微熱 (主×桜)


はじめて二人きりになったのは、オレが仲間になって二週間目くらいの時
あんたは相変わらずボンヤリと、
マシンの前に座って何か考えていた

「リーダー? 何考えてるんすか?」
ヒョイ、と
その頼りない首筋に腕を回して画面を覗き込むと、彼は驚いたようにびくりと肩を震わせた
「び・・・びっくりしたよ、アキラ」
くわえていた煙草を慌てて口からはずし、もういっぱいになった灰皿に置く
「考え事ですか? なんかリーダーっていっつもボーっとしてますね」
「そ・・・そうかい?」
たはは、と
彼特有の情けないような笑い声が漏れた
リーダーの首筋は温かくて、なんだか子供みたいだ
「で、何してんですか?」
オレ、暇なんですけど、と
画面に羅列された記号だか文字だかを見遣ると、彼は照れくさそうに笑った
「いやぁ、ちょっと遊んでただけだよ」
難しいプログラム
ちょっとかじった程度しか知らないオレでも、それが高度なことだってわかる
これを相手に遊んでたって?
この一見ボケっとした人は、本当にすごいことをやってのける
まだ2週間くらいしか一緒にいないけど、時々本当に驚かされるんだ
この見た目とのギャップがまた、いい
「リーダーすごいですね〜
 これ、リーダーが組んだんですか?」
「いや・・・違うよ」
「え? じゃあ誰が?
 こんなシステム、破れないだろーなぁ」
「うん・・・そうだね」
難しいね、と
つぶやいた声のトーンに、ドキ、と
オレはリーダーの横顔を盗み見した
ああ、今この人は誰かのことを考えている
このプログラムの向こうに、誰かを見ている
「リーダー、恋人見てるみたいな顔してますよ」
からかい半分に言ったら、はっとしたような
それでいて今にも泣き出しそうな顔で、彼はオレを凝視した
「・・・・・え・・・」
そして我に返って、また
いつものあの、情けない笑顔を取り戻した
「何言ってるんだい
 これを破れないか、考えてるんだよ」
ただの遊びさ、と
また画面に顔を向けたその横顔にグラリ、と
何かが揺れたのがわかった
もう遅いよ、リーダー
今さら、そんな取り繕ったような顔して
何でもないように、笑っても
もう見てしまった
知ってしまった
あんたが誰かを想ってそんな顔をするってこと
そしてその瞬間に、オレの体温は少しばかり上がってしまった
リーダー、あんたってほんとに見かけとは違うんだなぁ、なんて
冗談で、彼の首に回した腕に力を込めた
肩を抱くようにして、その首筋に顔をうずめると、彼は驚いたように振り返ってどうしようもなくオロオロとした
「ど・・・どうしたんだい? アキラ・・・?」
「なんでもないよ、ちょっと熱があるだけ」
「えぇ?!」
バカだなぁ、なんて思う
何を好き好んで、
誰かを思っている人を好きになんなきゃいけないんだ
世の中にはたくさんの美女がいて
選び放題、やり放題なのに
わざわざよりによって、こんなふにやけような顔で笑ってる年上の男
何が悲しくて、
わざわざそんな相手に惚れるかな

「熱? ちょっ・・・帰って寝てた方が良くないかい?」
「大丈夫、もーちょっとだけこーしてれば治るから」
彼の温かい首筋に額をくっつけて、妙に笑えてきたオレは いぶかし気にしているリーダーを抱き締めたままクツクツと笑った
本当にバカだ
でも、こういうことってきっと、こんなものなのかもしれない
間違った相手に惚れて、
叶わないものを追い掛けて、
嘆いて、喚いて、そうしてその先どうなるのかもわからないけれど

「リーダー、あんたも災難ですね」
くく、と
つぶやいた声に 困ったような彼の声が返ってきた
「意味がわからないよ、アキラ
 君ってなんか・・・不思議だなぁ」
心配しているのか、動揺しているのか
彼の目に、にっと笑い返した
この微熱は彼のせい
このままどんどん熱にうかされて
どうしようもないところまでいって、それから
「それから、どうなるのかなんて、その時考えればいいですよね」
「え? 何が?」
怪訝そうにこちらを覗き込んだ彼の顎を掴んで、そのままス・・、とくちづけた
「?!!!!」
舌を滑り込ませ、中をかきまわし、それから何度も舌をからめとって
唇をはなした後、彼が苦しそうに喘ぐのを見下ろして少し満足した
ああやっぱり、この微熱は彼のせいだ
「な・・・・何するんだいっ」
動揺しきって、真っ赤になって彼が叫ぶ
「やりたいことをするんです、オレは」
「他でやってくれよ、僕は男だよ・・・っ」
戸惑ったように、そして居心地悪そうにまたマシンに向かった彼のその背中につぶやいた
「他じゃ意味ないよ」
誰かを想っているアンタ
わかってしまった瞬間に、生まれた微熱
どうしようもないオレ
人って不思議だよな
どうして自分じゃない誰かを見てる人を好きになるんだろう
わざわざアンタなんか選ばなくてもいいのに
叶わないと知った瞬間に、想いが生まれるなんて
そんなの不毛だと、わかりきっているんだけど

「リーダー、あんたのこと好きだよ」
「え?」

にこっと、笑った
叶わないなら、どうするかって?
そんなもの、奪うに決まってるじゃないか
その時にもし、欲しいと思ってしまったなら、
力づくでも何でもして、奪ってやる
それがどんなに、アンタを傷つけても
生まれてしまった熱は、消せない
「好きだよ、リーダー」


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