灰色の街

その街を知っているか
灰色の空、高い建物の上から見下ろした景色は、暗くて深い
逃げだせないドブネズミみたいな奴らが、ここで大声を上げている

もっと、豊かに
もっと力を、技術を、文明を

人々は間違えた
欲のままに手を伸ばして、手に入れたのはこの汚い街だけ
そして子供達は片隅で、秩序のない生活に身を浸す

「ゼフェル・・・・何考えてる?」
ボンヤリとゼフェルは空を見上げていた
いつも、何も見えない灰色の
まるで空にもアスファルトか何かが敷かれているような景色
もう見飽きてしまった空
建物や道路や、空中標識や、街を警備する人工システムの無線機
それらで覆い尽くされ、ここの空は本当に狭い
「別に・・・・」
手を伸ばし続けた人々
その結果の、豊かだと錯角されたこの街の有り様
「お前 最近おかしくないか?」
かけられた言葉を、ゼフェルは上の空で聞いている
毎日のように、考えている
それしか考えることがないから尚更
この街のこと
生まれ育った この星のこと
もっと豊かに、と機械に埋もれて暮らす「内」の街の大人達のこと
「お前さ、変わってるよな」
言って仲間達は それぞれ自分のマシンにまたがる
合図の機械音が鳴り響き、爆音と煙をあげて仲間達は薄暗い街へと走っていった
「・・・・・行くぞ」
最後の一台も そう声をかけて走っていく
ゼフェルは、もう思考を止めてマシンのハンドルを握った
夕刻から夜明けまで、彼らは街をただ走り回る

ゼフェルは「外」の街に住んでいる
昔 発電所だった跡に何人かの仲間と暮らしていた
男ばかり、誰もが「内」の街では生きていけないはみだし者と呼ばれる者達だった
ここには面倒な法律や刑罰もなく
強い者に従うという簡単で厳格なルールの元 自由でいられた
夜になったら高速マシンで街を走り、朝 疲れて彼等は眠りについた
本能のままに欲し、欲望のままにむさぼる
誰もそれを止めないし、誰もがそれでいいと信じていた

ここは「混沌」と名付けられた「外」の街

街を走りながらゼフェルはまた、声を聞いた
「・・・・・・またか」
チッ、と舌打ちして 足下のアクセルを踏んだ
マシンは加速し、空高く浮上する
最近、彼に呼び掛ける何かを ゼフェルはよく聞いた
かすかな、しびれと共にそれは来るのだ
耳に聞こえるというよりかは、感覚に響くもの
起きていても、眠っていても
それはゼフェルに呼び掛けてきた

「おまえに、」

頭痛を覚えて ゼフェルは顔をしかめた
不快な声だ
低くて、まるでうめいているような男の声
知らない奴の、声
「なんだってんだよ」
グリップを強くにぎって爆音を響かせた
黒い煙と共にマシンはまたスピードを上げる
そんな声なんかに、興味はない
ただ煩わしいだけ
つまらない毎日
考えることは、あの灰色の街のことばかり
そうして、こんなところで無駄に生きている自分のこと
いつしか、いらないと捨ててしまった希望とか

そういった 明るい色をしたものたち

「外」の街は、昔人々が住んでいた この星で一番栄えた都市だった
向上心に溢れ、富と豊かさを追求した星の人々は ただただ毎日努力した
少しでも生活が楽になるように、と
少しでも便利に、豊かに暮らせるようにと
そうして、いつしかこの街を捨てた
廃棄物と汚染物でけがれきった この場所を捨てた
そして彼らは星の中心メインコンピューターの管理する小さな「内」の街に移り住んだのだ
彼らの街に、土はない
白い人工の壁に囲まれて、人々はそれが豊かさだと信じて生きている

上空から、ゼフェルは街を見下ろしていた
「内」の街では 真夜中も休むことなくコンピュータが働き 街の安全と秩序を守っている
赤と青のランプが交互に点滅し、不審な者の出入りを監視する
IDはW99-155
生まれた時 名前より先にもらったもの
何かの度にIDを確認され、意志とか存在とか そんな大切なものをそこでは数字で識別したのだ
うんざりだと、思った
バカげていると思った
名前を聞くより先に、IDはと問う街に、
個人を見る前に、コンピュータに記録されたデータを見る人々に

