成歩堂×御剣


「ハックショイ」

それは今日で12回目のくしゃみだった
すぐ隣でするものだから、そのたびに鼓膜がびびっと震える

「ああもぉ、お前いいかげん強情はるのヤメロよな」
「む、なんだ強情とは」
「さっきから何度も言ってるだろ
 風邪ひいてるんならマフラー貸してやるって」
「いらん」
「・・・それが強情だって言ってるんだ」

桜の咲き始めた三月下旬
仕事がおちついたからと、俺達は世間より2週間ほど早い花見にやってきた
場所は近所の公園
メンバーは俺と、御剣の二人っきり

「はっくしょい」
「・・・・・・」

せっかくの美形が形無しだろう、と思いつつ隣を見遣ると 時々寒そうにぶるっと震えている
コートはもういらないけど、それでも今日はちょっと冷える
もしかしたら熱でもあるんじゃないか、と
ふと、心配になって立ち止まると 奴は怪訝そうに顔を上げた
「どうした」
その額に手を伸ばしてみると、驚いたような表情で奴は動きをとめる
ふむ、熱はないみたいだな
「でもまぁ、冷えて体調崩しても困るだろ」
「な、なにがだ・・・っ」
ぐい、と
まるで振払うように俺の手から逃げて、御剣は2歩ほどあとずさった
「ん? おまえの体調の心配してやってんだよ
 寒いんだろ、コート着てくりゃ良かったのに」
「3月にもなってコートはないだろう、格好悪い」
「・・・お前のその格好ならコートがあろうがなかろうが同じだよ」
「む、何か文句があるのか」
「・・・別に」
やれやれ、と
肩をすくめてみせて、
先に歩き出した御剣の後ろ姿を見つめた
どこか頼り無く感じるのは、あいつが時々見せる不安気な表情を知っているからか
強情そうな横顔の下に、まるで迷子の子供みたいな頼り無い顔が隠れているのを知ってしまったからだろうか

ざぁ、と
風が吹いて、どこからか桜の花びらが飛んできた
「・・・お、咲いているな」
「ああ」
公園の入り口に、ピンク色が見えた
まだ3分咲きの、寒い朝
誰もいない公園

(そういや桜にさらわれて神隠しにあうって話、どっかで聞いたことあるな)

見遣る先には確かに御剣がいるけれど
「御剣」
「なんだ?」
呼べば振り返って返事をするけれど

ふわっ

「・・・っ」
「やっぱりしとけ、誰もいないし恥ずかしくないだろ」

その頼り無い首に さっきからさんざん奴の拒否したマフラーをかけたら、抗議の目が見上げてきた
「この色が恥ずかしいんだ」
「いいじゃないか、桜とおそろいで」
「ノーテンキな色だ、お前らしい」
「俺の今月のラッキーカラーなんだってさ」
今月は運勢最悪だと占われて、厄よけにって真宵ちゃんが買ってきてくれたマフラー
でかける時には必ず持っていくように言われた乙女ちっくなこの色に
俺はもう慣れたけれど
「だったらお前がしていればいいだろう」
「だってお前、ほんとに寒そうだし」
「恥ずかしいと言っただろう」
「だから、俺しかいないだろ?」
「おまえがいれば十分だっ
 十分はずかしいわっ」
「・・・わかんねぇ奴」
頬を染めて 巻いてやったマフラーに埋もれている御剣は見ていて可愛かった
なんだかんだといいながら結局外さないんだから
最初から素直にまいてれば、寒くなかったのに
「くしゃみ、止まったじゃないか」
「・・・・・」
「なんだよ、まだ寒いのか?」
「こんなものでは寒さは変わらん」
ぷい、と
ピンク色のマフラーをひらひらさせて公園へ入っていった御剣の後を追い掛けて、俺はほんの少し笑った
照れてるのかな、と想像する
二人きりの時のあいつの表情は、新鮮で甘い
それを知って 抜けられなくなったから
ますますそれを見たいと思ったから

「御剣」
「なんだ・・・っ」

ぎゅ、と
今度は後ろから抱き締めたら、ぴく、と
震えて それから奴は真っ赤になった
こういう時のおまえの表情はたまらなく、甘い
「ななななな、なに・・・」
「寒いんだろ? こうしててやるよ」
「いい、いらんっ」
「まぁそう言わず」

ざぁ、と風か吹いて
うっとうしげな御剣の前髪がなびいていった
ひらひらと桜散る
「3分咲きってのもなかなか風流だなぁ」
「・・・」
同意を求めた相手は、俺の腕に抱かれてどうしようもなくうつむいていた
「何のために来たんだよ、御剣」
「・・・・」
うるさいな、と
声にならない声が聞こえる
これ以上は、怒るかな?
急におとなしくなったこいつに、ほんの小さな出来心

「御剣」
「?!!!!!」

ピンク色のマフラーに隠れた首筋に、一度だけキスをした
耳まで真っ赤になった御剣が、何かわめいて それからドンッ、と
俺をつきとばすまで約5秒
「貴様は何を考えてるんだっ」
「つい出来心で」
「出来心だと?!!!!」
俺から10歩以上離れて、ぷんぷんと歩いていく後ろ姿が妙に可愛くて
「怒るなよ」
笑って追い掛けたら 奴はさんざん嫌ったピンクのマフラーに顔半分うもれて振り返った
「・・・調子に乗るな」
「へーい」
桜が、風が吹いていく
ピンク色が今月のラッキーカラーだって
桜と、マフラーと、御剣の頬
「まさに、だね」
3月の朝、二人きり、こんな花見もいいんじゃないかと


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