13. 第2期 「全てのことを忘れるな〜11月〜」


撮影は長引いていた
結局、頭を冷やしたという女優の言葉に、主役の変更なく今まで進めてきていたけど やっぱり心のどこかで彼女は何かを不満に思っているようで
それは演技の端々に現れ、何度も撮り直し、何度も俺のイメージを伝え
それで予定を遥かにオーバーした今日になっても撮影はまだ終ってなかった
(いいかげん、しんどいな)
唯一の救いは、雨が降らなくなったことだろうか
最初のうちに雨のシーンを撮ってしまったから、この晴天続きはありがたかった
あとは女優さえ、主役さえ俺の思うとおりにしてくれれば、こんな撮影さっさと終るのに
いつまでも、いつまでもシーンが進まない
他の役者達は、待ち時間を持て余し気味で、主役の女優のストレスは溜まる一方
俺は溜息連発で、ここまでしんどい撮影は久しぶりだなと考える

(いっそ、主役を変えて今から全部撮りなおそうか)

こういう考えは、いつも大人の事情で実現しない
時間も、費用も無駄にはできない
ここまで撮ったら あとはもう嫌でも完成させるしかないのだ
たとえ駄作になろうとも、この女優は去年賞を取っているし、相手役の俳優はこの作品で映画デビューの人気バンドのボーカル
やる前から注目されてた
だから、俺の満足に関係なく、
作品の良し悪しに関係なく、ある程度はヒットする
それは間違いない、だからこそ

(なんて真似は、できないか)

主役交代なんてもってのほか
初日にモメたあの時ならまだしも、1ヶ月も撮影をした後で、なんて
半分撮り終わってしまった後で、なんて

(駄作にしたくないんだよな・・・)

俺の中の世界はこんなものじゃない
演じきれないから、伝わらないから今回もかなりの妥協をしたけれど
それでも、なんとかギリギリを保ちたい
わかる人にはわかる俺の世界を、こんなに時間をかけて、色褪せたものにしたくない

(ほんと、もう少し素直になってくれれば変わるのに)

女優の演技をカメラごしに見ながら 俺は溜息をついた
彼女に、ノースのプログラムを組み込めたらと思った
あれなら、言う通り動いてくれるだろう
残念ながらあれに、演技するスキルは備わってないけれど

今日も晴れ、撮影日和
空にはぽつぽつと羊雲
持ってきたカメラで、それを撮った
こんな日は、ノースと散歩をしたら奴はとても喜ぶだろう
通いなれた図書館への道とか、スーパーまでの道とか
そんな、なんでもないことでもあれは喜ぶ
(俺も若いね)
あれはノースじゃないとか
前の無垢とは違うとか
あの時間を忘れてしまったのかとか
ではあの半年間は何だったのかとか
失ったものは大きくて、今目の前にあるものと比べてしまって
あっちの方が美しいとか
あっちの方が可愛いとか
あっちの方が自由だったとか
あっちの方が欲しかったものだったとか

まるで意地を張ってる子供のようだ
それでもあれは、俺を好きで、俺の言うことなら何でも聞くんだから

(早く帰りたいなぁ)

帰ったら、あれは喜ぶだろう
主人の帰りを玄関で待つ犬に似てると思う
尻尾があったらブンブン振ってるんだろうなというような態度
それから表情
あれはノースだ
俺が自分の意思で傍に置いた、かけがえのない

(帰りたいなぁ)

溜息と苦笑が漏れた
自分がおかしい
帰ったら、ノースに優しくしてやろうと思った
だから早く帰りたいと思った


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