69.景時と譲

景時×譲SS（ED後）

「はあっー」
俺は、思わず溜息をついた。
平氏との戦いも終わり、この後の身の振り方を考えないと思うと溜息が出てしまった。
ここに来た当時は、早く帰りたくてたまらなかったのに。
今は、あの人と離れるのが嫌で帰りたくないと思っている。
ずっと好きだった先輩は、いつの間にか兄さんと付き合っていた。
その事を知った当時は、落ち込み食事も喉を通らなかった程だ。
でも、その事を忘れる事が出来たのは俺の片割れの景時さんのお陰だ。
最初は、ちゃらんぽらんした人しか思ってなかったけどいつも俺の側にいて色々気遣ってくれていた。
言葉に出したりすることはなかったが、側にいるだけで救われていた。
俺としては、このまま京に残りあの人の側にいたい。
だが、景時さんからはっきり告白された事もなく、ここに残って欲しいとも言われたこともない。
なのに、身体の関係だけはあったりするからもしかして好きなのかと勘違いしてしまう。
今の俺は宙ぶらりんのまま、身動きが取れない状態だった。
「よう、譲」
後ろから不意に声を掛けられたので、俺は包丁を動かしていた手を止め後ろを振り返る。
そこにいたのは、兄さんだった。
「お前は、どうするんだ？俺と望美は平家と共に南の方に行く。お前は、ここに残るのか？」
兄さんの問いかけに俺は、首を振る。
「まだどうするか決めてないんだ」
俺のその言葉に、兄さんは驚いた顔をする。
「まだって、景時はそれでいいって言ってるのか？」
いきなり、景時さんの名まえが出たので思わず息を飲んだ。
「なんで、景時さんが出てくるんだよ」
俺が、睨みつけると兄さんは顔を背け頭をかいた。
「何でって、お前らできてるんだろ？他の奴は気付いている知らんがお前らがやってるとこ聞いてしまってなー」
兄さんのあけすけなセリフに、思わず顔が赤くなるのが分かった。
「付き合ってるんだろう？」
その問いかけに、俺は首を振る。
「分からない。はっきりそう言われた事もないし。それに、ここに残ってとも言われた事ないし・・・・」
自分で言っておきながら、俺は思わず涙声になってしまった。
「あのやろー」
兄さんは、低くそう言うといきなり俺の手を掴み歩き出す。
「兄さんどこ行くんだ！？」
俺が、慌てて聞くと、
「景時のとこだ。はっきりさせてやる」
そう言いみんながいる方に歩き出していく。
「そんないい」
「よくない！お前が遊ばれてるのが分かってこのままにしておけるか」
怒気の篭った声で言い、ずんずん歩いて行く。
そうする間に、とうとうみんながいるとこに着いてしまった。
「２人してどうしたの？」
先輩が、驚いた表情で聞いてくる。
兄さんはそれには答えず、景時さんの前まで進む。
「ど、どうしたの？そんな怒った顔して」
兄さんの気迫に飲まれたのか、後ずさりながらそう言う。
「景時、お前は譲のことどう思ってるんだ？もしかして、遊びで手を出したのか？」
そう尋ねると、景時さんは慌てて首を振る。
「違うよ。遊びじゃない。本気だよ」
「だったら、付き合おうとかちゃんと言ったか？この後どうするかとか言ったか？」
掴みかかりそうな勢いで、景時さんに食って掛かる。
景時さんは、気まずそうに頭の後ろをぼりぼり掻く。
「言ってないね。ごめんね。そうだね、ちゃんと言わないとね」
真面目な口調で、そう言い俺の方を向く。
「譲くん、俺は一生君と共にいたい。このまま、ここに残ってくれないか？」
俺が今まで、待っていたセリフを景時さんはいつもの軽い口調ではなく、今まで聞いた中で一番真面目な口調でそう言った。
俺は、溢れ出る涙を拭ごうとせず景時さんに抱きついた。
「はい、ここにいます。俺も、あなたと一生一緒にいたいです」

それから数日後、兄さんと先輩と平家の人が南へと旅立って行った。
それを皆で見送って、帰ろうとしていたら景時さんが俺の顔をじっと見つめていた。
「景時さん、どうかしましたか？」
疑問に思い、そう尋ねた。
「譲くん、寂しくない？」
なんてことを、聞いてきた。
この人は、今だに自分に自信がないみたいだ。
俺は、首を横に振り景時さんの手を取りぎゅっと握った。
「寂しくありません。景時さんがいますし。俺は、今幸せですよ」
俺がそう言うと景時さんはいきなり抱きしめ額に口付けを落とした。
「ありがとう譲くん。俺も、幸せだよ」
俺達は、お互いの顔を見合わせ微笑み岐路に着いた。

景時さん、いつまでも側にいて下さいね？

　　おまけ
「なあ、弁慶。俺達の存在忘れられてないか？」
九郎は、げんなりした顔でそう尋ねる。
「そうみたいですね。いつも、あんな感じであてられまして。一人身は寂しいですね」
幸せなのは、二人だけで他の人は不幸せな顔をしてたらしい・・・・・・。

みーたんさんより
投稿ありがとうございました★
http://ameblo.jp/yuzuponn-kageponn/