真夜中の素顔 (尽×主)


もうすぐ試験が始まる
4月の進路面談のあたりから 週に2度 珪に英語を教えてもらっていたは、今回の試験範囲を勉強しながら なんとなくわかる自分に狂喜していた
(すごーい、珪くんに大感謝〜)
の試験勉強はいつも、試験の1週間前に始まる
クラブも休みになるし、友達もみんな試験勉強で遊べないし、
勉強があまり好きではないの頭の中には、普段から毎日予習復習をする、という意識は毛頭なかった
それで今夜も、明後日にひかえた試験に向けて猛勉強中なのである

「あ・・・あれ?」
授業でやったはずの内容の、とある単語にひっかかったは、どうしてもその意味がわからずに鞄の中から辞書を出そうとゴソゴソやりだした
だが、ない
「おかしいな・・・学校に忘れてきちゃったかなぁ・・・」
思い返してはっとする
そういえば昨日 まどかに貸してあげてそのまんまだった
(あちゃー)
せっかくいい感じで勉強が進んでるのに、と
は、隣の部屋の尽を思った
(もぉ寝てるかなぁ・・・)
時計は夜中の3時
尽の部屋はいつも2時頃まで電気がついているけれど、さすがにこの時間は寝ているだろう
そっと入っても勘のいい尽のことだから、すぐに目を覚ましてしまうだろうし
(しょうがない・・・尽には犠牲になってもらおう)
生徒会の仕事やクラブの助っ人やバイトで疲れている尽の眠りを妨げるのは抵抗があったが、
自分も明後日に控えた試験がかかっている
面談で、今の英語の成績じゃ入試は無理だと言われたのを挽回せねば、と
今回悪い点を取ってしまったら 教えてくれている珪に合わせる顔がない、と
は、尽の部屋に向かった
「・・・・!」
僅かにドアが開いている
1時間程前に足音がしていたから、水でも飲みに下へ下りた時にちゃんと閉めなかったのだろう
こそっ、と
は中を覗き込んで それからふ、と呼吸を止めた
尽はまだ起きていて、机に向かっている
いつもみたいな余裕たっぷりの顔じゃない
どこか真剣な眼差しは、見ていてドキ、とした
尽って、あんな顔 するんだ

多分、勉強をしているんだろうと思う
何かを書きながら時々本を見ているから
考え込むようにして、動きを止めたりしながら 黙々と尽はそうやって机に向かっている
(・・・なんか・・・勉強してるのなんかはじめてみたかも・・・)
去年、最初の試験で尽が全教科満点を取った時 不思議で意外が仕方がなかった
遊んでばかりで、スポーツならまだしも
勉強ができるだなんて、思ったこともなかったから
尽も何でもできる 珪みたいな人間なのかな、と思ったものだった
本人は笑って言ってたけど
がぐーすか寝てる間に、一生懸命勉強してるんだよ、と

キィ、
僅かに触れてしまったドアが 軋んだ音を立てた
「あ・・・っ」
「・・・どしたの?」
振り返って、尽が笑う
「あ、あの・・・ごめん、邪魔して」
「いいよ」
慌てて、
今来たばかりを装って、は尽の部屋へと入った
「あのね、辞書持ってる?」
英語の、と
は言って 机の上のノートに視線を落とした
これは物理だろうか
難しそうな計算式が書きなぐられたノートと問題集みたいなのが広げられている
明らかに高校2年生の試験範囲のものではない
「ああ ごめん、辞書学校に置いてきた」
「尽もかぁ・・・」
しゅん、として は尽のベッドに座った
それじゃあ勉強はここまでしかできない
なんとなくやる気をなくしたに、尽は苦笑した
「何がわからないの?」
「=====っていう単語」
「それは<尊敬する>」
「え?」
にこ、と
尽はこちらを向いて意地悪く笑った
「これくらいの単語は覚えておかなきゃ」
「う・・・・・っ」
まだ習ってもいないくせに、と
思ったに 尽はくすくす笑った
「習う習わないの問題じゃないよ
 語学なんか 学校で習うことにあんまり意味はないんだから」
そうして、ぷーとふくれているを いつもの余裕の目で見遣った
「尽は英語すきなの?」
「必要だと思うから勉強するけどね」
好きではないよ、と
彼は言う
そして、一度首を傾けて何かを考えて もう一度を見た
「俺の進路を教えてやろうか」
「え?」
尽にとって、進路はもう少し先の話
もう考えているのか、と
一瞬戸惑ったに 尽はにっこり笑った
「とりあえず一流大学
 が短大を卒業したら、を連れて海外留学」
「え・・・・?」
キョトン、と
尽の進路に自分の名前が出てきたのと、聞き慣れない単語が出てきたのと、
さらりと とりあえずなんて一流大学の名前を出したのに は呆れた
「りゅ・・・留学?!!!」
そして、一番ひっかかったところをつっこんでみる
「そう
 世界を知りたいと思うから
 でもを置いていくのは嫌だから 無理矢理つれていく」
「えぇ?!!!」
海外って英語でしょー、と
言ったに尽はおかしそうに笑った
が英語が苦手でも 向こうに行っちゃえば喋れるようになるかもよ?」
「うそだーーー、なんないよーーーっ」
次第だね」
「ぅ・・・・」
尽を見上げると、彼は面白そうにを見返し 不敵に笑った
「大丈夫
 バイトで留学資金もためてるし
 2年行ったらとりあえず帰ってくるよ」
それとも、2年間一人で ここで待ってる? と
言われては言葉につまった
ほんの少しの時間も離れていたくないと思いはじめている尽と、2年もなんて
この家に尽がいなくなるなんて
「やだ・・・行く・・・」
うつむいて言ったに 尽は笑った
「大丈夫だよ
 行く前に俺が特訓してやるよ」
英会話、と
そうしてはぽすん、とベッドに押し倒された
「つ・・・尽・・・」
「離さないよ」
そのまま、くちづけられる
温かい体温が、ゆっくりと二人を繋げて
はそっと目を閉じた
色んなことを、が思っている以上に考えている尽
これからのこと、二人のこと
そして、そのためにちゃんと行動してる
バイトも、勉強もそのためだったなんて知らなかった
あの真剣な横顔は、そういう尽の素顔なのかもしれない
「うん・・・ずっと尽の側にいる・・・」
小さな声で囁いた
ぎゅっ、と尽の胸に顔をうずめて
泣きたくなる程に幸福だと思う
こんなにしっかりとした腕で、いつも守ってくれているから
ちゃんと、繋いでおいてくれるから
「好きよ・・・」
尽に、聞こえたかわからない程の小さな声だったけれど
尽は無言で、優しいキスをくれた
目をとじて、熱を受け取る
大好きな尽
いつまでも、二人はそうして想いを確かめあう


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