「吐き気がする」

そうして街を飛び出して、
ここで「外」の街の奴らに拾われた
それからゼフェルは、毎日をただ退屈に生きている

その声は、日に日に強くなっていった
「・・・・・・お前に、」
苦しげな、男の声
「なんだ・・・・ってんだ・・・」
その夜も突然に、意識に響いて声は言う
「お前に、」
身体を押さえ付け、のしかかるように己の欲望を突き立てているこの男ではなく
もっと別の何かが言うのだ
「お前に、」
少しの痺れが、今身体中を貫いている痛みをやわらげる
「う・・・・・・っん・・・」
もう見なれた この男のこういう顔
頬を紅潮させ こいつは最初の夜からこうしてただ欲望を突き立てるのだ
まるでそれが権利であるかのように、毎晩
そうして 必ず上から見下ろして不快な声で言うのだ
「もう少し、抵抗してもいいんだぜ」
ニヤニヤと、決まって同じセリフを吐く男
慣れた、鈍い痛み
あきらめたものがいつくもあった
逃げ出して得たものは、本物の自由なんかではなく
ここにも、煩わしいものしかなかった

「お前に、やろう」

そう、この声のように
この声のようにつきまとう
煩わしい、もの
「いら・・・・ねーよ・・・・」
男の、押さえ付けている両腕に爪を立てた
ギリ・・・と指先に力を込めたところで 脳天に突き抜けるような痛みが襲う
「ぅ・・あぅっっっ」
反った背に、冷たい汗が伝って
身体の奥で、不快に熱いものが飛び散った
ドクン・・・と、
ゼフェルはいつもの吐き気に襲われる

「外」の街に来たはじめの日
街を仕切るグループに囲まれた
皆 それぞれにマシンに乗り その中で一番に権力を持っているであろう男がニヤニヤと笑ってゼフェルにこういったのだ
「へぇ、楽しめそうな奴じゃねぇか」
それから、何台ものマシンに追い掛け回され尽き飛ばされ 冷たいコンクリートに何度も身体を打ち付けられて
さんざんに逃がされ走らされ、
やがて遊びに男達が飽きた頃 男は疲れて動けないゼフェルにこう言ったのだ
「ここでは、強い奴が法律だ」
そしてこれは洗礼なんだと
彼らは獣の欲望を解放した

醒めない悪夢のような
ただただ長い 最初の夜
気が狂う程に 持っていた全てを引き裂かれ踏みにじられて
そしてゼフェルはもう、何も欲しいと思わなくなった
自由と自我を認めてほしいと願った この地で
身体ごと全てを喰われてしまったから
ここには欲望に汚れた 獣しか住んでいなかったから

明け方、目が覚めてゼフェルは身体を起こした
下半身に響く 鈍い痛み
重い身体をひきずって 壊れた水道管まできた
ここで毎朝身体を洗う
不快なものを全部洗い流してしまいたくて
おぞましい感覚を水の冷気で消してしまいたくて
「お前に、やろう」
響くものを無視した
何もいらない
欲しいものなんて、ない
毎晩のように男に抱かれる自分
しなやかに伸びた手足と 獣のような美しい身体は格好の欲求のはけ口なのだろう
あの男は ゼフェルを放さない
「はん・・・・いい様だよな・・・」
つぶやいてみる
ここに自由はなかった
自分をみてくれる人もいなかった
ここでも「ゼフェル」という存在を 認識してくれる者はいない
それを欲して ここに来たのに
手を伸ばしたのに

「お前に、やろう」

「いらねーよっっ」
無性に腹が立った
何を、くれるというのだ
欲しいものはここにはないのに
もう、あきらめたのに
あの最初の夜
どんなに抵抗しても逃げられなかった男達の輪の中で
初めて経験する おぞましさと痛みの中、わかったのだ
どこにも、ない
欲しかったものは手に入らない
欲しいと望むから、こんな目に合ったのだ、と
おとなしくしていれば、この身を汚され犯されることなどなかったのに、と

