入学の歓迎の宴の時
スネイプは初めてハリー・ポッターという少年を見た
最初、目を疑った
まさしく生き写し
彼が、
ジェームズ・ポッターが帰ってきたのかと錯角した
そして、彼から目が放せなくなった
帰ってきたポッター
目を放したら、またどこかへ行ってしまう気がしたから

「先生は、よっぽど僕がお嫌いのようですね」

何かの課題について減点した時に、彼はそう言った
あんなに幼くて、たった11才の子供だった彼は
やがて、年を重ね 今やスネイプの身長と並ぶほど
ジェームズの見せたことのない表情を彼がするたびに
ああ、
ここにいるのはジェームズではないんだ、と
スネイプは何か、いい様のない感覚を感じた
今ここにいるのは、記憶の中の彼ではなく
自分の知らない顔をする
年より大人びた、強い目の少年

「先生は、僕が嫌いなんですか?」

嫌い?
そうではない
最初の印象から、どんどんと変わっていくハリーという存在
彼はつねにこちらを向いて、その思いをぶつけてくる
子供特有の強引さで
彼にはなかった、痛い眼差しで

「僕は先生が嫌いじゃないんですけど」

知った痛みを感じた
そして、泣きたくなった
同じ顔で、同じことをいった存在を、自分はすでに失ってしまった
そして、もう二度とそんなものはいらないと思った
手に入れた幸福に似たもの
それを失った時のあの痛み
自分というものが消えてしまいそうになる程の目眩
彼がいない
それだけで立ってもいられなくなる程痛かった
そんな思いは、二度とごめんだと
吐き気がする程繰り返した
なのに、
なのに、彼は言うのだ
ジェームズと同じ顔で、同じ声で

「好きだから、奪おうと思ったんです
 だって、待っていても手に入らないでしょ?」

その目は子供とは思えない程に、冷めていて
何かを諦めているのか、覚悟しているのか
怖い程に、真剣なものが浮かんでいるのを何度も見た
繰り返される行為
奪われる度に、つのるものがあった
触れられたいという欲求
彼に、
ハリーという名のこの少年に、触れられることが嫌ではなかった

「先生は、僕の名前を呼ばないんですね」

落ちそうな意識の中、痛い声を聞いた
名前、
なぜ呼ばないのか
呼んでしまったら、思いがつのるから
ハリーと、
その名前は もう自分の中で特別になってしまっていたから
これ以上踏み込んではいけない
手に入れることが怖かった
そして、もう一度失うことに怯えていた

失うくらいなら、何もいらない

だが、願いとはうらはらにつのる思い
ハリーのぶつけてくる思いは、痛い程にスネイプを犯し
やがては身体中を支配していく
苦痛ばかりを押し付ける 子供じみた行為
だが、それでもスネイプは
心の底では、求めているのだ
もっと、
もっと欲しいと
まるで泣き叫ぶように、悶えている

「・・・・・・・・ハリー?」
ぼんやりと目をあけて、スネイプは辺りをうかがった
誰もいない
身体を起こすと身体に痛みが走っていった
この鈍痛
もう慣れてしまった感覚
これは彼が自分を抱いた証
彼が、自分の中をかき回していった痕
痛みに耐えながら、スネイプは目を閉じた

「先生、名前を呼んで」

彼の名前
ハリー、と

「呼んで」

苦笑して、スネイプはうつむいた
子供じみた言葉
わがままみたいな欲求
でも、どれもこれもに彼の痛い程の思いを感じる
そして、
それに寄り掛かってしまいたいと思う心が揺れる
「ハリー・・・・・・・・・」
つぶやいてみた
なんて愛しい名だろうと、
思ってまた苦笑した
ハリー、
もはや彼にとって ただの生徒ではなく
記憶の中の彼の、生き写しでもなく
ハリーという個人
スネイプに、怖いくらいに思いをぶつけるまっすぐな少年
きつい目をした、愛しい少年
スネイプはひとつ息を吐いた
彼への思いを自覚して、
また繰り返すのかと自嘲ぎみた自問を繰り返して
だが、結局思いは変わらなかった
そしてスネイプは、また名を呼ぶ
思いをこめて
苦笑に似た溜め息をもらして



女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理