ホグワーツに夢喰いが出た
そんな噂が生徒達の間で流れ、一人二人と、寮に戻ってこない生徒が現れた

「夢喰いにやられたんだな」
「夢喰いって何だよ? 」
「夢を喰われるんだ
 喰われた人間は、夢からの帰り道がわからなくなって目を覚まさなくなる」
「夢の中に置き去りってことさ」

生徒達の話をボンヤリと聞きながらハリーはチラ、と時計を見た
スネイプに今夜行くと伝えた
その時間がそろそろ迫っている
「僕、今日は戻らないから」
「また夜遊びか〜?」
ヒラヒラとクラスメイトに手を振って、ハリーは談話室を出た
外は冷える
スネイプの部屋は地下だから、寒いんだっけ
マントを羽織ってこればよかった
だいたいどうしてスネイプは、あんな地下なんかに好んで部屋を構えているのだろう
薬品と同居なんでごめんだ、と
ハリーは彼の待つ部屋へと足を早めた

いつもの通り、スネイプは本を読んでいた
「こんばんわ」
顔を上げ、スネイプはいつもの無表情で本を閉じた
後ろ手でドアを閉め、鍵をかける
オレンジ色の控えめな灯りがユラユラ揺れているこの部屋の、
こういう雰囲気が、最近のハリーのお気に入りだった
彼の横顔にわずかな灯りがあたって、きれいなのだ
近寄って、頬に触れキスをするとスネイプはわずかに肩をふるわせた
「今夜も寒いですね、先生」
こんなに冷えてる、と
ここまで来る間にすっかり冷たくなってしまった両手を、彼の頬に当てた
「そんな薄着でウロウロするからだ」
「先生にあたためてもらおうと思って」
にこり、
いつものようにわざと意地悪気に言う
わすかに眉を寄せ、無表情が崩れる瞬間
彼が、心の揺れを隠せない瞬間が、ハリーは好きだ

シーツを強くにぎりしめて、スネイプが背を反らせる
時々もれるうわずったような声が、静かな部屋に響いた
「先生、もっと声出して」
熱を帯びたスネイプの、その部分に触れながらハリーは繰り返す
「先生」
「あ・・・・・・・・・・・・っはっ」
熱く、熱く、もっと、もっと
「先生、もっと先生の声をきかせてよ」
敏感な部分を容赦なく攻め上げ、同時に後ろへと指を入れながら
ハリーはスネイプの顔を覗き込んだ
目を固くとじて、苦しそうに、
「はっ・・・・・・・・あっ・・・・・・・・あふっ」
与えられる刺激に、声を押し殺すこともできずに
「先生、もっと」
「あぁぁっ」
強く強くそれを握られ、一度スネイプは白濁を吐いた
「う・・・・・・・・・はっ・・・・・」
「あーあ、また勝手に一人だけいって・・・」
ずるいよ、と
彼の萎えた足を広げさせ上げさせた
「はっ・・・・・はふ・・・・」
「僕もいかせてね」
「ポッタ・・・・」
「名前を呼んでっていってるのに」
ぐい、と
そのさっきまで指でかきまわしていた入り口に腰を進めた
圧迫感が、心地いい
無理矢理に奥まで入れると、ひどく熱いものかからみついた
「あぁぁっ」
彼の悲鳴に似た、それでも快感を隠せない声が上がる
心地いい
彼を支配している気になる
組みしいて、こんな姿をさらさせて、犯して、
誰も触れられない場所へと、こんなにも深く侵入して
「気持ちいい? ちゃんと感じてる?」
一番奥を、何度も何度も突き上げると、そのたびに声が上がった
切ないような、痛ましい声
「先生のこんな声、僕しかきけないね
 そういうのって、たまらないな」
ギシギシ、と
ベッドが悲鳴を上げるほどに突き上げられ、
スネイプは何度も声を上げた
頭が真っ白になりながら、ハリーの言った言葉を理解しようと努力する
「先生、先生は僕だけのものだよ」
「は・・・・・はふっ」
「答えて、先生
 先生は誰のもの?」
「あ・・・・・・あぁぁぁぁぁっ」
何度目だろうか
激しく突き上げられ、スネイプは果てた
直後、そのしめあげにハリーもいった

ボンヤリと、スネイプは目を開けた
いつの間にか眠っていたようで、目覚めると暗い床が見えた
「・・・・・」
ここはどこだろう
何をしていたんだったか
立ち上がると、体のあちこちが妙にぎしっと痛かった
何故だったか
辺りを見回しても、ただ暗いだけで何も見えない
「・・・・・・?」
そこには何もない
視界の届くずっと向こうまで、何もなかった
(何だったか・・・・・)
色々なことが頭にひっかかって思い出せない
ここがどこかもわからない
最後に聞いた言葉は何だったか
最後に考えていたことは何だったか
最後に、何をしていたんだったか
スネイプは、立ち止まって思考に沈む
目を覚ます前
痛む体
こいうい時はきまって、そうだ
彼と会っていた
あいつに
くったくなく笑う、あいつに

