夢をみた
太陽がきらきらしてた、あの夏のゆめ
いつも笑ってたあいつ
その隣で、満たされていた自分
あれは、とおいとおい夏

ボンヤリと、シリウスは目を覚ました
目覚めが悪く、しばらくベッドの上でボゥっと今までみていたゆめのことを考える
あれはいつだったっけか?
リーマスがいて、ピーターがいて、
「・・・・・・・・・・・・ああ、懐かしいな・・・・・」
いつも笑ってたあいつ
永遠に、繰り返されるのだと信じていた夏

シリウスが下へとおりていくとハリーがソファで本を読んでいた
「すまないハリー、寝過ごした」
「ううん、めずらしいね
 昨日、おそかったの?」
キッチンのテーブルの上には冷めきってしまった朝食が乗っている
ハリーのとシリウスの
どちらもまだ手がつけられておらず、それでハリーが自分を待っていてくれたのだとわかった
「すまない、腹減っただろう」
「うん、ぺこぺこ」
にこりと笑って席についたハリーの頭をなで、シリウスも向かいに座った
「いただきますっ」
もう冷めてしまったオムレツにスプーンを入れて、ハリーは満足そうに顔をほころばせる
「冷めてもおいしいや
 今日のはいい出来だと思ったんだ〜」
それからグラスに牛乳をなみなみとつぐと、ぐいっと一気に飲み干した
ああ、と
その まだあどけない表情に思う
あいつも、よくこんな無邪気な顔をした
笑った顔がそっくりだ、と
シリウスの心は、とおくへと飛ぶ

遅めの朝食が済んで、一息つくとシリウスは庭にバイクを出してきた
「うわーっ、バイクだっ」
「そうか、お前に見せたことなかったな」
「うんっ
 シリウスは乗れるんだね、すごいなぁ・・・」
大型の、二人乗りのバイクにハリーが目をキラキラさせる
「ちょっと遠出しないか?
 行きたいところがあるんだ」
「これで?
 僕も乗れるの?」
「もちろん、
 ほうきで飛ぶより早いぞ」
それで、ハリーの顔がパッと輝いた
「すごいすごいっ
 乗りたいっ、行こうっっ」
それで、シリウスは早速バイクにまたがると、ミラーにかけてあったゴーグルの一つをハリーに渡した
「つけてろよ、でないと目なんか開かないから」
もう一つは自分でつけて、言われた通りにしたハリーを抱き上げ自分の後ろに乗せた
「シートベルトは?」
「そんなもんあるか、捕まってないと落ちるぞ」
慌てて自分の腰に手をまわしてきたハリーに、クスと笑い
「何かあったら合図しろよ」
言うとシリウスは、バイクのエンジンを入れた
爆音が上がり、熱気が一瞬バイクを包む
そうして、
震え上がるような振動とともに、バイクはグンッ、と前へ進んだ
そして、次の瞬間 ぶわっと風を巻き起こし、その風ごと空へと上がった
黒いバイクは、夏の熱気を切り裂いて進む

