の腕が落ちるかっての」
グラリ、と揺れる自転車
「うわっっ、ちょっと桃先輩!??」
「生意気言う奴はこうだな」
人の悪い笑みを浮かべて、
ひどく楽しそうな子供の目をして

そして自転車は坂道を転がるように飛ぶように
グラグラゆれながら走ってく
後ろのリョーマを、振り落としそうな勢いで走ってく

「オレのおごりだ、ありがたく食え」
「・・・・・いただきます」
にっと笑う
その向こうに緑がゆれる
突然の休日
御褒美みたいな時間
「食ったらコレしよーぜ、これ」
「それバトミントンでしょ? なんで?」
「片付けてたら倉庫から出てきたからさ」
ケラケラと快活な返事
「ふーん・・・いいけど負けないよ」
「オレのスペシャルサーブにほえ面かくなよ」
まるで御褒美みたいな
まるで、甘い砂糖のケーキみたいな

いつも笑ってる
いつも楽しそう
きっと誰といても、そう
「くぉら、今のはオレの勝ちだろーが」
「違うよ、先輩のヘナチョコサーブは決まらなかったんだよ」
「なんだとっ」
こんな感じで、
子供みたいに楽しげに、
相手も楽しい気分にさせて
「よーし、じゃあもう一勝負」
「・・・・・いいよ、もぉ」
「なんだよ ノリ悪いな〜」
「・・・・」
例えばまたこういう休日があったら
違う誰かと楽しく過ごしたり、笑ったり
「何拗ねてるのかな? リョーマくんは」
「別に」
ポスン、と座ると 風が気持ち良く頬を撫でていく
思ってもみなかった、休日
空から降ってきたみたいな
御褒美みたいな、

「やれやれ、何考えてんのかしらねーけど」
そう言って 少しも変わらぬ調子で彼は笑う
悔しいけれど、彼の方が大人で
悔しいけれど、自分は何かとすぐにボロがでる
いつもはかくしているものが、この人の前だとホロリとこぼれる
「うっし、じゃあコレでも食って機嫌直せ」
何の脈絡もなく、彼はかばんをあさり、
そうして、ピンクの缶を出す
「あ、桃だ」
「おうよ! これこそはジューシーでスイートな桃缶様だ」
にやり、
彼の得意の笑み
「お子ちゃまリョーマ君は腹でも減ったんだろ
 これ食って機嫌直せ直せ」
ポイ、と渡された缶の冷たさ
それが気持ちよくて
また騙されている自分に気付く
「・・・・・」
どうあがいても、このノーテンキにはかなわないんだろうか
深く考えるだけ無駄なんだろうか
「・・・・・ほら、食えよ」
「・・・・・」
ジト・・・とその顔を見上げて
「ん? どした?」
何の罪の意識もなく、首をかしげた彼に言う
「どーやって食べるのさ
 缶きりは?」
涼しい風が 撫でていく

雨のしめりのかけらもない晴天
軽い笑い声が転がってく
「チェーなんだよ、せっかく持ってきてやったのに」
「お決まりすぎだよ、桃先輩」
クツクツと、笑いはしばらく場に留まり
憮然と缶を受け取った彼は 溜め息をもらす
「しゃーねーな
 んじゃあ仕切り直しだ」
「え?」

まるで御褒美みたいな休日
開かなかった桃缶
最後に落ちてきた約束
「桃缶を食う会、今度の部活休みの時な!」
「桃を食べる会だったの? 今日」
「おうよ」

暗い思考や
寂しい思いなんかは消えて
笑い声だけが軽く飛んでいく
騙されているのかもしれない
一瞬の幻みたいなものなのかもしれない
でも、
今日 こんなにいい気分ならそれでいいのかもしれない
明日のことはまた明日考えて
この休日が終わるまで ここでこうして笑っていよう



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