告白 (エース×ゲド)


「あの〜つまりですね・・・・・」
目の前の男はポリポリと困ったように頭をかいた
「あの・・・・・・つまり・・・」
こいつのクセだったな
困ったように頭をかいて、にやっと人の悪い笑みを浮かべて
それから苦し紛れか、開き直ったかして、いつもいつもタチの悪いことを言うのだ
そう、それがこいつのクセで、いつもの行動
「あーっ、あのですねっ、」
ホラ、やっぱり
ゲドは、ブンブンと頭をふって身を乗り出したエースを見つめた
今度は何を言い出すのか

「あのですねっ、好きなんですっ、大将のことがっ」

さすがに、瞬時には理解できなかった
何が?と
問いかけそうになったのを、かろうじて意識して止めた
聞いたら、こいつは怒るだろうか

「あの・・・・聞いてますか?、大将」
「ああ」
「・・・・それで、」
「・・・・・・それで?」

また、奴は困った顔でポリポリと頭をかいた
「それで・・・・・」
奴の口許を見た
言葉を探している
饒舌で、調子よくポンポンと言葉を吐き出す奴の舌が戸惑ったように動かない
「・・・・・・・・」
困り果てたのか、奴は無言でコチラを見た
「・・・・・・何だ?」
きゅ、と結ばれた唇に、めったにおがめないような真面目な目はなかなか頼りがいのある引き締まった表情に見える
こういう顔もできるのか、と
ゲドは無意識に微笑した
いつも調子よくチームをさりげなく支えている彼を、ゲドは気に入っている
自分がこんなだから余計、彼の明るさが好きだった
おどけた顔ばかりみていたから、
「そういう顔もできるんだな」
意思の強そうな目が新鮮で、
ゲドはもう一度笑った

「大将、」

ふわっ

突然、本当に突然くちびるにあたたかいものが触れた
こういう風に誰かの体温を感じるのが随分久しぶりに思えて、
それで瞬間泣きたくなった
それは、同時に痛みを思い出させる
エースの唇は、人の体温を感じる
忘れていたものを、思い出しそうになった
瞬間、触れただけの唇がふっ・・・と離れた

「・・・つまり俺はこーゆうことを、したいんですけど・・・」
今さら、伺うように言ったエースにゲドは苦笑した
(しておいて、言うセリフか・・・・)
伝わったのか、それとも彼の言い訳か
「いや・・その、大将 口で言ってもわかってくれなさそうなんで・・・」
すみません、と
やはり彼はポリポリと頭をかいた
それが妙におかしくて、それでいて妙に安心した
「・・・・好きにしろ」
胸をチリと焦がした何かは無視した
あれは、過去のこと
誰かを必要として、誰かを求めたのはずっと昔のこと
そして、その想いは彼との決別とともに消えてしまった
消して、しまった
「え?! 」
「・・・・・二度は言わん」
あんまり彼が驚いた顔をしたから、
それからにやり、といつもの何倍もにやけた顔をしたから
ゲドはフイ・・・と顔を背けた
不意のあの温かさは、
それを忘れていた自分には、刺激が強すぎた
こうして、
目の前ではしゃいでいる男に、それを悟られないようにするので必死で
今は何も言う気になれない

「大将、でも本当は俺なんかどうでもいいんでしょ」

自室に戻ると言って、部屋を出る真際、エースは振り向いて笑った
「・・・・・?」
「そのうちアンタに、俺が欲しいって言わせてみせますよ
 だから今は許可が出ただけで充分っす」
パチン、
まるで女にするみたいに、片目を閉じてエースは笑った
何を、と
言う間にドアは閉まり奴はいなくなる
「・・・・・何を・・・」
どうでもいいというわけではないけれど、
彼に抱いたような感情は、二度と持てないとわかっている
それを、エースは知っているのだろうか
知っていてあんなことを言ったのだろうか
「所詮、」
温もりを求めあうだけの、体の関係にしかならないのでは?
辺境警備隊なんて生き方ならなおさら
皆、どこかで誰かの体温を求めている
奴は身近にそれを得ようとしただけなのでは
たった今の、
ふいに与えられた温もりを受け入れてしまった自分と同じく

「言わせてみせる、か・・・・」

彼らしいセリフだと思った
格好つけで、強気で、
いつもその調子で女を口説いているのだろうか
思い遣って、ゲドは微笑した

長い時間を一人で過ごしてきた
温もりを与えあった者はもういない
触れたのは、お前で二人目だ
そして、お前で最後だろう
奪えるというのなら、それを許そう
失ったものを、取り戻せるとは思わないけれど



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