シンデレラと王子 3 (尽×主)


夏休みが明けると、3年生はどのクラスも文化祭の準備に入った
演劇の練習をあちこちでしているのをみかける中、のクラスは順調に進んでおり
キャストの出来も、まずまずで
まったくできていないのはラストのシーンをだけとなっていた
「最後にガラスのくつをはくのって私なんだ・・・」
「そうだよ? 何言ってんのよ
 あんたシンデレラもまともに知らなかったの?」
「忘れてた・・・」
ようやく最後まで出来上がった台本を読んで は赤面しながらつぶやいた
王子との絡みがまったくないと思っていたから 最後にこんな シーンがあったなんて予想外で
なんだか急に恥ずかしくなった
ロマンスに全く関係ない部分ばかりを演じていたから今さら、王子に愛の告白をされるシーンなんて照れくさくて
それで台本を読み合わせながら は始終くすぐったかった
すっかり王子役が板についてきた珪が真剣だから、余計に

「もぉ〜しっかりしてよ〜
 あんた色気ないんだからっ」
「だって〜だって〜なんか恥ずかしいんだもん〜」
「あんたねぇ・・・
 ここ一番いいシーンなんだから」
「わかってるけど〜・・・」
放課後の練習で、は何度も何度もセリフを言わされ 結局どれもOKをもらえずその日を終えた
「うわーん、みんな厳しいよ〜」
「気合い、入ってるからな・・・」
「ごめんね珪くん
 私、なんか台なしにしちゃって・・・」
「まだ初日だからな・・・」
「突然王子様に愛の告白だから戸惑っちゃって・・・
 シンデレラの気持ちがわかんない〜」
「・・・そうだな、舞踏会のところはお前じゃないから余計に混乱するな・・・」
二人、一緒に帰りながら劇の話をするのが日課になっている珪とは この日も一緒に人気のない廊下を歩いていた
下校時間が近いせいか、辺りにはもう誰もいない
「えへへ、新学期だからおニューのくつなんだ〜」
そう言いながら靴箱から靴を取り出して、はきかえ
とんとんっ、と軽くつま先を鳴らして歩き出したの後ろを 珪は微笑してついて歩いた
夏休みからずっと劇の練習をして
綺麗に着飾ったもう一人のシンデレラに、を重ねていた
同じ教室にいるのに、は別のキャストとばかり練習して
王子である珪とは絡みがなかった
最後のシーンの台本が上がれば、二人で練習できるのに、と
台本の完成を一番待っていたのは もしかしたら珪かもしれない
「ねぇねぇ、私頑張って明日までにセリフ覚えてくるねっ」
階段で、が勢い良くこちらを振り返って笑った
夕陽に髪がキラキラしている
ああ、眩しい
いつも笑ってるを見るのが好きだった
1年の時も2年の時も
見つめ続けて、3年目に 欲しくなった
この想いを自覚した
あの日失った姫を、もう一度手に入れたいと想っているのか
だからしか、目に入らないのか
「照れないようにするっ、うんっ、頑張るっ」
今日、自分のせいでまったく練習にならなかったのを気にして は気合いを入れ直した
ぐっと、決意を新たに顔を引き締めて、また前を向いたその瞬間

「きゃあっ」
「・・・!!!」

がくん、と落ちたの身体と
とっさに手を出した珪
間一髪、伸ばした腕にの身体を抱きしめた
カタンカタン、と
音をたてて、の真新しい靴が片方、階段を転げ落ちていく
「び・・・びっくりした・・・・」
はき慣れない靴でくるくる動いたから バランスをくずしてよろけたのか
一歩遅ければ、あの靴みたいにの身体も階段から落ちていただろう
ぞく、として
珪は強くを抱きしめた
この手が届いてよかった
腕に力をこめたら、戸惑ったようにが珪の名前をつぶやいた
「あの・・・珪くん・・・」
どきんどきん、と心臓が鳴る
落ちかけたことに驚いてか、抱きしめられていることに戸惑ってか
わからない
ただどきどきして、身体が熱い
・・・」
未だ放さない珪は、耳もとで囁くと ようやくそっとの身体を放した
「え・・・?」
今のは聞き間違いか
と呼んだ気がする
珪は自分のことを ずっとずっと名字で呼んでいたのに
「珪くん・・・?」
視界の中、珪が階段を下りて転がっていった靴を拾うのが見えた
靴を片手に、階段に座り込んでいるの足下にかがみこんで
珪は見たことのないような優し気な微笑で言った