最初は、あまりのスピードに息をするのも大変だったハリーだが、次第に慣れてシリウスの後ろで辺りを見回す余裕もできてきた
バイクは風こそきるが、空を飛んでいる分障害物が少ない
真直ぐに目的地へ向かうので揺れることも少ないし、何よりハリーは普段クィディッチで鍛えられている分そういったものに強かった
どれくらい進んだのだろう
かれこれ1時間近く乗っている
下の景色はぐんぐん変わり、森も湖ももうとっくに越えてしまった
沢山の民家の並ぶ村をいくつも越えて、山や小さな湖は数え切れない程過ぎた
「シリウスっ、どこまで行くの?」
そういえば目的地を聞いていない
バイクに乗れるというので嬉しくて舞い上がっていたので気にもしなかったが
どんどん遠くへとやってきて、いったいどこを目指しているのか知りたくなった
「ねぇっ、シリウスっ」
だが、シリウスには聞こえないのだろうか
彼はこちらを振り返らないし、自分の耳にはゴウゴウという風の音ばかりが通り過ぎていく
「ねえってばーーーーーーー」
ぐいっ、とシリウスの腹にまわしていた手で彼のシャツをひっぱった
それで、シリウスがようやく反応した
ヴヴヴ・・・・とバイクがスピードをゆるめる
そうして彼が振り返った
「どした? 疲れたか?」
「ううん、違う
 あのね、どこに行くの?」
疲れはしない
バイクなんかに乗ったのは初めてて楽しかったし、景色も見ていて飽きなかったし
何よりシリウスの側にいるのにドキドキした
こんなに長い間ずっと、彼にくっついているなんて初めてなんじゃないだろうか
彼の背中にしがみついて、ハリーはこのちょっとした遠出を楽しんでいる
「ああ、えーとな、とある村のはずれの大樹まで行くんだ」
「え?」
ポカン、
てっきり湖とか、森とか、そういった場所へ遊びに行くんだと思っていたハリーはシリウスを見上げて視線で問いかける
「ちょっとつきあってくれな、」
もうすぐ着くから、と
シリウスはいうと、また前を向きバイクのスピードを上げた
何だろう
シリウスが行こうとしている場所
そこに何があるのだろう
とある村の大きな樹?
ハリーにはさっぱり意味がわからなかったが、それでも
一つだけ理解したことがあった
この遠出は、ハリーのためではないということ
二人きりの夏休みが始まって、今迄ずっとハリーのためだけに毎日をセッティングしてくれていたシリウスだったが今回は、
今回は違うのだということ
それだけ、なんとなくハリーは感じた
少しだけ、心がぎゅっとなった

それからもう1時間程バイクを飛ばして、それは静かに村のはずれに降りた
人目につかないところに止めて、二人してバイクを降りる
「痺れてないか?」
「ちょ・・・・ちょっとジンジンする」
フラフラ、と危なっかしく踏み出しながら、ハリーは照れたように笑う
初めて長時間バイクに乗ったせいでお尻がじんじんするのだ
「シリウスは平気なの?」
「オレは慣れてるからなぁ
 ちょっと遠かったな、ごめんな」
「ううん」
ポンポン、軽く尻をたたかれ、ハリーは背を反らせてシリウスをねめつける
「もぉっ」
「あはは、そーすりゃ早く痺れがとれるんだぜ?」
「いらないもんっ」
彼の腕をつかみながら、少し歩くと痺れがとれた
そうして、その頃には小高い丘がみえていた
「あの樹?」
「そう」
丘の上に、一本の大きな樹が生えている
「すごい大きいや」
「だろ?
 オレ達がガキの頃からでかかった」
二人して、丘を上り やがて村が一望できるようなそのてっぺんにたどりつく
樹は、遠くで見たよりもっともっと大きくて、
夏の陽射しから辺りを守るように影を作っていた
「ここに何があるの?」
「お前、これに登れるか?」
「え?」
言われて、改めて樹を見上げてみる
「樹なんか上ったことないけど・・・」
「高いところは怖くないよな?」
「うん、そりゃ」
今迄、ものすごいスピードで高いところを走ってきたのだし
元々、そういうものを怖いと思ったとこはなかった
「だったら大丈夫だ
 手伝ってやるからてっぺんまで上って何かないか見てきてくれ」
「てっぺん?」
「ああ」
それで、シリウスがスイ・・・と左手を上げた
ス、ス、ス、とハリーの足下から、樹に突起ができる
次々と、どんどん上まで、ちょうど階段のように突起は現れ、ずっとずっと上までそれはできていったようだった
「・・・・すごい、シリウスの魔法って凄いね」
「そーか?」
あいつはもっとすごかったぞ、と
言いかけてシリウスは言葉を飲み込み、かわりにハリーに笑いかけた
「さ、上まで行って見てきてくれ」
「うんっ」
ハリーは突起に手をかけ、はしごを上るような感覚でスルスルと上へとのぼっていく
あっという間にシリウスの姿の見えないところまで上った
(すごい大きな樹・・・・・)
ここに一体何があるのだろう
この上に、
こんな高い樹の上なんかに、何か、なんてあるのだろうか
上を見上げて、ハリーはどんどんのぼっていく
こんなに上ったのに、まだ先は続いていて
そしてそれにつれて枝はどんどん細くなっていった
(そっか、シリウスじゃ枝が折れちゃうんだ)
自分の体重でもしなるような枝
折らないように注意して、なるべく太い丈夫そうなのを選んで、ハリーは上へとのぼった
そうして、枝と葉のきれめをみつけ、
その向こうに空と光を見付けたのと同時に、
一番上で、空に向かってまっすぐ伸びている細い枝を見つけた
キラリ、と
そこで何かが光り、ザワザワと枝を揺らす風にその何かの影が揺れた