「・・・・・ジェームズ?」

ふ、と遠くに人影が現れた
見知った顔
「よっ」
彼と会うたびに、手や髪や、頬や、首に触れられた
彼の腕は陽に焼けていて、筋肉がきれいにつき、力強かった
「何してんの? セブルス
 早くしないと授業始まるぜ? 」
ふ、と顔を近付けて彼が言い、すぐ側で笑った
「それともオレとさぼる?」
グラリ、
一転して景色が変わり、そこはいつもの裏庭になる
授業中
月曜日の午後一番は、ここは誰にも見つからない場所になる
二人で、よくここで会った
唇に触れられて、それから全てに触れられた
「誰もこないよ、ここには」
覗き込んで笑った彼の向こうに、いつもの青い空が見えた
ああ、今日も天気がいい
そんなことを思って、それから彼の顔をみつめた
首筋にキスされて、びくりと体が震える
せめて声を出さないように、と
こらえていると、側でクスクス笑われた
「いいじゃん、オレしか聞いてないんだから」
「そういう問題じゃない・・・・・」
ふわり、
土の匂いがした
ここは外なんだから当然だ、と
目を閉じた
すると急に、何か不安のようなものが胸を支配して真っ黒にした

「・・・・・・・・・・何?」

足りない、何か
考えなければいけないことがあったはずだ

「ジエームズ?」
「ん?」
「・・・・・ジェームズ?」
「何? セブルス」

目を開けたら、奴はすぐ側で笑っているんだろう
いつもの、明るい顔で
だけど、
だけど、あの匂いがしない
土の匂いはするのに
ジェームズの、太陽の匂いがしない

ギクリ、とスネイプは目を開けた
上にかぶさっているジェームズの体を押し退けて、後ずさった
「これは夢か・・・・・?」
いつも外を飛び回ってた彼
太陽に愛されているかのように、彼からは気持ちのいい陽の匂いがした
彼が側で笑うたび、彼に抱きしめられるたび
その匂いを感じた
晴れの日の空みたいな、匂い
「・・・・・・・・・・・・・ここは夢か・・・・」
そして、と
スネイプは笑ってるジェームズを見つめた
「お前が夢喰いか」
「おや、これはこれは、聡明な方だ」

眠りから覚めない生徒が何人も出た
医務室のベッドはいっぱいになり、教員は夢喰いの仕業と断定した
明日の夜、何らかの対処をするよう決定していた
結界も、張っていた
なのにまさか、自分のところに来るなんて

「不安定な心の持ち主のところが、一番はいりやすいので」

クツクツと、今やジェームズの姿ではなくなったそいつは不快に笑った
「アナタの心はグラグラですね」
眠りに落ちる前、何を考えていたのだったか
ハリーの言葉を頭の中で繰り返していたのだ
返事をしようとしていたのか、
それともただ、その意味を理解しようと鈍った頭で必死だったのか

「ジェームズの夢が、心地いいようですね?」

ああ、そうか
ハリーが言ったのだ
「あなたは僕だけのもの」と
それで奴を思い出してしまったのだ
だから、こんなものを呼んだのだろう

「ジェームズがお好きなようですが?」

自分の甘さに苦笑して、スネイプは目の前のものを見た
昔、ジェームズが言った
「おまえはオレだけのものだよ」
そして、ハリーも同じことを言った
「僕だけのもの」と
揺れなかったといったら嘘になる
だが、それはけしてあの頃に帰りたいと思ったわけではないのだ
今、目の前にいるハリーに全てを与える覚悟がある、と
そう答えを出していたのだ
そう、答えようとしていた
言えなかったけれど

「ですからこの心地いい夢の中にずっといればいいと思うのです」
「断る」

一日早いが、これも何かの因縁か
身の危険を感じて、再びジェームズの姿を取った夢喰いに、スネイプは失笑した
「生憎、その顔に容赦しようなどとは微塵も思わん」
呪いの呪文を唱えた
明日の仕事が一つ減った
それだけのこと
金属音のような悲鳴を残して、夢喰いは消えた

次に目覚めた時、スネイプはすぐ近くで寝息を聞いた
スースーと規則正しく、
それは静かな部屋に響いている
ベッドにまっすぐ寝かされていたスネイプの、その隣に潜り込むように眠っている少年
今さっきまで、ここに夢喰いがいたなどとは、夢にも思わぬ無邪気な寝顔
見下ろして、苦笑した
(同じ顔で同じことを言うか・・・・独創性に欠けるな)
そっとかがみこんで、頬に口づけた
冷たい外の風の匂いがした
今ここにいるのは、自分を必要とした二人目
触れたいと言い、欲しいと言った変わり者の二人目
「物好きが二人もいるとはな・・・」
つぶやいて、スネイプもまた毛布に潜り込んだ
いつか言うことができるのだろうか
結局、言えなかったあの言葉を
「全て、お前のものだ」
隣で眠る少年に、言える時が来るのだろうか



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