、お前がオレの探していた・・・姫だ」

それは台本のセリフだったのか、珪自身の言葉だったのか にはわからなかった
頭の芯がぼぅ・・・っとなったに靴をはかせ、珪は立ち上がって手を差し出した
「立てるか?」
「あ・・・うん・・・」
いつもの、ちょっと無表情っぽい顔
さっきの言葉は何? と
聞きたくても聞けなかった
ただドキドキしたものが、心の中に残った
手を取って、立たせてくれた珪にお礼を言って いつもみたいに笑った
ドキドキを隠すのに、それが精一杯だった

その日、残りの台本を必死に覚えているの隣で、尽は面白く無さそうに相手役をつとめていた
「う・・・なんだっけ、次」
「舞踏会に行ったのは私です
 12時までの夢のような時間を、あなたとともに過ごしました」
「あ、そうだった」
〜いいかげん覚えなよ」
「だって・・・」
ベッドの上でパタパタと足をばたつかせ、は頭を抱え込んだ
なんてドキドキするシーンなんだろう
汚いシンデレラ
お城と舞踏会に憧れるだけの、みすぼらしい役だと思っていたのに
最後にこんなシーンが残っていたなんて
こんなロマンスを、自分が演じるなんて
「尽だと恥ずかしくないのになぁ・・・」
「それはどういう意味かな?
 俺に愛を囁かれてもマンネリだってことかな?」
「ち、ちがうよぉっ
 でもなんか、尽なら照れないのに珪くんが言ったら照れるんだもん・・・」
「なんか、むかつくなぁ それ」
「うっ、怒んないでよぉ」
「怒ってないけど」
もう王子の台詞なんかとっくに覚えてしまった尽は、やれやれとため息をついてを見遣った
台本を何度も確認して、ぶつぶつ言いながら暗記しようとしているの姿は シンデレラに感情移入のかけらもない
だから覚えられないんだよ、と
苦笑して、その唇にそっとキスした
「ん・・・っ」
くぐもった声は、抵抗の証
今真剣なんだから、と
怒ったような目をしたのが可愛くて、もう一度 今度はもっと深くに口付けた
「ん・・・はん・・・っ」
くた、と
あっという間に腕の力が抜けて、
熱い息を上げたの胸元にもキスをした
ああ、愛しのシンデレラ
劇の間中は、王子のものになってしまうのが悔しくて
これから文化祭本番まで毎日続くのであろう 二人のシーンの練習に嫉妬して
尽はその胸に 赤い印をつけた
は俺のもの
その心も全部、全部
「尽・・・そこ・・・衣装着たら見える・・・っ」
「いいね、それ
 見せてやれよ、葉月サンに」
「や・・・いじわる・・・っ」
ぴくん、と
何度も繰り返される身体へのくちづけに、はぎゅっと目を閉じた
尽が囁く愛の言葉は全部全部本当のこと
だから恥ずかしくなんかない
も同じように想っているから、感じているから
だからたとえ台本通りのことを言っていても
尽なら照れたりしない
こんな言葉より、もっと確かなものをいつもいつもくれてるから