「何もいらねーよ・・・・」
一体 誰が何をくれるというのだろう
誰が、そんなにも苦しげに 何を与えようとしているのだ
「いらねーよ・・・・・」
不快に響く
低いその声はしだいにはっきりと、
そしてすぐ側に感じるのだ
「おまえに、私の・・・・・・」
「私の・・・・・・」
ビリビリと、手足がしびれて力がぬける
「な・・・・ん・・・」
バシャン・・・と、
流れ落ちる水の中 膝をつく
腰まで水につかって 冷たさに背筋が震えた
「あ・・うぅ・・・・」
ビリビリと、何かが身体に侵入する
「う・・・・・」
まるで、身体を弄ばれている時のような感覚
中心が熱を帯びて、ゼフェルは思わず目をかたくとじた
「なん・・・なんだ・・・」
ゾクリ、と
何かが背をはいのぼる
妙な高揚感に、ついていけないのは意識だけで
ゼフェルは身体全体に、少しの痺れと快感に似たものを感じていた
「ぅうう・・・・・」
男達に抱かれたのと同じに反応する身体
何かに犯されている
何かがこの身体に侵入してくる
その奥をかきまわして、今ゼフェルの獣はその頭をもたげて熱をもっている

「お前に、やろう」

その声に、ビクリと身体が反応した
下から突き上げるような衝撃

「お前に、私の力をやろう」

それはつま先から頭まで突き上げて、瞬間
「あぅぅっっっ・・・・」

ドクン、と
ゼフェルの獣は その熱い欲望を吐き出した
途端にバシャン、と
身体は冷たい水の中に倒れこむ

うつろな意識
まだ身体は熱い
毎晩の行為と同じ、もう慣らされてしまった身体の反応
だけど不快じゃなかった
手足にまだしびれは残っているけれど あの吐き気がない
おぞましい男達の匂いもしない
ただひどく暖かいものが 身体を包んでいるのを感じた
何が、この身体に入ってきたのだろう
誰が そんなにも苦しげにこの身に侵入したのだろう

それから間もなく、聖地という場所から迎えが来た
「鋼の守護聖様を お迎えに上がりました」
無機質な声
まるでコンピュータみたいな、感情のない
「・・・・・嫌だ」
聖地なんて聞いたことがなかった
彼等にとっての世界はこの街であり この星
宇宙なんてものは遠い遠い存在でしかなく、ましてその宇宙を統べる女王の御元の守護聖など、聞いたこともなければ興味もなかった
「オレは行かない」
使者は、その表情を少しも変えなかった
「選択権はあなたにありません」
宇宙の意志です、と
その声が告げる
まるで意味がわからなかった
ただ、気味が悪くて
そしてまた誰も自分を見ないのか、と
ただ あきらめに似た感情がゼフェルを支配した

「どこにいっても、誰もオレを見ない」

つぶやきは誰にも聞こえない
怒りも、虚しさも 誰も受け取ってはくれない

聖地は見たこともない色で彩られていた
昔はこの星にもあったんだよ、と誰かが語っていた木々や緑が視界いっぱいに溢れている
まるで夢のような世界
常春の、おだやかな風の吹く幸福の場所
「・・・・・・・」
つりあわない、と
妙な船を降りたゼフェルはつぶやいた
灰色の街しか知らない子供
何の力もなくただ、男達のされるがままになっていた無力な己
欲しいものがつかめなかった両手
あきらめることに慣れてしまった
欲しいと、手をのばすことをやめた日から 自分はもう何もいらなくなった
なのになぜ、
「鋼の守護聖様、こちらです」
今さら こんな場所につれてこられ
意志に反してまで、
選択権など最初からないのだ、と言われて

