「よ、セブルス」
突然、後ろから抱きつかれて、びくりとセブルスは動きを止めた
静かな図書館に、今の声は相当響き、何人かの生徒かチラ、とこちらを見た
「・・・・・・・」
セブルスは無言で振り返り、自分の首に腕を回している存在を睨み付ける
赤と黄のユニフォームを着て、そいつはにこやかに笑っていた
「おまえ夏なのに、なんて格好だよ」
ズシリと無遠慮にセブルスに体重をかけて、そいつはカラカラと笑う
なるほど
彼が半袖のユニフォームなのに対し、セブルスは長袖のシャツのボタンを首元までしっかりと止めている
ついでにネクタイも規則通りにしまっている
「暑くねーの?」
「そんな心配をしてくれるのなら、さっさと離れろ
 おまえがくっついている方がよっぽど暑い」
ふん、と
言ってセブルスは前を向いた
調べものの途中で図鑑を探していたのだ
こんな奴にかまっていられるか、と無視を決め込んだセブルスに、ジェームズは不敵な笑みを浮かべた
「・・・・・・セブルス、髪、暑くねぇ?」
ピクリ、
セブルスの動きが一瞬止まったが、それでもなんとかジェームズを無視して本棚から一冊の本を抜き取った
「なぁ、お前 髪伸ばすことにしたの?
 いつもよか伸びてるぜ?」
相変わらず、ジェームズはセブルスに後ろから抱きついたままで
声こそ小声で話しているが、それでもこんな場所でこんなことをしていたら目立つことこの上ないだろう
ただでさえ、ジェームズはどこにいても人の注目を浴びているのに
「僕がどうしようと勝手だ」
平静を装い、セブルスは言い放つ
そう、勝手だ
今迄 耳の下あたりで切っていた髪を急に伸ばしはじめたのも
こんなに暑い季節に、伸びた髪をおろしているのも
「ま、いいんだけどね」
ツ・・・・と、
ふいにジェームズがセブルスのその首筋に顔をうずめ、それでセブルスは思わず声を上げそうになった
「・・・・・・・・・・っっ」
かろうじて踏み止まり、睨み付けてやろうと振り返ったら にんまりといつもの意地の悪い笑みをたたえた彼と目があった
「あの印、隠そうとしてるだろ」
途端、ダメだとわかっていても、顔が真っ赤になるのはどうしようもなかった
「・・・・・・・・」
どうしようもなくて、セブルスはやっぱり顔をそむけることしかできず
そんな彼にジェームズは満足そうに笑った
「消えないよーに、特別魔法かけちゃったからな〜
 何しても、消えないだろ?」
くくく、と
彼が楽しげに耳もとで笑うのが 本当に恥ずかしくて
「ひ・・・・人の身体に勝手なことしてよくも笑っていられるなっ」
「なんでさ、
 印だってちゃんと言ったし、やる前にも言っただろ?」
「言ったから何だっ
 だいたい、いつもおまえはっっ」
「しーーーーーーーーー」
「!」
いつの間にか興奮して、大声を上げていた自分にはっとして、セブルスは口をつぐみ
「まぁまぁ、オレは別に隠すなとは言わないよ?
 おまえの黒い髪 きれいだから好きだし」
にこりと笑ってジェームズは言った
そうして、もうすこしで肩につきそうな黒髪にそっとくちづけをし、
不覚にもされるがままに、どうしようもないセブルスは顔を真っ赤にして相手を睨みつけるだけだった
「お前のうなじはそそるから、隠してくれるとオレしか見れなくなって独占欲満たされる」
にやり、
その言葉に ドキンと心臓が跳ねたのを感じ取らせてしまったか、隠し通せたのか
ジェームズは何も言わず、ただ満足そうに、悪戯っぽく笑ってセブルスの身体を解放した
「今夜、行くから」
もともとの用件はそれだった、と軽く笑って彼は去ってゆき
残されたセブルスはまだドキドキいっている心臓を持て余しながら 言ってやりたかった言葉をひとりごちた
「何でもかんでも勝手に決めるな」
今夜、行くから、とか
セブルスはオレのものだ、とか

そうしてその夜、スリザリンのセブルスの個室では、
軽やかな鈴の音とともに 窓からの侵入者が一人
それを渋々迎え入れる部屋の主人が一人
二つの影が、存在するのである
今夜も闇夜が、二人を隠す



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