ベッドのきしむ音
それから、甘い香の香り
頭の芯がボーとして、それなのに身体の奥だけ妙にはっきりと熱をもっているのを感じて
その感覚に浸りながら、リーマスはボンヤリと天井を見ていた
やわらかな刺激が 滑るように身体の上を這っていく
少し細めの、男の手
それがスルスルと、彼のまだ成長途中の肢体をなであげてゆく
舌は先程から胸の突起を転がしたり突いたりと、動きを止めない
両の手でつま先から首筋まで触れられて、
身体はだんだんと妙なしびれを感じていた
「ルーピン君・・・・・君は美しいね・・・・・」
「先生・・・じらさないでください・・・・」
自分でも驚くような艶やかな声
それはこの香のせいだろうか
それとも もう1時間近く続いている愛撫のせいか
リーマスは身体の中心のほてりがおさえきれなくなっていた
「先生・・・・・・お願い・・・・・」
男は年でいうとリーマスの3倍くらい
昼間には薬学を教えている ひどく無口な男だった
「ルーピン君・・・・・君のその声がもっと聞きたい」
やがて、男はリーマスの中心にやんわりと触れ、そうして立ち上がってうずいているそれをにぎると手の中でクチクチとしごきだした
途端にぼんやりとした意識がはっきりと冴え、与えられた刺激に身体は素直に反応した
「は・・・・あっ・・・あっっっ」
ビクン、ピクンと腰が浮く
それに合わせて男の手の動きが早くなる
「せ・・・先生っっ
 あっっ・・・・・あん・・・っっ」
シーツを強く握り、一度果てた時には頭の中は真っ白だった
「う・・・・・はん・・・・・」
その自分で出した白い液を 先程からの愛撫でやわらかくなっている後ろの入り口にツ・・・とぬられ その感触にリーマスはまた腰を浮かせた
「君はとても綺麗だ・・・・・」
まるでうっとりとした様子で、男は言う
そうして丁寧に入り口に何度も何度もその細い指を入れては出した
「ん・・・・・ふぅ・・・・」
圧迫感と同時に、妙な高揚がリーマスには生まれている
一度果てたにも関わらず、身体の中心はまた熱を持って頭をもたげてきているのだ
欲しい、と
出かかった言葉を彼は飲み込んだ
「あん・・・・あぅ・・・・」
この先生はじらすのが好きなのだ
自分がこうして耐えられなくなるのを楽しんでみている
だったら、もっとそういう風にして、楽しませてあげるのもまた・・・
「あ・・・・あんっっっ」
クチュクチュと、淫らな音が辺りに響いて
あとはリーマスの艶やかな声だけ
荒い息遣いにまじって、やや意識して出すあえぎ声が部屋に響いて男の欲求を刺激している
「せ・・・・先生・・・・っっ」
もうどれ程じらされただろうか
指だけを何度も何度も突き入れられ、いきそうになるとその動きを止められてしまうのだ
そうして そのたびに懇願するように彼は言う
「先生・・・・・もぉ・・・入れてください・・っっ」
荒い息の下、あえぐように言うその声に 男も息を荒げて満足そうに笑った
「そうですね、入れてあげましょう・・・・ルーピン君」
まるで授業中のように 男はリーマスを呼ぶ
時々、じっとりと今のような目で彼を見て 授業の最中に彼を指すことがある
「では、ルーピン君、この問題を君に・・・」
ある種の快感を、そういうことで得ているのだろうとリーマスは考える
そうして、そんな彼の期待に答えてあげようと、
リーマスはこういう時のすがるような目を一瞬だけ黒板の前の教師に向けるのだ
そうして、その教師がヒク・・と何かを感じて目をそらすのを見届ける
それで、感じるなら安上がりな先生だね なんて
その時には思っているのだ
この、リーマス・ルーピンという少年は
「先生・・・・・いかせてくださ・・・っっっ」
何度目かの懇願に、男はやっとリーマスの待ち望んでいるものを彼の中へと押し入れてきた
「ん・・・・んぅ・・・・・」
たいして大きいわけでもない男のそのものを、まるで誘うように自分の中に飲み込んで、リーマスは彼の腰の動きにあわせて息を吐き出した
「はっ・・・はんっ・・・・・あんっ・・・・」
やがて、突き上げられる感覚に、身体のその辺りがジンジンと少しずつ少しずつ麻痺するような感覚に捕われる
そうして、その後 言い様のない快感の波が襲ってくる
ズンズン、と
腰に響く衝撃を飲み込んで、やがてリーマスは果てた
そして、ほぼ同じ時 男もリーマスの中で果てた

