ソウルイーターよ、どうか、
どうかお前が、ナチの力になれますように

なんて、暗い場所なんだろうと思った
毎夜、夢見るのは ただの暗闇
そこに一人 取り残されている自分
ああ、ここには虚無しかないのか
オレは、この闇にとらわれて身動きすら できないでいる

「テッド」
高い声に、我に返った
「どーかした? テッド」
無邪気に笑う少年
人々に愛されて育った故に、とても優しい心の少年
「いや、何でもないよ」
一緒にいると心が和むから不思議だ、と
テッドは時々本気で彼をすごいと思う
あんなにもすさんでいた自分の心を、今こんなにも和らげたのはこの少年
ナチという名の まだ15年かそこらしか生きていない子供なのだから

闇の中、無気味に光るものがある
右手の、呪いの紋章
ソウルイーターという名の、死神
「魂が、欲しいのだ」
夜には その声はやけにはっきりと聞こえ、次の朝 あたりで誰かか死んでいる
「ああ・・・・また・・・・」
何度、泣いただろう
どれだけ嘆いただろう

ただ必死に逃げていた最初の100年
孤独と恐怖に、毎夜震えて泣いていた
次の100年は ただ人恋しくて、あたたかさを求めて彷徨っていた
仲良くなった誰かが死ぬたび
その魂を喰らうたび、気が狂いそうになるほど叫び、泣いた
呪われた紋章と、呪われた運命を嘆いた
だけど、それでも人の側にいたかった日々
そして、いつか
泣くのにも疲れた
涙は枯れて、感情が欠落していくのがわかった
「もぅ・・・どうでもいいよ」
最後の100年、ただ人をさけて歩いた
誰もいらない
何もいらない
欲しいなんて、思う権利は始めからなかったのだ
求めてはいけないと気付いて、
求めないよう 心を閉ざした
生きることにも、疲れ果てた

「ねぇ、君どうしたの?」
小雨の降る夕方だった
辿り着いた町で、疲れて座り込んでいた自分にかけられた幼い声
もう100年も、こんな小汚い自分に声をかける者なんかいなかったのに
「どこか痛いの?
 ねぇ・・・大丈夫? 苦しそうだよ?」
子供は物おじせずに手を伸ばす
そうして、その手が額に触れられて、あたたかさに思わず顔を上げてしまった
「ぼくの家においでよ、熱があるよ」
なんて無邪気な目をしてるんだろう、と
ただ、魅きけられた
その目ばかり見てた、最初の出会い

「最近テッド、ぼーっとしてるよな〜」
少年は言う
「テストが近いから」
笑って答えながら その優しげな顔を盗み見た
不満そうに、ナチは歩いている
「すぐごまかすんだから・・・」
優しくて、賢いナチ
彼をだまし続けるのは もう限界だろうか
そろそろ出てゆく時なんだろうか
ソウルイーターがナチの魂を欲する前に
「僕はテッドが大好きだよ
 テッドに色んなことを教えてもらったし、テッドといるとすごく楽しい
 親友だと思ってるよ」
なのに、と
そうして彼の顔がくもる
「テッドが辛いのを、僕はどうしてあげることもできないの?」
いつまでも、幼い目
優しい心
あの時、声をかけてくれたままに子供みたいにきれいなままのナチ
「そんなんじゃないって
 ナチは親友に決まってんだろ」
笑って、その背中をきつく叩いた
なんて、居心地のいい場所なんだろう
だからこんなにも長居してしまっているんだ
100年前、もう人と関わるのはやめようと決めたのに
だからこれは 弱い自分のワガママなんだ

ソウルイーターよ、どうか
どうかお前がナチを泣かせたりしませんように

人の魂を好む紋章
これにどれだけの価値があるというのか
どうして こんなものが欲しいのだろう
ただ、愛する人を喰らい、自分を孤独にし
なお己には生き続けろと言う死神
誰もいない世界を、一人歩き続けろというのか
こんなにも大切な人を、犠牲にして

「ナチ・・・・わがままだってのはわかってる」
心配そうに、自分を見ている親友
お前に、こんなものを渡さなければならないなんて
「だけど、コレだけはウィンディに渡すわけにはいかないんだ」
優しいナチ
その優しさを知っていながら、こんなことを言うオレは卑怯だ
「ナチ・・・・」
こんなことなら、ここに留まらなければ良かった
こんなことになるなら、ほしがらなければよかった
安らぎなんて、
幸せなんて
ナチというこの少年が、欲しいなんて

