夢の中 (尽×主)


がまたしても、熱を出した
原因は寝不足か、風呂上がりに薄着でウロウロしていたことか
「ほにゃー、目がぼーっとする〜」
「はいはい、今日はおとなしく寝てな」
「やだー、私も行くー」
「だめ」
頬を真っ赤にして、目をうるませながら よたよた、と
冷たい水の入ったカップを手に は情けない声を上げた
そりゃあ確かに、この寒いのに風呂上がりに髪を乾かさずに雑誌を読んでたり
つい気持ちよくて 尽の忠告も聞かずにこたつでうたた寝をしたりしたけれど
受験勉強に夜遅くまで起きてることも多かったし
最近太ったからといって、ちょっとダイエットしてみたりしたけれど
「こんな時に風邪なんかひかなくてもいいのにー」
わめいても、熱は下がらなかった
視界がぐらぐらするし、立ってもヘロヘロ
食欲はないし、寒気もする
「おとなしく薬飲んで寝てな」
「やだよぉ
 だって尽は行んでしょー?」
「俺は仕事があるからね」
それに健康体だし、と
苦笑して 尽はに薬を渡した
今日はクリスマス・イブ
はばたき高校では、毎年恒例のクリスマス会が催される
こんな時に熱を出すなんて なんてタイミングの悪い、と苦笑しつつ
尽はかなり熱が高いが、気になって仕方がなかった
できるなら、自分もパーティなどいかずにここでの様子を見ていてやりたい
楽しみにしてただけに、一人行けないのは可哀想だし
何より尽にとって、のいないパーティなど何の意味もなかった
実はひそかに、がこの間奈津実と一緒に買ったと喜んでいたパーティ用のワンピース、あれをが着るのを楽しみにしていたりしたから
「ちゃんと寝てるんだよ
 悪化したら初もうでも行けなくなるから」
「わかった・・・」
「なるべく早く戻ってくるから」
「・・・尽の裏切り者ぉ・・・」
「はいはい、じゃあ行ってくるね」
を心配している尽の気も知らず、パーティに行けないことを散々なげいて、は尽を見送った
今年のクリスマスパーティは生徒会主催
いつもは理事長のはからいだけで開かれていたものを 生徒会で新しい企画や準備をしつつ 場所だけ理事長に借りるという形を取っている
初めてのことだから、こんな時に会長の尽がいなくては話にならない
一生懸命準備してきたとはいえ、本番 何があるかわからないから
みんながみんな、尽のように、どんなハプニングにも対応できるというわけではないから

賑やかな喧噪の中、尽は会場中を見渡して 小さく溜め息をついた
にとって最後のクリスマスパーティだったのにな、と思いつつ
出かける前 半泣きだったの顔を思い浮かべた
すぐ油断して体調を崩す
氷室風に言うと自己管理がなっていないのだ
(子供だなぁ・・・)
新しく買ったワンピースは、ちょっとミニでとても可愛かった
雑誌に載ってたやつで、大人気でなかなか手に入らないんだよ、なんて自慢してた
着てみせてよ、と言ってもは当日のお楽しみといって着てはくれなかったから
(お楽しみも何も・・・)
また、苦笑がもれる
せっかくのパーティにがいない
は今頃、熱にうかされひとり夢の中

2時間のパーティを終え、後片付けをして ようやく仕事から解放された尽は家へと戻ってきた
そっと の部屋に入ると 小さなオレンジの灯りの中 は大人しく眠っている
尽の部屋にあったくまのぬいぐるみをしっかり抱え込んでいるのを見て 思わず笑みをこぼし、尽はそっと、ベッドへこしかけた
ん・・・、と僅かに声が上がる
起こしたかな、と思ったけれど の寝息は乱れはしなかった
額に手をあてるとやっぱりまだ少し熱い
(熱だしやすい体質なのかなぁ・・・)
薬で抑えられてはいるのだろうが、それでも頬は真っ赤だし
手も身体もまだ熱かった
しばらく様子を見つめながら その髪をなでて
「ごめんね、側にいてあげられなくて」
そっとつぶやいてみる
クリスマスパーティは何の問題もなく終わったけれど
生徒会メンバーは一つのイベントを成功させ満足いっぱいの気分のまま解散したけれど
(可哀想なことしたな・・・)
はその間ひとりだったんだから
熱があって心細いであろう時に、楽しみにしていたパーティにも行けず
ここで苦し気に眠っていたのだから

2時間程たった頃 がふと、目をさました
「つくし・・・?」
「どうしたの? 」
かすれる声で名を呼んだに、優しい声で訪ねると は不思議そうに首をかしげた
「パーティ終わったの?」
「終わったよ」
「成功した?」
「ああ」
「そ・・・よかったね」
にこ、と
真っ赤な頬で、が笑う
ああ、裏切りものだとか何とか散々喚いていたけれど
自分はパーティに行けなくて、熱があって苦しいのに
尽達生徒会の企画するクリスマスパーティが成功したかどうかってことを、気にかけてくれてるのか
こんな状態で
今も少し苦し気に呼吸しているというのに
「ありがとう、は残念だったね」
「ん・・・」
でもいいんだ、と
はまた頼り無気に笑った
「あのねぇ、夢みたの
 尽とパーティに行ったらね、怪獣が襲ってきたの
 それで私と尽で一生懸命逃げる夢」
「・・・へぇ」
くす、と
微笑して、尽はの髪をすいた
熱がある時はそういう不安定な夢をよく見るから それで、と
を見下ろすと 楽し気に話している
どんな怪獣だったか、とか
校舎が壊れて大変だった、とか
「それでね、正義の生徒会長が戦うの
 そしたら怪獣は逃げていったのよ」
「ふぅん」
「尽は私を守ってくれたの
 私 なんかお姫様みたいだったよ」
はいつでも、俺の姫だよ」
その言葉に、はにこっと笑って目を閉じた
「それからね・・・」
尽の甘い言葉と、熱と、薬のききめと、
いろんなもので また眠気が襲ってくる
「その後 初もうでにも行ったの
 そしたらね・・・悪者にされた人達がいっぱいいて神社はぎゅうぎゅうで・・・」
(悪者にされてなくても 初もうでの時はすごい人だけどね)
「悪者達をやっつけながら進んでいくの
 ・・・・・・楽しかったよ」
「そう、よかった」
すぅ、と
がまた眠りに落ちたのを見て 尽はそっと微笑した
クリスマスパーテイの怪獣の夢は叶えてあげられないけれど
初もうでなら あと何日か後に
の夢のとおりに叶うだろう
すごい人込みをかきわけて、お参りして帰ろう
の大学合格祈願と、二人のこれからを
二人ずっと一緒にいられますように、って

そっと髪をすきながら 尽はいつまでもを見守っていた
今は夢の中の、愛しい姫を


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