早朝、ハリーは突然意識を取り戻した
今迄、死んだように眠っていたのが急に飛び起きたせいで 一瞬目眩がした
勢いに、額に乗せられていたタオルが膝のあたりに落ちる
「・・・・?」
見なれない白い空間
ここは医務室
ふ、と見ると側のソファで スネイプが眠っている
「・・・・・・・そうか・・・・」
ようやく、ハリーに昨夜の記憶が戻ってきた
昨日の雪遊びで、風邪をひいたんだっけ
薬をもらいにここへ来たら、スネイプがいて、それでそのまま・・・・

「・・・・・・・先生、こんなとこで寝たら今度は先生が風邪ひきますよ」

看病をしてくれたのだろう
空いているベッドで眠ればいいものを、こんなに側で
こんなソファなんかで寝ているのだから
そういえば、昨日は口移しで薬を飲ませてくれたし、なんて
少し嬉しくなりながら ハリーはスネイプの側へと寄った
「先生ってば、起きてください」
うつむいたその顔を覗き込んだ
それで、ふと違和感に気付く
「・・・・・・・・・・・・先生?」
熱い
側へ寄ると熱を感じる
あわてて、ハリーはスネイプの額に手を当てた
「・・・・・・・・・・・・・」
熱がある
昨日は何度もキスをしたし、夜の間看病させてしまったのだとしたら
(うつしちゃったんだ・・・・)
苦笑して、ハリーは机の上に置きっぱなしになっている薬を手に取った
(僕が元気になったってことは この薬でいいんだよな)
紅潮したスネイプの顔を両手で支えて上向かせた
それで、ようやくスネイプが目をあけた
「先生、大丈夫ですか?
 僕が風邪、うつしちゃったんですね」
ぼんやりと、こちらを見つめるスネイプにハリーは苦笑した
(意識、あんまりないのかな?)
薬を飲ませないと、と
昨日 彼がしてくれたように、その薬を口に含んだ
(にが・・・・)
唇を重ねて、そっと彼の口の中へと流し込む
コクリ、と
スネイプが飲み下したのを確認して、唇をはなした
いつもより熱い、その体温
見下ろすと、スネイプはぼんやりとこちらを見ていた
「先生・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・ポッター?」
つぶやくような、何か戸惑ったような声だった
「そうですよ?
 ・・・・・・・・大丈夫ですか? ベッドで横になってください」
スネイプの身体を支えて、ベッドへ寝かせようと
ハリーは彼の身体に手をまわした
「・・・・・・・・・・・・・・・・! 」
途端、まるでしがみつくように
抱きしめるように
スネイプの手がハリーの背中に回った
「ポッター・・・・・・・・・」
「せ・・・・・?」
戸惑って、呼び掛けようとして
だが、次の瞬間にスネイプの腕から力が抜けた
「わっ!?」
慌てて彼の身体を支えて そのままベッドへと移動させた
熱のせいか、
スネイプは気を失っていた
(・・・・・・・・・・・・・・・・・)
こんな状態になるということは、相当酷いということだろうか
こんな時にマダムポンフリーはいないし、
自分には薬を飲ませること以外は何もできないし
誰か先生を呼んでこようか、と
そんなことを考えた時だった
「え・・・・・・・・・・・?」
ツ・・・・・・、と
スネイプの目の横をしずくが流れていった
「せんせい?」
慌てて、その頬に触れた
涙なんて初めてみた
熱のせいで、苦しいのか
それとも、

「・・・・・・・・・・・・ジェームズ・・・・・・・」

ドキン、とした
聞いたことのない、声だった
なんて切ない
なんて悲しい
そして、なんてなんて、狂おしい程に求める声
それからもう一度だけ、彼の目からしずくが伝った
その後はもう、
ただ衝動的に身体が動いた
暴力に似た、乱暴なキスをして
そのままハリーは部屋を出た
頭の中が、ゴチャゴチャだった

ジェームズ、と呼んだ
それは彼にとって特別な名前なのだろう
あんなに痛い声を知らない
彼の涙なんか初めて見た
ジェームズ
その名をあんな風に呼ぶ程に、
もういないものを泣いて呼ぶ程に、
大切なのか
想って、いるのか

痛みがハリーを襲った
「・・・・・・・・・なんだ、そーゆうことなんだ」
スネイプが、自分を見たり
話しかけたり
側にいてくれたり
キスをしたり
行為を、受け入れてくれたり

「かわりってこと?」

あの人の、
あの名前の主の、
ここにいる、ハリー・ポッターの父親の
「似てるって、いってたもんね」
自嘲に似た笑みが浮かんだ
好きになって
奪って
それでも、最近は受け入れてくれていると思っていたのに
あんな酷いことをする自分でも
それでもこうして看病してくれたり
嫌だというのを無理に押さえ付けても
繋がっている時は、伝わるものがあると信じていたのに

「全部、僕の勘違いで
 先生にとったら、よく似たかわりだったってことだね」

ひどい気分だった
笑ってしまいたくなるような、不愉快で、痛い、心
「バカみたいだ、僕」
そうして、それから涙がこぼれた
「ばかみたいだ」
その目には、静かな光が閃いて
口許には、冷たい笑み
自嘲ぎみた表情で、少年は溜め息を落とした



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