月夜 (アルベルト×ルック)


あいつもよく月を眺めていたっけ
この輝きが、希望に似ていると言っていた
静かの闇の中の、不思議な輝き
希望なんて、とうの昔に捨ててしまった
君はまだ、信じているの?

「ここにいらっしゃいましたか」
「・・・・・ああ」
階段から長い影がのびて、長身の彼が溜め息をついた
「皆、下で待っているんですがね」
「・・・・・・・・・・わかってる」
「では、早く戻ってください」
「・・・・・・・・・・・・・・・・うん」
月を見たまま、ぼんやりとまた彼のことを考えた
リーダーっていうのはつまらなくて、孤独だと思う
自分勝手に動いているだけでも疲れるのに、
人々の、希望や想いを背負って生きていくなんて冗談じゃない
そんな芸当自分にはできない
どうして彼は、それでも笑っていたんだろう

「ルック様」
「・・・・・うん」
きつい口調に名を呼ばれて、ルックははじめて相手の顔を見た
冷たい表情の、何を考えているのかわからない男
彼の作戦は完璧だし、こちらへの接し方も申し分ない
常に軍師らしく行動して、文句のつけようがない
今も、
彼は軍師として、リーダーである自分を呼びにきたのだ
今夜は会議をすると、言ってあったから
「お時間ですが」
「・・・・・・・・・・わかってる」
それでも、
あんまり月が綺麗で、
あんまり彼が恋しくて、
どうしても、ルックはその場から立ち上がる気にはならなかった
「うん・・・わかってるよ」
人は時として、どうしようもなく弱くなる
こんな夜には愛おしさが溢れ出して
閉じ込めておいた想いが流れ出す
封印した彼への痛みに似た想いが胸をしめつける
「彼は本当に強かったんだ・・・」
誰とへもなく、ルックはつぶやいた
本当に彼は強かった
リーダーとしての自分を常に最優先し、
何が起きても動じず、強くまっすぐ立っていた
グレミオが死んだ夜に、平気な顔をして会議なんかに出ていたのも
父親を殺したその足で、次の戦いに出ていったのも
親友を手にかけて失った次の日に、笑ったのも
全部が完璧だった
誰にも、心配させるスキを与えなかった
そんな彼を嘘つきだと言ったあの月の夜
彼はいつもみたいに笑って言ったっけ

「ルック、嘘でもいいんだ
 僕がこうして平気そうな顔をしていることが大切なんだから」

わからないかい?
わからないだろうね、と
冷めた目で言った彼の向こうに、こんな風に輝く月が見えていた
無性に悲しくなったのを覚えている
それでは君は、少しも癒されはしないじゃないか

「いいんだよ、僕は」

ナチは、笑っただけだった
そして、ルックは何も言えなくなった
今、少しだけ彼の言った意味がわかる
そして彼のようにはなれない弱い自分がいる
ここにこうして、立てないでいる自分がいる

「何をお考えで?」
「・・・・自分のこと」

ぽつり、と
ルックはつぶやいて自嘲ぎみに笑った
「忌わしいこの身体のこと
 それでも、抱いてくれた人のこと」
気味の悪い、造られた身体
偽物の血と、肉のかたまり
ではここに宿る精神もまた、病んでいるのかもしれない
はじめから

