新月の夢 (譲×神子)


の雰囲気が少し変わったと思ったのは譲だけだった
食事の後、着替えてきたの手には当然のように剣が握られていて、彼女は弁慶の姿を見るなり言った
「法住寺に連れていってください」
「・・・どうしたんです? そんな急に・・・ 」
「九郎さんに会って、戦いに連れていってもらう許可を取りたいんです」
二人の会話に片付けをしていた手が止まった
側で白龍が首をかしげてを見上げている
「戦いに、行くの?」
「うん、私がいた方が怨霊相手には有利だから」
優しく笑って白龍に答えるのその横顔
昨日までとは別人だと、そう思った
は、この異世界にきて まだわずか数日を過ごしただけで
戦闘だって少ししか経験してなくて
ただの女の子で、手にした剣は彼女の細い腕にはとてもとても重そうだったのに
「先輩、無茶言わないでください」
「大丈夫よ、私だって戦える」
白龍にしたように 優しく笑っては答えた
大丈夫なものか
扱い慣れない剣なんかで、化け物相手に戦うなんて
それもわざわざ源氏の軍と一緒に戦場に出向いて戦いに飛び込んでいくなんて
「大丈夫、心配しないで」
にこ、と
何でもないことのように笑ったは、昨日までとは確実に違う
目の雰囲気が変わった
戸惑いや不安のようなものが 表情から消えた
多分、それを感じるのは 小さい頃からずっとばかり見てきた自分だけなのだろうけれど
他の誰も、このたった一晩の変化に気付きはしないのだろうけれど

「女を軍に加える気はない
 戦えない者は足手まといになるだけだ」
「大丈夫、今の私は戦えるから」

シンとした、冷たい廊下
凛とした横顔を、譲は黙って見つめていた
「だったら戦えるという証拠を見せてもらおう」
「はい」
まるで知らない人のようだ
はただの女の子で、戦場なんて場所には不似合いな、剣なんか似合わないような人なのに
「神子・・・平気?」
「大丈夫よ
 白龍は心配性ね、譲くんみたい」
「え・・・?」
が、こちらを見た
悪戯な目、ここに来る前によく見せた表情だと思った
「大丈夫よ、私」
繰り返す、そしてまた笑う
譲がのそういう言い方や表情に、弱いのをわかっててやっているんだろうか
「大丈夫」
「・・・腕の傷、気をつけてくださいよ」
はぁい、なんて 気の抜けた返事が返ってきた
いくら心配しても、その想いはをすり抜けていってしまう
(そういう人だとはわかってるけど・・・)
苦笑して、先々と歩いていくの後ろ姿を見遣った
心配してる、自分はいつでも
は驚く程 自分のことに無頓着で、無防備で
なのに、いつも笑って言うのだ
譲は心配しすぎだと、自分は大丈夫だと
「九郎は女性に危険なことをさせたりはしませんから大丈夫ですよ」
本人もあんなに自信満々ですし、と
弁慶の言葉に、譲はそっと息を吐いた
や皆の言うとおり、自分は心配しすぎなのだろうか

花断ちは、美しい技だった
九郎の剣は宙を鋭く切り裂き花びらを捕らえ、の剣は宙をすべるよう花びらをすくうように捕らえた
「見事だ」
驚きと感心の混じった九郎の声が 遠くで聞こえる
あの一瞬、花をとらえた瞬間のの目は、頼り無い少女のものではなかった
それが脳裏から離れない
どうして、いつのまに
あなたは、こんな技を身につけ、あんな風に強い意志ある目をするようになったのですか

そしてなんて、何もできない自分

京の町を移動している最中にも、敵にあう
怨霊と呼ばれるものばかり
譲の手には この世界に飛ばされた時から手に持っていた弓があり 必然的にそれで今まで戦ってきたけれど
何十体もの怨霊を 今までに相手にしたけれど、マトモに当たった矢は少なかった
「くそ・・・っ、」
は、譲よりももっと敵と近い場所で戦っている
それを後ろで見ながら矢を射る、敵を倒す、1体でも多く
(・・・くそ・・・っ、当たれ・・・っ)
気だけがはやる
元の世界で手にしていた弓道の弓とは違う、戦うために作られたもの
引く力を倍以上必要とし、おまけに相手は動いている意志ある者達
精神統一して的を見つめる暇もなければ、風向きを計算する余裕もない
渾身の力で弓を引いて、気だけが焦って矢を放す
それは、今までずっと戦ってきた九郎や弁慶の力にはとうてい及ばず
見事 花断ちをやってのけたにも 届かないかもしれない
正確さも、威力もない こんな弓では

こんなことでは、あなたを守れない

傷だけが増えていく
を守ろうと必死になって、強くなろうと寝る間も惜しんで訓練をして
師に従事し、戦い方を習い
少しでも、少しでも、を危険から遠ざけられるよう
守れるよう
「先輩・・・」
譲は一人、立ち尽くして空を見上げた
努力は、力をもたらせて、傷を身体に刻み込んで
ほんの少しの安堵を与えてくれた
今必要なのは力だけだ
力を得るためなら、何だってする
を守れるなら、何だってする
視線の先の空は、暗かった
今夜も眠れないままに、闇に向かって矢を放つ
まるで不安を射るように


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