あいつが試合の後、もちろん勝った後 必ずすることがある
左腕を高く上げて、空の高いところをぐるりと回る
必ず3周
それが、奴のきまり
その腕に、編込みの赤と緑の腕輪が踊る

その日、まったく不機嫌にセブルスは村まで下りて買い物をしていた
明日のジェームズの誕生日になぜかプレゼントを選びにきている自分が不愉快なのだ
どうしてあんな奴に、と
ぶつくさいいながらも
そういえば、ほうきの手入れをいつもさせているし
こないだはレポートに必要だった珍しい草を取ってきてもらったし
(別に頼んだわけじゃないのに、あいつが勝手にやってることだから恩を感じることはないんだけど・・・・)
言い訳に、言い訳をしてみたり
(まぁあいつにここで恩を売って、後々また都合のいい時に使ってやればいいんだ)
何かと、もっともらしい理由を考えて一人で納得してみたり
それで不機嫌に、セブルスは村を歩いている

だいたい、
ジェームズに贈り物など考えたこともない
スリザリンの連中なら本とか、薬草の瓶詰めとか、
そういったもので喜ばれるのだろうが
(あいつは何がいいんだ?)
たいていのものなら持っているだろう
手先が器用で、よく何やら変なものを作っては仲間とふざけあっているのを見かける
クィデッチでいるものなら使うだろうか?
だが、自分が選手ではないので何が必要かなんてわからない
お手上げだ、と
いっそ、食べ物にして簡単にすませてしまおうか、と
ぼやきながら村はずれの雑貨屋が目にとまり、ふと入った
中は雑然としており、セブルスにはとても好きになれない雰囲気がある
だが、売っているものは魔法関係のものばかりではないようで 普通の服や小物なんかも置いてあった
銀色に光る指輪なんかに少しだけ心ひかれる
「・・・・・・・でもこれじゃポッターというよりかはブラック・・・」
いつもジェームズの側でチャラチャとそういったものをつけているのを思い出し顔をしかめた
あんなバカっぽいものはジェームズには似合わない
(・・・・・あーもうっ)
イライラする
あいつはいつもいつもセンスのいいものを贈り物にくれる
自分の好みを知り尽くしているというか、今欲しいものがバレているというか
大抵それは石だったり、草だったり、花だったりしたけれど
(あいつに花なんて似合わなさすぎる)
それはルーピンだろう、と
また不愉快になって、セブルスは溜め息をついた
いっそ、何が欲しいのか聞いてこれば良かったか
だが、そんなことを聞いて妙な気をもたせたくないし
何より あいつがどういう返事をするかなんて分かり切ってる
本気か冗談かの区別のつかないような顔でこういうのだ
「お前が欲しいな」
冗談じゃない
それでいつもいつも、翻弄されて、振り回されて、疲れ切って

「・・・・なんでそんな奴へのプレゼントをこんなに悩んで探してるんだっ」

もう帰ろうと、きびすを返して
目の端に、よく見なれた色が一瞬映った
「?」
側まで寄るとそれは赤と緑の紐で編まれた腕輪
(野菜みたいな色合いだな・・・・・)
でも思った程に不愉快な組み合わせてはない
「赤と黄色はないのか?」
探してみるが ない
緑とグレーならあったが、そんなスリザリンカラーをあいつにくれてやってもな、と
最初に見たそれを手に取った
「・・・・・・」
こういうものなら似合うかもしれない
あのよく陽にやけた腕に結べば、いいかもしれない
あんなブラックみたいにチャラチャラしてるのではなく
「これはね、ずっと身につけていると幸運が訪れるんだよ
 そしてこの紐が切れた時には願いが叶うのさ」
店の者の話に、そうか・・・と
少しだけ嬉しくなった
そうか、だったらいいかもしれない
あいつに幸運なんて、と思うけれどそれでも
口には出せない部分で、人にそういうものを与えられるあいつをいつもいつも羨ましく思っているから
自分のあげたものに、少しでもそういう効果があったら それは嬉しいことではないかと 少しだけ思う

次の日から、奴のシャツの袖から時々 それがのぞくのが見られた
奴が手を振ったり、するたび
ごし自然に、それは奴にとてもよく似合っていた
そして試合の後、奴は必ず それをつけた左腕を掲げて空を回る
どこにいても必ず自分を見つけだし(試合中によくそんな余裕があるものだ) 必ずセブルスの上を、回る

幸運の、腕輪を掲げて



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