ぴちゃ、と
水音を響かせ、そのまま二人身体を重ねて夜を過ごした
たくさんの赤い花がの肌に咲いている
尽の嫉妬の証
身体の深くまで入り込んでいるものを感じながら は目をあけて尽の顔を見た
大好きな人
自分ととてもよく似た、ちょっと意地悪な目をした
、動くよ・・・」
「あ・・・」
腰を抱かれ、ずく・・・と濡れた部分がうずくのがわかった
熱いものがゆっくり引き抜かれ また勢い良く奥まで貫いていく
繰り返されて 頭が麻痺しそうになるまで高められる
「あぁぁっ、つくし・・・っ」
キスで塞がれた唇で、必死に名前を呼んだ
尽、尽、特別な名前
ああ、そういえば珪も 突然今日を名前で呼んだっけ
どうしたんだろう突然、と
ふ、と珪の あの優しい微笑を思い出した
途端、乱暴に突き上げられ 悲鳴に似た声をは上げた
「あぁぁ・・・っ」
じゅく、と
繋がった部分から溢れる愛液のぬらぬらした感覚に、ぞく、とする
、俺のことだけ考えてな」
珪のことを思い出したのがばれてしまったのだろうか
尽は本当に勘がいいから、と
はきゅっと目を閉じた
珪にとって自分が特別だから名前で呼ぶなんて、そんなことあるわけないよね、と
心の中で苦笑して、
違う誰かのことを考えていたにお仕置き、と
わざとじらしはじめた尽に いやいやと懇願の眼差しを向けた
「やだ・・・ごめんなさい・・・つくしっ」
喘ぐ声が止まらない
下には父も母もいるのに、と
必死で尽にだきついて、いやいやと首をふったら 耳もとで意地悪に囁かれた
「ダメ、そういう失礼なことするにはお仕置きだよ」
そうして、何度も何度も一番敏感な花心を擦り上げられ
うずく部分に己のものを奥まで埋め込んだまま 尽はが泣き出すまで そうしてその声を聞いていた
「許して・・・ゆるして・・・・っ」
濡れた声、欲しがる声
高く声が上がらないよう、深く深くくちづけて
びくん、と反応する部分を 何度も舌で舐め上げた
ただでさえ、嫉妬してるんだから
こんな時に別の誰かのことを考えるなんて 怒ってくださいって言ってるようなものだよ、と
紅潮した頬に口付けて
もう許して、と
ほろほろこぼれた涙を舐めとって

いつのまにか、意識を落としてはぐったりとベッドに横たわっていた
久しぶりに無茶をされた身体は、時々僅かに震えて
その度に 浅い眠りに浸っていたが覚醒する
「ふ・・・・んぅ・・・」
5度目、
身体の疼きに目を覚ました時に は意識を取り戻した
そうして、まだいかされていない中途半端な身体に びくん、と震えた
「つく・・・し・・・」
囁くように呼ぶと、そっと髪をなでてくれた
「どんな気分?」
「わ・・・わかんな・・・い」
でも、と
まだ火照っている身体に、は今にも泣き出しそうな顔をした
「誰のこと考えてたの?」
「・・・・・誰って・・・」
「俺が抱いてる最中に、違う男のこと考えてたろ」
「そ、そんなんじゃないよ・・・っ」
「じゃ、どんなのなのさ?」
意地悪な視線が、容赦なく突き刺さる
指で濡れた部分を弄られて の身体はまた唐突にどうしようもない位に疼き出した
「あっ、や・・・やぁ・・・っ」
「言ってごらん、怒らないから」
「お・・・怒ってるくせに・・・っ」
「これ以上は怒らないよ」
「はっ、はぁ・・んっ・・・・あぁやぁぁっ」
くちくち、と
耳にいやらしい音がこびりつく
途中でほったらかされた身体が 欲しい欲しいといってるようで
奥の疼きに、尽の愛撫は全然足りなかった
もっともっと、いつもみたいにしてほしいのに
好きって囁いて、いかせてほしいのに
「誰のこと?」
「け・・・珪くん・・・っ」
「どうして?」
「わ・・・っ、私を名前で呼んだから・・・あっ」
びくんっ、と
が大きく声を上げた
「そんな声出してると人が来るよ」
「ん・・・・っ」
くちづけられ、声を殺されて
は必死に尽の身体に抱き着いた
もう許して、許して
好きだから考えていたわけじゃないから
ただふ、と思い出しただけ
が尽を呼ぶように、彼もまたに特別な想いがあって名前を呼んだのかな、と
ふと、そう感じただけだから
「許して・・・っ」
喘ぎ声の下、必死に言った言葉に 尽はふっと微笑した
「可哀想だから、今回は許してあげる」
そうして、疼いて高まって震えている身体を その想いに猛ったもので貫いた
二人の想いに濡れた身体は、そうしてやがて同時に果てた
熱を奪い合って
想いをむさぼりあって

眠る二人の枕元には 投げ出されたシンデレラの台本
本番まで まだ2ヶ月
尽は嫉妬しつづける


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