「気味が悪い・・・・こんな身体」

両腕で、自分をだきしめるようにしてルックは膝の間に顔を伏せた
「そうは思いませんが」
「・・・・・・そう言った奴が二人いたよ」
一人はもう死んでしまって
もう一人とも二度と、会えないだろうけれど
もう誰も、二度とこの身を抱いてはくれない
「そうですか」
ス・・・、と
アルベルトがこちらにかがみこんだのを感じた
「失礼・・・」
「え・・・・・・?」
腕を捕まれ、顔を上げさせられ、
それからわけのわからぬままに唇に冷たいものが触れた
「・・・・んっ」
するり、と
舌が滑り込み、ルックの舌をからめとるようにかき回す
「んっ・・・・・・んっ」
長い長いそのキスは、ナチのそれを思いださせた
「なにす・・・る」
「私があなたを抱けば、少しは救われますか?」
「な・・・・・・・・っ」
一気に頬が紅潮した
「何のつもりだっ」
腕にかけられた手をはらおうともがくと、それ以上の力で押し倒された
「あ・・・・っ」
そのまま今度は首筋にくちづけられ、
舌がツツ、とすべっていった
「いやっ、はなせっ」
びくん、と身体が反応する
何を考えているのか
彼の意図がつかめなくて
どうしようもなく、ただ必死に抵抗した
それでも、彼は行為をやめず
やがてルックの服の下へスルリ、と手を差し入れた
「や・・・・いやだ・・・・・・」
「あなたは目を閉じていてください」
「何・・・・・・いって・・・」
「そして想い人のことでも考えているといい」
「な・・・・・・・・っ」

冷たいような、そっけないような
その言葉に、声がでなかった
「こうしているのが、あなたの想う誰かだと思っていればいい
 私は今後一切、声を出しませんから」
そうして、彼の手がその高ぶりだした中心に触れた途端に、びくりっ、と
ルックは背を反らせて声を上げた
「あっ・・・・・・・あぁぁ」
目を閉じた
ざわざわと、彼に覚えさせられた感覚が蘇ってくる
何度、彼に抱かれただろう
想われてなんかいないと知っていたのに
それでも彼の側がよかった
彼が良かった
ナチが、好きだった

「あっ、あっぁ・・・・・・・っ」
クチクチ、と淫らな音がするのを聞きながら 思考はどんどん途切れていき
身体は高まってどうしようもなくそそり立ち、
彼が解放してくれるのを待っている
ひくひくと、
まるで求めているように震えている後ろは、何度も指でかき回されて
もう充分に濡れている
「あっ、あ・・・・・・・・・いやだ・・・・・・・やっ」
喘ぐ声が、相手に届いているのか
それさえもわからずに、ただ必死にルックは手をのばして彼の服をつかんだ
「いやっ、いや、あぁっ、・・・・・・・・も・・もぉ・・・・・・・・っ」
いく寸前のものを手で弄ばれて、どうにかなりそうで
それでもいかされない苦しさに、
いやいやとルックはまるで懇願するように声を上げた
「あぁっ、あう・・・・・・・・」
そしてようやく、
その入り口に求めていたものをあてがわれ、
彼の体重とともにそれが深く深くへ侵入すると、
もうどうしようもなくただ、ルックは彼の名を呼んだ
「あ・・・・ぁぁぁっ、ナチ・・・・・・・・・・・っ」
激しく突き上げられ、限界寸前のものを弄られ
「あっ、あっ、あぁぁぁっ」
ひときわ高く声を上げ、
背を反らして、ルックは果てた
白濁が、その白い肌を汚した

「まったく・・・・・・・・」
ふぅ、と
気を失って眠ったように落ちている身体を抱き上げて、アルベルトは苦笑した
「あなたは弱い、どうしようもなく」
涙に濡れた頬が、月明かりに光った
見上げて、彼はまた苦笑する
「ナチ、ね」
それは軍師なら、
いやそうでなくても誰もが知っている名だ
かつての英雄
100年後も200年後も必ず名を残すであろう、伝説の人
(なるほど、貴方の想い人は彼ですか・・・・)
可哀想に、と
ルックの部屋への道を歩きながら、アルベルトはひとりごちた
会えるものならば、一度会ってみたいと、そう思う
全てを恨んで、憎んでいるようなこの少年が、
こんなにも焦がれているその「希望」に

月夜、ルックの身体をベッドに横たえて、アルベルトはひとり微笑した
せめて、眠っている時だけは、可哀想なこの少年に安息を


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