それからだるい身体を起こし、彼が帰ることに渋い顔をする男にニコリと微笑んでリーマスは彼の部屋を出た
身体がだるいのは あの部屋中に充満している香のせいだ
彼お手製の妙薬だか何だか知らないが、頭がボーっとしてしばらくダルいのは何とかしてほしいものだ
そんなことを考えているうちに リーマスは談話室まで帰ってきた
チラリと壁の時計に目をやる
(もう皆 寝てるな・・・・)
明け方の4時、いくら夜更かしが好きなあの二人も眠っただろう
自分もさっさとシャワーを浴びて眠りたい
明日もまた授業があるし、こういうことをした後は身体が疲れてしょうがない
絵をくぐった談話室の、暖炉の火はもう消えていた
ヒンヤリと冷たい空気の中 人の気配に顔を上げた人物がいた
「・・・・シリウス、まだ起きてたの?」
「お前こそ、お盛んなこった」
チラリとリーマスの、その赤い痕の残っている首筋に目をやり、ニヤリと笑って彼は言った
寒くないのか、火の消えた暖炉の側で本を読んでいる
「何してるのさ?」
「調べもの
 気になりだしたら寝れなくてな」
本のタイトルは「ホグワーツの歴史」
シリウスは建物の構造のページなんかをパラパラとめくっている
「また抜け道探し?」
「おう、どーもここらへんが妖しいんだよな
 それでさっきジェームズと言ってたんだよ
 来週末、徹底調査しようって
 どーせ来週末は皆 ホグズミード村に出てるしな」
悪戯な目のシリウスにリーマスはクスと笑った
「そーだね、本当に抜け道が見つかったら4つ目だもんね」
「おうよ、
 ま、これはオレが調べとくからお前はさっさとシャワー浴びて寝ろ」
「うん、おやすみ」
シャワー室へのドアを入り、閉める前にチラリとシリウスを見た
彼はもう本に目を戻し 手製の学園見取り図と比べて何やら考え込んでいる
パタン、と
小さな音をたててドアをしめた
そして少しだけ、リーマスは苦笑した

学園は少し前から、バレンタインムードに包まれていた
好奇心旺盛で、自分達の楽しみのことしか考えていないジェームズ達には全く見向きもされない行事だったが 周りはそうはいかなかった
抜け道探しの悪巧みに忙しい彼等の周りで、バレンタインムードは日を増して高まってゆき、それにつれてリーマスに何かメモをわたしていく男がチラホラと目撃された
「あのさ、気になってたんだけどあいつら何なわけ?」
図書室で、いそいそと帰っていく上級生の後ろ姿にジェームズが聞く
「あー・・・・バレンタインのお誘いだよ」
にこりと笑ったリーマスに、間を置いてジェームズとシリウスは二人して肩をすくめた
「お前 男によくもてるよな」
「バレンタインにあいつとデートなわけ?」
「ん〜でも色々さそわれてるから・・・彼とじゃないかもしれないけど」
やがてジェームズから溜め息がもれた
「お前さ、好みとかないの?
けっこうキワモノとやってるだろ、薬学のあいつとか・・・」
言ってジェームズは顔をしかめた
そういえば普段から 薬学の教師について、あの「無口な変態」などと悪態をついている
それを思い出してリーマスは笑った
「まぁ変なとこもあるけど・・・・悪い人じゃないよ?」
そうして先程上級生の持ってきたメモを制服のポケットへ入れる
すでに そういった種類の誘いが7.8人からきている
それを考えて、リーマスは苦笑した
バレンタインは今週末
この中の誰と過ごすかなんて、考えても少しも楽しいことではなかった
それでも、その日になれば人肌恋しさに誰かを選んでしまうのだろうか
「ピーブスが邪魔なんだよな〜
 あいつらを近付けない方法を考えないとな〜」
「あのあたりに二度と近付きたくなくなるような嫌〜な思い出をやつらにプレゼントするか?
っていってもあいつら ちょっとやそっとじゃヘコたれないしなぁ」
クスクスと悪巧みは進む
ジェームズとシリウスの楽しげな声を遠くに聞きながら、リーマスはあと何日かでやってくるバレンタインデーのことを考えていた