まるで幻想の世界の建物
真っ白な宮殿造りの ふきぬけの広間
外の輝かしい太陽の光と、不思議に調和する白い影と淡い色の空気
そして難しい顔をした何人かの男達
「この子供か・・・・」
その前に立たされて、ゼフェルは思う
なんて情けないんだろう、と
なんてバカげているんだろう、と
抗えなかった自分
どんな時も、その抵抗は己を守れなかった
自分を見て欲しいと願っていたはずなのに、また
こんな「敬称」などで人を呼ぶ場所へと立たされている
「お前が鋼の守護聖か・・・」
呟きにイラ立った
意味のわからない言葉
鋼のシュゴセイ
そんなものに仕立て上げられ、突然にこんな場所まで連れてこられ
そして、
「お前・・・・・・・」
ハッ・・・と、
顔を上げた途端 背に痛みと衝撃を感じた
「う・・・・」
「やめないかっっっ」
目の前の男
苦しげな表情で、ワナワナと震えながらゼフェルの腕をつかんで 白い床にその身体を押し倒していた
「お前が・・・・」
しぼりだすような、声
毎日聞いた、あの声
「お前が私の力を奪い取ったのか!!!」
毎日のように、語りかけてきた あの男の声

「お前に、私の力をやろう」

憎しみを目に、男は全ての力をこめてゼフェルの身体を押さえ付けている
ただもう、呆然とした
何が何だかわからない
あの声の主だ
今、目の前にしてはっきりとわかる
なのに、どうしてそんなセリフを吐くのだろう
「お前が私の力を奪ったっっ」
まるで狂人のように、
男は魂を吐き出すかのように、叫んでそうして顔をゆがめた
なんて、苦しそうなんだろうと
ただボンヤリと意識が麻痺した

その夜、与えられた部屋にあの男が現れた
「何・・・・だよ」
昼間 あのあと色々な説明を聞かされた
聖地のこと、女王のこと、宇宙のこと
そして守護聖のこと
受け継いだものはサクリアといい、あの男から消えて 新たにゼフェルの中に宿ったのだという
「お前が奪った・・・」
男はつぶやく
また顔が苦痛に歪んでいる
その様子に、なんだか無性に腹がたった
「・・・・お前がくれたんだろ」
毎日毎晩 お前にやる、と
繰り返し繰り返し言ったではないか
お前にやる、と
お前に力をやる、と
そう言って あの朝身体に侵入ったのではないのか
「お前が、勝手に入ってきたんだろっっ」
忘れられないあの感覚
あの衝動
身体の奥から熱くなって、なのにちっとも不快じゃなかった
「お前が勝手に出てきて入ってきたんだろっっ」

叫んだ途端、その腕を掴まれて 側のベッドに押し倒された
ビリビリと、
あの痺れが掴まれた腕から身体中に広がる
まるで愛撫を受けているかのように反応する身体
「なん・・・なんだよっっっ」
どうして、こんな風に感じるのだろう
あの不快さも、吐き気もない
ただ頭が真っ白になりそうな、意識を手放してしまいそうな快感が襲う
やがて奥が熱くなり 中心が目をさますのだ
「勝手なこと言ってんじゃねーよ・・・
 テメェのせいでオレはこんなとこに連れてこられたんだろっっ」
くれる、と言ったんじゃなかったのか
毎日毎日、煩わしかったけれど嬉しかった
悪い気はしなかった
本当は、
誰かが何かをくれるなんてこと なかったから
「チクショーーーーっっっ」
なんて勝手なんだろう、と
何故か悔しくて涙がでた
こんな奴に こんなに感じるのは嫌だ
こんな気持ちいいだけで心が空っぽならいっそ、不快で痛みだけもたらすあいつらに犯されている方がどれだけマシか
「くれてやる気がないなら 最初からこんなマネすんじゃねーよっっ」
叫んでも、もがいてもその腕から逃れられなかった
じんじんと、ただ熱くなるものを感じて
ゼフェルはただもう泣きたくなった
「いら・・ねぇよ・・・
 力なんかいらねーよ・・・
 誰も何もいらねーよっっっっっっ」
途端にドクン、と
何かが身体に侵入してきた
「い・・・・・っ・・」
見開いた目に、男の苦痛の顔が映る
初めてちゃんと見たその赤い目とか、鋼色の細い髪とか
そして それはもう慣れた鈍い痛みとともに身体の奥まで侵入してくる
「あ・・・う・・・・・・」
ドクンドクン、と
熱が伝わり、未だチリチリと手足は痺れる
覚えのある感覚
今度は生々しい痛みとともに、身体に流れてくる何か
「お前に・・・・・やる」
耳もとで、その声を聞いた
それから後はただ、
熱いものが中で飛び散るのを感じ、ゼフェルのものも 同じく果てた