シリウスは上を見上げていた
姿の見えなくなったハリーをまだみつめ、探すように樹を見上げながら
意識は遠い昔へと飛んでいた
この樹の下で笑っていた自分達
彼のいままでの中で、一番に輝いていた時間
大好きだったあいつと、仲間達と
何よりの宝となった、彼との思い出
そして、それを閉じ込めた小さな小さな箱

「シリウス」

彼はいつもの意地の悪い顔で笑った
よく陽にやけた手足
快活な表情が、大好きだった
彼と出会えて良かったと、心の底から思う
神なんか信じない自分か、思わず感謝してしまう程の偶然
いや、それともむしろ必然か

「おまえのは、一番てっぺんだ」

しなやかな、若い獣みたいな腕がまっすぐに空へと伸ばされる
それは太陽を指差したかのようにまぶしくて、
言葉もなく、ただみとれていた
あの夏の日

「宝探しみたいだろ?
 でも、開けるのは10年以上たってからな」
絶対に、約束
それ以前にあけようとしたら爆発します、なんて
大真面目な顔をして彼は笑っていたっけ
「何だよ
 もったいつけて、たいしたもんじゃなかったら怒るぞ」
「あはは、
 ハズレとか書いた紙だったり?」
「100点のテストだったり?」
「子供かっ、お前はっっ」
「人の100点のテスト貰っても嬉しくないよね〜」
「いいもん入ってんだろーな?」
「さぁ、それは開けてのお楽しみ」

それは彼からのタイムカプセルというプレゼント
あの頃あいつは、何故かそーゆうものにハマっていて
小さな箱にそれぞれへのプレゼントをつめて、ここに隠したのだ
あの、暑かった夏
皆ですごした、あの夏休みに

「懐かしいな、」
頬をなでていく心地いい風
この樹によってできる影に、ふいてゆく風
何の魅力もないかのように見えたこのさびれた村も、皆でいれば冒険すべき場所はたくさんあった
夏休みの最後の日に、彼は笑って言ったのだ

「お前の分はてっぺんに置いてあるからな」

今朝のゆめ
最後に彼が言った言葉は何だったっけ?
あの夢をみて、思い出した
あの頃の彼が自分へと残してくれたもの
「10年たっても覚えてたら取りにこいよ」

ザッ、と一瞬強い風が吹いて、シリウスの視界にあの日の彼によく似た少年が映った
「ハリー」
「シリウス、あのねっ」
ソロソロと、降りてきたハリーはシリウスの姿が見えて気が弛んだのか、
途端足を滑らせた
「あ・・・・っ」
「・・・・・・・・・・・・・・っっ」
落ちた感覚と、鈍い衝撃
「いつつ・・・・」
側で聞こえた声に、目を開けた
「大丈夫か? ハリー」
「シ・・・シリウスっ」
たいした高さではなかったけれど、
足を滑らせて落ちたのを、下で受け止めてくれたらしく
シリウスはハリーを抱えた格好でしりもちをついていた
「ご・・・ごめんなさいっ
 大丈夫?!」
「ああ、大丈夫だ
 お前は怪我してないな?」
ぽんぽんと頭をなでられ、ハリーはうなずく
彼の腕の中で、そうしてほっと息を吐いた
「あのね、これ・・・」
服の中からごそごそと、小さな箱を取り出してハリーはシリウスに渡した
「一番上の枝にあったよ」
箱はあいており、中には時計が入ってる
「ごめんね・・・
 最初閉まってたんだけど、触ったら開いちゃったんだ」
勝手にあけてごめんなさい、と
ハリーはそれを差し出した
手に取った不思議な箱
何かの魔法がかかっているのはすぐにわかった
古そうなものなのに、キラキラしていて
それを手にした途端、パンっと勢い良くふたが開いたのだ
中には沈黙した時計が一つ入っていた
銀色の、細かな細工のされた懐中時計
だがそれは、止まってしまっていたのだけれど