夜、誰もいなくなった教室に忍び込み、リーマスは上級生のやってくるのを待っていた
彼はハッフルパフのシーカーだが、今までに一度もジェームズに試合で勝てたことがないのだ
それをいつも根にもっているが、リーマスにはベタ惚れしている7年生だった
「すまん、遅れた」
「遅いですよ、もう帰ろうかと思いましたよ」
うんざりした口調になるのは ここが寒いせいだ
暖炉に火はないし、2月の夜は冷える
そんなところで20分もまてば身体は冷えて凍えそうだ
「しょうがないだろ、チームのやつにつかまってたんだ」
言うと彼はリーマスの冷えた身体を抱き締めた
鍛えられた腕の中で、リーマスは目をとじてみる
ああ、この人は力強いけど、シリウスの抱き方とはまた少し違う
彼のは力強いというよりかは、乱暴だから
「14日の約束、どーなった?」
リーマスの服をめくり、素肌に舌を這わせながら彼は言う
彼もバレンタインにリーマスを誘った一人だ
「・・・・・んぅ・・・・・・」
時々胸の突起に歯を立てられ、それに反応して声を上げながらボンヤリと、リーマスはバレンタインのことを考えた
暖かい暖炉、悪戯の相談をしているジェームズとシリウス
ジェームズと僕はココアで、シリウスはコーヒーで、
それで夜遅くまで 笑って話す
そういうのが、今一番欲しかった
こんな、寒い場所での愛撫ではなく
こんな好きでもない男の、腕の中ではなく
(・・・・シリウス・・・・・・・・)
声に出して呼んでしまいそうになった途端、
それが伝わったのか、きつくきつく突起を噛まれた
「ひっっ」
背をそらせて顔をしかめた
「痛い・・・先輩・・・・・」
「痛くされても感じるだろ?」
彼はリーマスの身体によく歯をたてて傷痕を残す
この男はサドなんだろうか、と
またリーマスの思考はそれた
ことに集中できないばかりか、寒さが身にしみて身体が凍える
上の服を全て脱がされ、彼は下にも手をかけた
「・・・・こんな寒いところでやる気ですか?
凍え死んでしまいますよ、僕」
驚く程、不機嫌な声だった
「・・・・なんだ、まだ遅れたこと怒ってるのか?」
困った顔をしたその男にリーマスは、努力していつものあの笑顔を作った
「もぅ怒ってませんよ
 ただ、あんまり寒いから、今夜はもう帰ります」
脱がされた上着を羽織ってまた微笑んだ
「また明日、先輩」
そうして走って教室を出た
心の芯まで、冷たくなった気持ちがして泣けてきた
悲しいのではない
寂しいのでもない
ただ、自分自身がばからしくなって苦笑した
今は早く、あの暖かい談話室に戻りたかった

談話室は、まだ何人かの生徒で賑わっていたが その中にジェームズもシリウスもいなかった
そのまままっすぐシャワー室へと入り、熱いシャワーで身体をあたためた
談話室に戻ってココアを入れて、そうしてその前に一人座って部屋の中を見回した
いつもの指定席に一人きり
ジェームズはチームの打ち合わせにでも行ったのか、それともまたセブルスを追い掛けてスリザリン寮に忍び込んでいるのか
あたたかな暖炉の火の側で、せっかく入れたココアにも手をつけずにリーマスは目を閉じた
そうして、いつのまにか眠った
ここは暖かいけれど、誰もいない
さっきの方が、まだ良かったかもしれない

