セブルスは、飛行術が苦手だった
1年の時に、はじめて授業を受けた時も 彼のほうきはグラグラとあっちへ向いたりこっちへ向いたり、おとなしく彼の手におさまってくれなかったのだ
4年になっても、こればかりは決して巧くなったとはいえない成績で
スリザリンで優秀な者として名前を上げられてるセブルスの、悩みは常にそこにあった

「あれ? お前 このホウキ、ブルースターシリーズじゃん?」
ある日、いつものように読書の邪魔をしに来たジェームズが そこにほうり出されてあったホウキを手にとって声を上げた
「・・・・・・・・そうなのか?」
「そうなのかって、お前のホウキだろ?」
「僕はホウキにはくわしくない」
むしろ、そんなものこの世からなくなってしまえ、と
まるで呪いでもかけるかのような視線を、セブルスは自分のほうきに向けた
「ブルースターシリーズって結構やんちゃなのが多いんだよな〜
 オレも前使ってたんだけどさ、慣らすのに大変で」
嬉しそうに その柄の部分を持ってジェームズはホウキにまたがった
トン、と軽く地を蹴ると それは難無く浮き上がる
「うわ〜なつかしいな〜」
すいーーーーーー、といとも簡単にそのほうきを乗りこなすジェームズに、一瞬だけ憧れに似た感情を抱く
こういう風に、自分のできないことを難無くこなしてしまうところに魅力と、苛立ちを感じる
見上げる空を、暫く飛んだ後、ジェームズはまたセブルスのところへ戻ってきた
「お前、これ1年の時買ったやつ?」
「そうだ・・・・」
「それにしちゃ、ずいぶん綺麗だな
 そんで手入れが全然されてない」
言われて、セブルスは自分のほうきを見た
綺麗だとか、手入れだとか
そんなのが見ただけで分かるのだろうか
たしかに、セブルスは授業以外でほうきには触らないからきれいだろうし、
もちろん大嫌いなほうきの手入れなんかするはずもなかった
いや、そもそもほうきの手入れの仕方なんて知らないし
「おまえさ、飛行術の点悪いの このせいもあるんじゃねーの?
 このほうき お前に合ってないよ
 おまえみたいなのが、こんなジャジャ馬乗りこなせるかよ」
笑いながらジェームズは言うと、ざくざくとしっぽの部分を手で整え出した
「・・・・・悪かったな
 ほうきなんてどれも同じじゃないのか、
 そんなのは それを勧めた店の奴に言え」
ムス、と
不愉快になってセブルスは立ち上がった
「そんなに好きならお前にくれてやる」
ふん、と
キョトンとこちらを見ているジェームズを睨み付けるとセブルスはその場からスタスタと去っていってしまった

さて、その日の夜
とんとんと、窓をたたく音にセブルスは書いていたレポートから顔を上げた
こんな時間に、窓をたたく
そんな非常識な奴は一人しか知らない
「・・・・何の用だ、ポッター」
不愉快そうに窓を開けて、不愉快そうに顔を突き出すと そこにはいつものようにふよふよとほうきにまたがった彼の姿があった
「よっ、お前明日授業あるだろ」
片手には 見覚えのあるセブルスのほうき
整っていたしっぽの部分がなんとなくザクザクしているのは気のせいだろうか
柄の部分も少し短くなっているような気がする
先端に削ったような跡がある
そしてそこに何やら銀の布がまきつけられていたり
「・・・・・・何だ、それは」
「何ってお前のほうきだよ?
 乗りやすいように手、入れてやったんだぞ」
どうだ、といわんばかりに得意気にそれを差し出し、ジェームズは笑った
「乗ってみろよ、騙されたと思って」
そうして空いている方の腕を捕まれる
「ちょ・・・・っ、ここは窓だぞ?!」
「ほうきに乗るんだからどこからだっていいだろ
 落ちるわけでもなし」
その言葉に恨めしそうに、セブルスは差し出されたほうきを見る
落ちるのだ
セブルスのほうきは 彼が乗るとグラグラして落ちるのだ
こんなところから乗ったらジェームズの前で大醜態をさらすことになるんじゃないのか
「・・・・・・・」
「はやくしろって、微調整してやっから」
強い力で思いきりひっぱられ、それで仕方なくセブルスは窓に身を乗り出した
「・・・・・・」
柄を掴み、いつものようにこわごわとまたぐと それはぴた、と手の中に収まった
「?」
ついていた膝がふよ・・・と窓から離れると、ジェームズが腕をつかんでひきよせる
それに従うようにセブルスの乗ったほうきは ふよふよと窓からはなれ外へ出た
「ゴー」
途端、ぽんと背中を押される
ちょっと待て、と
言う暇など無かった
意思に関係なくほうきは進み、セブルスの大嫌いな風の圧力がかかる
「う・・・・・・・・っ」
だが、いつもより安定している
グラグラして柄につかまっているのがやっとな、あの感じはない
ただどこまでも滑っていってしまうけれど
「セブルスっ、止まれってっ」
後ろからジェームズの声がする
止まれといわれても、
ああ、どうやって止まるんだったか
それよりも風が強くて息苦しい
思った瞬間、びゅん、と音がして 横からジェームズの手が伸びてきた
「ストップ」
柄を握っている手に自分の手を置いて、それでジェームズはほうきを止めた
「うーん、ちょっと速かったか?」
ジェームズが手をはなし、ふよふよと後ろへ回りこんで、ほうきのしっぽを手でざくりとすいた
小型のナイフでけずったりして、
その間も、ほうきは大人しくセブルスを乗せて浮いていた
(・・・・・・手入れとかでこんなに変わるものなのか?)
今迄ならこんな風には浮いていられなかった
乗るとグラグラして、今にもセブルスを振り落としそうな勢いだったのだ
「柄がお前の身長には長過ぎたんだよ
 しっぽは買ったばっかのは整ってるから 安定しないんだ
 速さを出すためにそういう形に設定されてるのもあるけど・・・」
カチャっとナイフをしまい、ジエームズは笑う
「ま、あとは技術だけどな」
そうして、
いつものあの悪戯な顔をしてひとつ

「本日のお代はコレで」

ひとつ唇に触れた
温かくてやわらかい、と

「うわ・・・・・・・・・っっ」
「わっ、セブルスっっ」

思った途端にほうきは落ちる
反則だ
こんな神経を使っている時にそんなことをされたら
結局、醜態じゃないか
だからお前は卑怯だっていうんだ

「大丈夫かよ」
クスクスと笑うジェームズのほうきに救出され、セブルスは一人でふよふよ飛んでいる自分のほうきを恨めしげにみやった
「・・・・誰のせいだ」
低くうなったら、また軽い笑いが返ってきた
「そりゃ申し訳ない」
ちゃんと手入れしろよ、と
言い残して彼は去っていく
その後ろ姿を見送って、セブルスは一つ溜め息をついた
手に残ったほうき
慣れた手付きで改造されたほうき
こんなものに愛着が湧くとは到底思えなかったが・・・
「・・・・・・」
柄に小さく星のマ−クが彫られているのを見て苦笑した
いびつな星
名前でもつけたのだろうか
それとも所有の印か
「勝手に・・・・」
そのまま窓際にそれを立て掛けてセブルスはまた苦笑した
おかげさまで明日の授業はいつもよりは、憂鬱ではないかもしれない



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