「うん、テッド 大丈夫だよ」
笑った少年
曇りない笑顔
まだ、何も知らない少年の目
(・・・預けるだけだから
 ここを逃げ切れば、また紋章をオレに戻せばいいから・・・)
いくら言い聞かせても、残った不安
嫌な、闇の予感
「ごめんな・・・・ナチ」
それでも笑ってくれた少年
「テッドが僕をたよってくれて嬉しいよ」
それで、もう泣きそうになった
この少年を 不幸にしてはいけない
ナチは、笑ってなきゃならない

ソウルイーターよ、どうか
おまえがナチを救うことができますように

消えそうな自我を必死で保ちながら、言った言葉がある
「ナチ、オレはもうダメだから・・・
 あやつられてお前をキズつけるまえに殺してくれ」
もう しばらく会わないうちに大人な目をするようになったナチ
手足にキズをたくさん作って、顔つきだって少しかわった
オレが、変えてしまったナチの運命
「ナチ・・・ごめんな・・・」
ソウルイーターを渡さなければ、
ナチの側にいなければ
出会わなければ、

「・・・・こんなことにはならなかったのに」

その言葉に、ナチの顔が歪んだ
「どうしてさ・・・・
 僕はそれでもテッドと友達になれて良かったって思ってるのに」
なんて、
なんてなんて、哀しそうな目なんだろう
なんて、痛い目をしてるんだろう
まるで、あの人みたいな
人の痛みを知る目
たくさんの辛いことを知ってる人の、目

「テッド、いつか・・・・・」
遠い昔、今のナチのような目をして言った人がいた
「ずっと遠い先の未来
 君が笑っていられるように祈るから、だから・・・」
焼けた村、悲劇の最初の日
彼は泣きながら、言ったんだ
「だから、テッド・・・・生きて・・・・」

そう、あの哀しい目
あの痛い表情
もう顔も忘れてしまっていた あの人の その言葉だけで生きてきた
「きっと君が笑っていられる日々をあげるから」
ああ、そうか・・・と
目の前のナチと彼の姿がかぶってひとつになった
「・・・お前だったのか・・・・・」
その、痛い目
おまえは、あんなに痛い目をするようになったのか
「ごめんな・・・ほんとうに・・・・」
笑っていて欲しかった人
自分を2度も救ってくれた人
300年前のあの言葉がなければ 自分は生きてはいけなかった
そして、今
おまえにそんな辛い運命を背負わせたオレのために、泣いてくれるのか

「テッド・・・幸せをあげるって言ったのに・・・」
少年は泣く
「謝るのは僕だ・・・・
 君がどんなに苦しい300年を生きてきたか知りもしないで
 僕は君に会いたいがばっかりに、生きろなんて言ったんだから」
あの出会いは偶然じゃなく
過去に飛んだ少年の言葉がゆえ
その言葉だけで、生きてきたテッド
だからこそ、あの日出会えた二人の少年
「ばーか・・・
 オレはちゃんと、お前に幸せをもらったよ」
泣くナチに手をのばして、テッドは言った
すべての運命の歯車がかみあい、
そうして、命が消えようとしている
「ナチ・・・お前に出会えてよかった・・・
 お前の言葉を信じて、生きてきて良かった・・・」
だから泣くな、と
言ってテッドは命を終える覚悟を決めた

ソウルイーターよ、どうか
オレの命を捧げるから
お前の新しい主人を、哀しみから守ってやってくれ

お前に出会えたことが幸福だった
あの日、お前がいなかったらオレはきっと生きてはいなかった
300年も戦っていられなかった
そして、
それでも疲れ果ててしまったオレに、差し出してくれたその手
呼び掛けてくれた声
与えられた、幸福

「君の遠い遠い未来にきっと、幸せをあげるから」

約束は果たされていた
気付かないうちに、二人は出会って笑っていられた
居心地がいい、と
そうしてテッドは安らかに眠っていたのだから

ソウルイーターよ、どうか
おまえがナチに 幸福をもたらしますように


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