それから何時間もたって、リーマスはふと目が覚めた
「さむい・・・・」
「ん? なんだ、起きたか」
暖炉の側にかがんでいたシリウスが顔をこちらに向けて言った
「こんなとこで寝てたら風邪ひくぞ?
それともここで男と逢瀬か?」
だったらオレはおいとまするけど、と
意地悪気な声が言う
「そうじゃないよ、うたたねしてただけ
 ・・・・・ジェームズは?」
「スリザリン
 あいつも もの好きだな」
半ば吐き捨てるように言ったその言葉に、リーマスは苦笑する
そうして、そんなジェームズに腹をたてながら、側をはなれられないシリウスも、もの好きというものなんじゃないだろうか
それともただ、一途なだけ?
もしくは、自分のように シリウスもまたバカなのかもしれない
「機嫌悪いね、シリウス」
クス、と笑ってリーマスは彼の方へ身をかがめた
「せっかく大発見してやったのに、あのバカはセブルスちゃんにご執心だからな」
ふん、と悪態をついてシリウスは暖炉に火をつける
「ほら、つけてやったぞ」
「ありがとう、あったかいよ」
「お前にしろジェームズにしろ寒がりだよなぁ
 別に室内なんだから そんな寒いことないだろ」
言うシリウスは制服のシャツ一枚で平然としている
「僕はジェームズほど寒がりじゃないよ」
笑って、リーマスは悪戯っぽくつけ加えた
「暖炉がついてれば、裸になっても平気だしね」

それから、皆が寝静まった寮の、誰もいない談話室で二人はその身体を重ねた
「いつも思うけど・・・シリウスは乱暴だね」
「どの男と比べてんだよ」
ひどく不機嫌なシリウスに抱かれながら、その乱暴な手付きにリーマスは何かものすごい安堵を覚えた
そうして同時にとても痛い
掴まれた腕と、ギシ・・・・としみる心と
それから、慣れた手付きで蕾をほぐして突き上げられる彼の指の感触と
「あっっ・・・・・・・あぅ・・・・・」
思わず出た声に、慌てて手で口をふさいだ
誰かが起きてきては大変だ
こんなところでこんなことをしていること自体が とても危険なことなのに
「そうそう、そーやってな
 声出すなよ」
意地悪くいい放ち、自分は手加減する気も配慮する気もゼロで、
シリウスは自分のものでリーマスの最奥を何度も何度も突き上げた
そのたびに、熱さと痛みと衝撃に 声が上がる
それを必死にかみ殺して、リーマスは耐えた
やがて、痛みが快感に変わってくる
こういう抱かれ方が好きなんじゃない
だけど、シリウスの乱暴な愛撫と、不機嫌さを隠す皮肉と、意地悪な言葉が、彼の中を刺激する
頭の芯をグチャグチャにされ、淫らな音に身体が反応する
そうして、知り尽くされているのか シリウスは必ずリーマスの一番に感じる部分を愛撫する
自分勝手に突き上げてくるくせに、絶対にそうやって彼の快感を呼ぶ抱き方をする
そうして、お互い十分に高めあってから果てるのだ
一緒に、
そういう、シリウスの抱き方が好きだと
白濁していく意識の中でリーマスは思った
そうして、身体の、そこだけひどく熱をもった部分に強い強い刺激を与えられ、
同時に一番奥で熱いものが放たれるのを感じて、果てた
その瞬間ばかりは、声をかみ殺すことが出来なかったかもしれない
シリウスの腕の中で、彼の名を呼んだ
シリウスに抱かれると、誰に抱かれる時よりも幸福で、寂しい
そんなことを考えながら、どっと押し寄せてきた疲れに ふ・・・と目を閉じてしまった
シリウスの側だから平気だと、そのまま目を開けなかった

さて、バレンタインを明日に控えた夜
ジェームズとシリウスはそれどころではなかった
ピーブスを目当ての場所に寄せつけない方法
それを計画し、朝から実行中だったのだ
そうしてそれは夜まで続き、夜中になっても終わらなかった
「明日はオレと過ごしてくれるよな?」
この日13度目のその台詞にうんざりしながらルーピンは談話室の入り口を見つめていた
(大丈夫かな・・・・)
ピーブス対策を、できるなら手伝いたかったけれど、バレンタイン前日という日がそうもさせてくれなかった
今日は色んな人に捕まって、明日はどこどこで待っているからと言われたり、返事の催促をもらったりした
夜になって寮に逃げ込んだものの 同じ寮の先輩につかまって夜中までこの有り様
手伝いに行きたくても行けなかった
リーマスは溜め息をつく
これが成功すれば 明日二人は抜け道探しをするのだろう
調べてある場所にもし本当に抜け道があったら、そのままそこを通ってホグズミード村へと行ってバタービールを飲んで騒ぐだろう
自分はどうするんだろう
もちろんジェームズ達と行きたいが、自分につきまとってる奴らがいたんじゃ抜け道探しなんてできないだろう
二人の邪魔はできないし、やっぱり一緒には行けないだろうか
溜め息を、また一つついた
「オレといるのがそんなにつまらない?」
言われて苦笑する
「そうじゃないよ」
そうじゃない
彼は優しくて、話もおもしろいし、色んなことを知ってる
つまらないわけじゃない
ただ、ジェームズとシリウスにはかなわないだけ
誰も、
この学校内で誰も、
あの二人にかなう者なんかいない
魅力という点において、
そして、その他全てにおいて
「そうじゃないよ、ただ
 ジェームズとシリウスが戻らないから心配なだけだよ」
時計は夜中の4時を過ぎた
そろそろ夜があけるだろう
悪いことになっていないといいが
計画はうまくいったのだろうか
こんなに時間がかかるということは、失敗したのだろうか
それとも、ひどく手こずっているのか
姿が見えないのが不安だった
隣のこの男させいなければ、と
何度も思った
そうして、我ながら自分勝手だと、自嘲した