次の朝、浅い眠りの中 落ち着いた声をゼフェルは聞いた
「・・・・・欲しいものは手にすることができる」
ひどくおだやかな、だけど低い男の声
「そのための力だ」
確かに、全てお前に渡したから
今度はきっと 欲しかったものが手に入るだろう、と
男はつぶやいて、そうして去った
パタン、と
静かに扉のしまる音と、流れてくる風が頬に触れた

「欲しいものに、手をのばして」

つかめなかったものを、
私の手に入れられなかったものを

「・・・・・おまえにやろう」

そして、目が覚めた
温かい眠りだった
落ち着いた あの声だった
「いいのか・・・・お前はどうするんだよ・・・」
絶望のあの顔を忘れない
はじめて顔を合わせた時に あんなにも狂人のように叫んでいたのに
お前には渡さない、とわめいていたのに
「・・・・いいのか?」
誰とへもなくゼフェルはつぶやく
あの男はどうするのだろう
それでいいのだろうか
力は、完全に受け継がれてしまったのだろうか

追い掛けようとして、乱暴に扉を開いた
「え・・・・!??」
そして何かにぶつかりそうになって慌てて足を止めた
優しげな青年が ドアの前 少し驚いた顔をして立っている
「ああ・・・・朝から元気ですね」
にっこりと微笑したその顔に 思わずがなりたててゼフェルは言った
「あいつは・・・・・っっ」
必死の目、乱暴に胸ぐらをつかむ少年
なのに男は優しげな表情をくずさなかった
「あいつはこれでいいのかよっっ」

その力で、欲しかったものを今度こそ、
私は手に入れられなかったけれど、

「これでいいのかよっっ」
「ええ、いいんですよ」

ハッとして、その顔を見上げた
「いいんですよ、これで」
彼は微笑っていました、と
優しげに青年は、告げた

手に入るのだろうか
この夢のような場所で
欲しかったものが、手にはいるのだろうか
最悪の印象
無理矢理連れてこられて、わけのわからぬままに鋼の守護聖と呼ばれて
そして 窮屈な規律を教えられて

「・・・・今さら・・手に入るかよ・・・」
「何かいいましたか?」
ニコリ、と男は笑う
「さぁ、これを着てくださいね
 サイズは合うと思うんですが・・・着替えたら皆がまっていますよ」
ベットの上に置かれた 新しい服
開け放たれた窓
そこから入る この聖地の風
「・・・・・今さら・・・・・・」
ここは腐った匂いはしないけれど、結局「内」と同じ種類の場所なんだろう
決められた服を着て、きまり通りに動いて
IDとなんら変わらない「守護聖」という称号で呼ばれて

また、あきらめればいい

虚無に、また支配されそうになった時
「ああ、」
すっとんきょうな声を上げて その青年は言った
「まだ貴方の名前を聞いていませんでしたね」


フワリ、と
部屋に風が舞い込んだ
「手に入れるんだ、お前の力で」
声が聞こえた気がした


「なんていうんですか?」
あるんだろうか、ここに
手に入るんだろうか、今度こそ
IDや称号なんかで区別しない人
ちゃんと自分を見てくれる存在
ここで、自分というものを認めてくれる人が、手に入るんだろうか
「ああ、え〜と・・・そうでしたね
 人に名前を聞く時はまず自分から名乗るのが礼儀だとか本に書いていましたっ
 け〜・・・」
アタフタと それでもおだやかな物腰のこの青年に、ゼフェルは喜びを隠せない自分に気付く
「いいよ、別に」
うつむいて、少し笑った
「ゼフェル・・・」
そして 顔を上げた
嬉しそうな青年の顔
「ゼフェルですね、よろしくお願いします」
そして風がそよいでゆく
「私の名は・・・・・」

手に入るだろうか、
出会えるだろうか、
そういう存在に、求めていたものに

「そのための、幸福をもたらす力だ」

風は心地よく吹き抜けていく



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