君は相変わらず、何を考えているのかわからない
だけど、見つめられた途端に 体温が上がる

「やぁ、久しぶり」
そわそわと、風が騒いだのは懐かしいにおいがしたから
柄にもなく、門まで出ていったのは、そういう予感があったから
まさか、こんな場所で出会えるはずもないと思っていながら駆けていた
あの渦をまく、強烈な感覚に誘われて

「・・・・・どうしてここにいるのさ」
「どうしてって、助っ人を頼まれたからだよ」
にこり、
3年前と変わらないナチの笑顔
どこか冷めていて、どこか一線置いている 表面だけの笑顔
「戦いが厳しくなってきたので、ナチさんに無理いって来てもらったんです」
「3年前の解放軍のリーダーが味方になってくれるなんて心強いよね!」
周りの、はじゃぐ声が勘にさわる
あんなにも、戦いを拒んでいたんじゃなかったのか
戦いで、多くのものを失って、痛い想いをしたんじゃなかったのか
「へぇ・・・、こんな戦いには二度と顔を出さないと思ってたよ」
精一杯の皮肉を込めても、ナチは顔色一つ変えなかった
あの笑顔は崩れない
ただ無言で、ナチはルックを見返した

イライラと、
その夜ルックは眠れなかった
この城にナチがいる
3年前と同じ、戦いの中に身を置こうとしている
「・・・・・・・どうしてさ・・・」
たくさんのものを失って、重すぎるものを背負って、
笑わなくなったナチ
泣かなくなったナチ
全てが終わった夜、姿を消したのも 二度とこんな想いをしないためではなかったのか
自分にたったの一言も残さずに、姿を消したのはそのためだったんじゃなかったのか
「なのに、いまさら・・・・」
頼まれたから?
だからこんなところまでやってきたっていうのか?
帰るというのを無理矢理に引き止められ、結局泊まることになった時
吐き気に似た、ひどい気分に襲われた
ナチが奴らの言葉なんかに笑って応えたことに
懐かしい、と
あの時の面子と言葉を交わしたことに

眠ることをあきらめ、庭へ出たルックは月明かりの中、ナチを見付けた
「眠れないの? 姫」
振り返り、あの意地の悪い顔で言われ  それでルックは言い様のない痛みに襲われた
「・・・・何してるのさ・・・・・」
「お前と同じだよ、眠れなくて散歩してた」
彼が近付いてくる
それを黙ってみながら、忘れようとしても忘れられなかった あの感覚が身体の中に戻ってくるのを感じた
3年前のあの日から、封じたはずのものが蘇る
「少し背が伸びたね、ルック」
「・・・・・そりゃ、3年もたったからね」
そしてそれでも、ナチの方が高いけれど
「変わらないね
 お前こそ、こんなところで何してるのさ?」
手を伸ばせば触れる距離に立ち、真直ぐにナチの視線が落ちてくる
「君の大嫌いな戦いだよ
 僕は、何かしてないと気が休まらないからね」
ナチの目に、一瞬憂いの色が揺れて、
それから彼はひとつ、溜め息をついた
「そうか、」
そのまま、彼の手が伸びて髪に触れ、頬に触れたのを何の抵抗もなく受け入れた
こういう時、身体はまるで自分のものじゃないみたいに動かない
ナチじゃなきゃ、抵抗もできるのに
彼にだけは、しびれたようになってしまう

長い優しいキスのあと、ナチはまた髪に触った
変わらない
そういう風に、優しくしてくれるのも
この時ばかりは、優しい目をしているのも
「お前は変わらないね
 そうして、いつまでも顔を赤くしてる」
「!!」

それから二度、唇を合わせ まるであの頃のようにナチを感じた
「このままここでする?」
冗談なのか、本気なのか
睨み付けると、彼は笑った
久しぶりにみる、いじわるだけれど無邪気な笑み
彼の声が、心地いい

何かをしていないと、不安でしかたがないんだ
余計なことを考えないように、
何も考えなくていいように、
あの頃みたいに、抱いて
ひどくして、魂をからめとるように、真っ白になるまで、
君で、いっぱいにして

「おやすみ、ルック」
静かな声
心地いい、君の声
僕に会いに来てくれたの、と
今だけは、うぬぼれていたい
君の鼓動がきこえる、こんな側にいる今だけは

「おやすみ、ナチ」



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