結局 朝になっても二人は戻ってこなかった
うとうとと、あのまま談話室のソファで眠ってしまい目がさめると外はもう明るかった
廊下ではバレンタインで浮かれた声や、週末の喧噪のはじまりがうかがえる
隣で一緒に眠った先輩を起こさないようソファを立った
ジェームズとシリウスが心配だった
こんな時間まで戻らないとなると何かあったのだ
そう思って立ち上がった途端 勢いよく、本当にものすごい勢いでジェームズとシリウスが転がり込んできた
昨日の服そうのまま、二人ともひどく汚れている
一瞬ポカンとしたリーマスにジェームズが興奮した声で言った
「ざまーみろ、ピーブスのやつら
 今日一日、あそこからでられないぜっ」
「何してんだよ、リーマス
 ボーっとしてないで今のうちに行くぞっ」
シリウスも、大声で言った
よからぬことを企んでいる者がここに二人
ポカンと突っ立っているリーマスに手を伸ばした
「はやく来いって、リーマスっっ」
ジェームズの身体はもう絵の向こうに消えていた
シリウスの差し出した手に、リーマスがボーとした頭で手を伸ばすと
勢い良くその腕を掴まれて引っ張られた
「よし、行くぞっっ」
絵を通って廊下に出て、転がるように3人で走った
「お前もあとで見てみろよ
 あのピーブス達の不様な格好っ」
笑いながら走る二人にリーマスもまたクスクス笑った
「見つかるかな、抜け道」
「オレの推測に間違いはないっっ」
「夕方にはバタービールだな」
そうして3人は廊下の向こうへ消えていった
笑い声だけが、その姿の後を追った

その晩、疲れた身体をたっぷりのバタービールであたためて3人は学校に戻ってきた
3人とも始終笑顔で笑っていた
そうして、そんな3人が談話室に戻ると、まだ浮かれムードの残る談話室の一角に 山程つみあげられたチョコがあった
「何これ?」
「なんだお前達 どこいってたんだよ
 今日はバレンタインデーだろ」
それは、お前達へのチョコだよと 誰かが言った
グリフィンドールのスーパーシーカーであるジェームズにはもちろんのこと、下級生の女の子から人気のシリウスも、男女ともに交際の申し込みがたえないリーマスも チョコは今年も大漁だった
「・・・・今日だっけ」
シリウスはつぶやいてリーマスを見た
「今日だよ」
クスと笑ったその顔に シリウスは怪訝な表情を浮かべた
「お前 男どもからの誘いはどーしたんだよ」
「ああ、待ってるだろうね みんな」
サラリと言って積み上がったチョコを嬉しそうに並べているリーマスにシリウスは呆れた口調でいった
「待ってるだろーねって・・・・・
 オレ達となんか行ってて良かったのかよ」
肩をすくめた義理固いシリウスに、リーマスは嬉しそうに笑っていった
「だって来いって言ったのはシリウスだよ
 誰の誘いも、君の一言にはかなわないよ」
パリパリと頭をかいて、シリウスは苦笑した
まぁいいか、
あの男どもが待ちぼうけようと別に自分が痛いわけではなし
とりあえず、今はこのチョコのお返しをどうするか そっちの方が重要だ
そうして彼もまた笑った
グリフィンドール寮の談話室は、今夜もまた暖かい



女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理