その日の天気は晴れ
ラジオの予報では、明日まで晴れが続くとのこと
陽射しはきつくて、空はカラカラで
風が強い いい日だった
今日はたっぷり果物を採ってかえって、二人でケーキなんかを作ろうっていってたのに
なのに何なんだ、これは

シリウスとハリーは果樹園の中にある小さな休憩所で足留めをくらっていた
窓からはザーザーと、うんざりするような音が聞こえてくる
「明日まで降らないっていってたのに〜」
不満気に窓の外をみやって、ハリーは溜め息をついた
朝からでかけてきて、たっぷり果物をとって、
シリウスと二人、なんだかんだと楽しくやってたのに
突然の夕立ち
それで、慌ててこの小屋に逃げ込んだけれど
雨は止む気配を見せず、いっそう激しく降り続いている
「こりゃ当分ダメだな〜」
奥のドアからシリウスが両手にタオルをかかえて入ってきた
「ほら、来いよ
 濡れたままだと風邪ひく」
言われて素直に従うものの、顔の不服は隠せない
せっかくの一日を、雨が台無しにしようとしている
帰ってケーキを作る計画だったのに
「拗ねるな拗ねるな
 そのうち止むよ」
わしゃわしゃと、乱暴に髪をふかれハリーはグラグラする身体を必死で支えながら愚痴ってみる
「だって、やむの待ってたら夜になる・・・・・・・・」
「そん時はここで一泊だな
 ホラ、脱げ」
濡れた服を脱ぐのを手伝ってもらって、
それから自分の肩や腕なんかをふいてくれるシリウスに ハリーは何か照れのようなものを感じながらも まだあきらめきれずに不満を漏らす
「今日ケーキ作るって言った」
「だったら、晴れるように祈ってな」
そう言って、シリウスは笑うと濡れたハリーの頭をくしゃっとなでた
「お前はタオルにくるまってろ
 服、乾かしてやるから」
「シリウスは?」
「おれはいいんだよ
 濡れたくらいじゃ風邪なんかひかないから」
お前とは鍛え方が違うんだよ、と
シリウスは言うとバッサと乱暴にイスにハリーの服をかけ、それから自分も濡れた服をぬいで一緒にかけた
「えーと、飛び出せ太陽のかけら・・・・だったかな?」
シリウスが、唱えて片手を少しだけ上げた
「?」
キラ、と
彼のしている指輪が光り、それからテーブルの上に白いぼんやりした球体が現れる
ハリーは目をみはった
魔法だろうか
でも彼は杖を振ったりはしていなかった
「何? 今の魔法?」
「偽太陽」
服乾かすくらいの威力しかないけど、と
シリウスは笑うと、あいている椅子に腰かけた
「すごいすごいっ、杖もないのにどーやったの?!」
「秘密の指輪に仕掛けがしてあるんだ」
ハリーは思わず身を乗り出して、彼の左手にはめてある銀の指輪を覗き込んだ
宝物でも見付けたように、胸がドキドキしている
「昔作ったんだよ
 指輪も今の間抜けな呪文も」
にやり、
彼の悪戯な目にハリーは憧れに似たものを抱いた
ああきっと彼は、自分くらいの年の時に、この指輪でいろんな悪戯をしたのだろう
きっと楽しかったに違いない
今の彼がそうであるように、きっと不敵に楽しげに笑ったに違いない
その時自分も側にいたかった
彼と一緒に、指輪に細工をしたり変な呪文を考えたりして笑いたかった
「ずるい・・・・」
うつむいて、つぶやいてみる
ずるい
きっと楽しかった昔
そんな話を今するなんてずるい
自分はその仲間には入れなくて、側にいるシリウスが何だか遠く感じてしまう
急に寂しくなって、ハリーは恨みがましい声で言った
「ずるい」
睨み付けて見上げると、戸惑ったようなシリウスの顔があった
「何が? どーした?」
オロオロと、彼は急に機嫌を損ねたハリーを側に抱き寄せて
それでハリーはまたうつむいた
「だって、僕といるのに・・・」
それで、側で彼が小さく笑った
今ので全部わかってしまったのだろうか
昔、彼と笑った誰かに妬いたこと
寂しいと感じたこと
それから、そう思ってしまう程にシリウスに自分だけを見てほしいと思っていること
シリウスが大好きだということ
「何?! 子供っぽいって思った?!」
「妬いたわけだ」
「悪い?!」
顔が赤くなるのがわかった
なんだかもうやけくそな気分になる
悪い?!
僕はシリウスが大好きなんだから、やきもちぐらい妬く
知らない昔の話なんか特に
「いやいや、光栄だなぁ」
「何がっ」
余裕をかましているシリウスに、ハリーがむっときて顔を上げると、彼は視線を合わせてまた笑った
「オレはハリーのことしか考えてないよ?」
「う・・・・・・・・・・・嘘だ・・・」
「本当」
にこり、
そうして突然に、シリウスはハリーを抱き上げるとその膝の上に乗せた
「え?!」
「誰かさんが妬いてくれるから嬉しくなっちまった」
ぎゅっ、と強い腕に抱かれて今度こそ顔が真っ赤になった
言葉もとっさに出てこなくて、それでただされるがままになるしかなく
そんなハリーの背中をぽんぽんとシリウスは優しくたたいた
「・・・・・・・・・」
何だか自分ばかりが恥ずかしいほどに好きなのがばれて、
シリウスにはうまくはぐらかされた気がするのだ
それでも抱いてくれる腕が気持ち良くて心地ちいいから
ハリーはやがて目を閉じた
「おやすみ、ハリー」
すぐ側で、シリウスの声を聞きながら
その向こうで、ザァザァという、今は不快ではなくなった雨の音を聞きながら
小さな小屋の、シリウスの腕の中 ハリーは浅い眠りに落ちていく



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