「ああ、これか・・・・・・・・・・・・・」
箱を受け取って、シリウスはつぶやいた
声がかすれた
シリウスにとっては見覚えのあるものだった
銀色の、細工がとても気に入ったから選んだのだ
絶対にこれだ、と
あの時ばかりは、ゆずらなかったのをよく覚えている
「・・・・・これ、何なの?」
ハリーはシリウスを見上げた
壊れて動かない時計
これを、シリウスは知っているのだろうか
これは彼のものなのだろうか
「シリウス・・・・・?」
シリウスは、無言で箱から時計を取り出した
銀色が、きらりと輝いて
シリウスが触れたこと、
まるでそれを合図にするかのように、その時計は止めていた時を動かした
「・・・・・え・・・?」
驚いてシリウスを見上げ
それでハリーは息を飲む
シリウスの、その頬をしずくが伝っていった
無言で、彼は泣いていた

もうずっとずっと前
村でとても気に入った時計を見付けた
べらぼうに高い値札がついていたけれど、それをどうしても欲しいとシリウスは思った
「お、いいなあれ」
「だよなっ、あれ絶対欲しいよなっ」
隣にいた彼の言葉に 思いはますますつのる
「あんなに高かったら無理かなぁ」
「そんなことないって
 夏休みなんだからどっかでバイトして稼げばいい」
彼の発想は、いつもシリウスの意識の外にまで及んで
それはシリウスにとって とても心地のいいものだった
夏休みの間、学校に秘密で二人して毎日毎日 どこぞの店の手伝いをしたり畑仕事を手伝ったりして小銭をかせいだ
自分の力でお金を手にするなんて初めてで
そうやって手に入れた「二人の」時計は、何よりシリウスの自慢だった
そうして、その「二人」の時計は、それからずっと「二人の」時を刻んできたのだ

