君のことを考えると泣きたくなる
泣くことは、負けだと知りながら

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 窓際   門倉×桜井

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アルゴン社の会議室は、窓が大きい
午前中の会議の時など、カーテンを開ければ光が山ほどはいってくるだろう
山ほどの、光
視線をやって、桜井はため息を吐いた
新しいシステム、そのために組んだプログラム
契約社員である桜井が、こんな会議の場に借り出されているのは その難解なプログラムを生み出したのが彼だからで、
今、得意気に重役の前でシステムの説明をしているあの男が質疑応答に答えられなかった場合のために、ただ連れてこられただけ
今のところ、桜井に出番はなさそうだ
理解できない話をうんうん、ともっともらしい顔をして聞いている男達
自分では作れもしないプログラムを、さも苦労して組み上げたかのように話す男
どれも、うんざりで、
だから桜井はさっきからずっと、窓の方を見てる
分厚い黒いカーテンのかけられた、窓
あければ、光がはいってくるだろうに

(ああ、退屈だ)

例えば、君なら 変則的に組んだあの部分を笑うだろう
お前らしい、などと言って
冷めたような目で、
ガラスみたいな温度のない目で、僕を見て

陽光の差し込む部屋を想像した
白い光
そう、暗いところにいる時に急に光にさらされたら、世界はすべて白くなる
その白は、僕の身体をこの世界から切り離すかのように侵食していく
白い光に、侵されていく

「それでは、他に質問がなければ」

ぼんやりと、窓の方を見ていた桜井を置いてけぼりにして、会議は終わり
得意げに、男が傍を通り過ぎていくのを横目で見遣り、桜井は薄く微笑した
そんなプログラム、
遊びみたいな、そんなもの

君なら笑うだろう?
君の部下達は、そんなものも作れないんだってさ

立ち上がった
あこがれに似た感情が胸に広がっている
ああ、ダメだ
光に焦がれてはいけない
触れたら、すべてを侵されて自分なんか消えてしまうのに
こんなちっぽけな存在なんか、飲み込まれてなくなってしまうだろうに

光、
窓際、

重いカーテンを開けたら、部屋に光が満ちていった
暖かさは感じない
まるで君みたいだ
冷たいくせに、ただ明るくて
輝いていて、触れられないけど、僕のすべてを飲み込んでいく

まるで君の一部になれたような気がする

目を閉じた
ここには誰もいない
光は心地よく身体を侵していく
消えられればいいのに
君に飲み込まれ、自分なんかなくなって
そうして君の一部になれればいい

君のことばかり、考えているよ


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