「これはな、オレとお前の親父が二人で稼いだ金で買ったもんなんだ」
シリウスは、腕の中で心配気に見上げているハリーに笑いかけた
「ある時オレ達は喧嘩をして、それでその時の衝動でオレはこの時計を森に捨てた
 後でめちゃくちゃに後悔したけど、探しても見つからなかった」
涙はもう流れなかった
大好きだったジェームズ
あの頃、何より大切で、
彼の隣にたてることが何よりの誇りだった自分
いつも輝いていた彼に憧れて、彼のようになりたいと思って
一緒に、ずっと笑っていたいと思った
親友という関係が、卒業しても大人になっても続くのだと信じていた
だから、宝物だった時計
二人の永遠を刻んでゆくはずだったもの
「ジェームズが、見付けてくれてたんだな」
つぶやきに、ハリーは胸がぎゅっとなった
ジェームズ、
自分の父親の名前
二人は親友だったと聞いているし、
だからこそ、ハリーの名付け親として今シリウスがここにいるのだけれど
(・・・・・いやだ・・・・変な気持ち・・・・)
自分の父親に嫉妬するなんて変だろうか
シリウスが、ハリーの知らないむかしのことを特別な想いで話すのが嫌で
衝動的に「嫌だ」と言ってしまうそうになる程に居心地が悪い
(・・・・・そんな僕の知らない話をしないで・・・・・)
急に悲しくなった
どうして自分を連れてきたのだろう
大切な想い出なら、一人で来ればよかったのに
シリウスの泣いた顔なんて初めてみた
そりゃ自分も、親友のロンが死んでしまったら泣くだろうけれど
だけど、今のは絶対にそんな風なものじゃないと直感した
シリウスは、ジェームズを特別に好きなんだ
だから、あんな風に泣いたんだ
悲しくなった
来なければ良かった
辛かった
シリウスに好きな人がいたなんて
自分がこんなにシリウスを好きだから、きっとシリウスも好いてくれているだろう、なんて
どうして勝手に思い込んでいたのだろう
何の疑いもなく、
同じように想われていると勘違いしていた
シリウスにとって自分はただの子供で、
学生時代、彼とともに過ごした大切な人ではないのだ
シリウスの一番になれない
急に理解して、ハリーはとても悲しくなった
胸がぎゅうっと苦しかった
だが、突然に
シリウスの腕に力が入り、そうしてハリーは抱き締められた
「え・・・・?」
温かさが伝わってくる
シリウスの強い両腕が、痛い程にだきしめてくれる
「どう・・・したの?」
「なんでもない、ハリー
 しばらくこうしててくれ」
彼の力は強く、
いつもの優しい抱擁とは違ったけれど、不思議なことに不安はなかった
むしろ痛かった心が癒されるような そんな気がして
ハリーはそっと目を閉じた
わかってしまった
シリウスが大好きだということ
親として、頼れる存在として、
そういう好きではなく、それは嫉妬という醜い感情を生むもの
自分だけを見てて欲しいなんて、思ってしまうようなもの
そういう種類の、好きだということ
気付いてしまった
ハリーは、目を閉じて 痛い程に抱き締めるシリウスの腕の強さを感じていた
このまま、時間が止まればいいのに
このまま、ずっとこうしていたい

僅かに聞こえる秒針の音
銀色の、細工の綺麗な時計
自分達二人の力で手に入れた、最初の財産
「お、これもいいな」
「だめだ、絶対こっちだっ」
夏休みのほとんどをかけて手にしたお金
二人分足して、一つしか買えなかった
「いいじゃん、どーせいつも一緒にいるんだから一つで」
何よりも嬉しかった彼の言葉
二人分のお金を足して、買ったもの
その時から それは二人の時を刻み
失った時に、ひどくひどく後悔した
「また買えばいいじゃん」
笑った彼の前で、泣いてしまったのもあれが最初だった
そうして、
結局そのまま時が流れ、
やがて最悪の日がやってくる
ジェームズ・ポッターが死んだ?
誰だ、そんな嘘を言う奴は
彼が死ぬなんてありえない
だって彼は、秘密の魔法で守られているんだから
友情という砦に、守られているんだから

そうして、止まってしまったシリウスの時間
あれから、シリウスは全てを止めた
想いはそのままに、
やがて、彼の息子と出会う

「ハリー、もう少しだけ、このままで」

僅かな、音
風に消されてしまいそうな音
だが、確実に あの時計は時を刻み出した
それとともにシリウスの時間も動き出す
ああ、
動いている
あの頃から、止まってしまった自分というものが
ここでようやく解放される
あの痛みに縛られ続けた自分が、
彼と、彼の残したものによって癒され解き放たれていく
「二人の」時計は、
彼が愛し、彼が残した者の手によってもう一度シリウスの手に戻り
そうして今度は、
このまだ幼い少年の側で時を刻む
ジェームズ
ジェームズ
憧れだった
親友だった
誇りだった
誰よりも、想っていたよ
誰よりも、想っていたよ

動けなかったのだ
縛られていたのだ
あの夢は、解放を呼んだ
そして、今腕の中にはハリーがいる
大切な、大切な少年
愛おしさで気が狂いそうになる程に想っている
止まっていた時が動きだし、
ジェームズへの、どうしようもなかった想いも風とともに流れていった
からっぽになって、シリウスは少年を抱きしめた
ああ、もう一度
もう一度、誰かを愛してもいいだろうか

とおい昔から、
まるで太陽の王のように輝いていた彼のように
大樹はまっすぐに立ち風をおくる
それは昔 二人を包んでいたものと同じ、夏の暑い風



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