雪の朝 (尽×主)


ボンヤリと目をあけると、外から光がキラキラ差し込んでいた
日曜日の朝
・・・というよりは、昼に近い時間

「あれ・・・?」
枕元の時計を見て、尽との約束の時間にすっかり遅れているのを知る
「尽、起こしにこなかったなぁ・・・」
今日は朝の9時に起こすから、と
そう言っていたのに
10時くらいに家を出て、買い物と映画と、それからそれから
やりたいことがいっぱいあるから、と
そう言っていたのに
「珍しいな、寝坊かな」
昨日の夜、さんざん我侭を言って、真夜中に家を抜け出した
尽は必死に探してくれた
が泣き止むまで、雪の降る中ずっと抱きしめていてくれて
二人が家に戻ったのは夜中の2時過ぎ
夜更かししたから起きてこれないのかな、と
は尽の部屋のドアをあけた
案の定 尽の姿はまだベッドにあって
その姿に、はなんだかわくわくしながら側へと寄る
(どぉやって起こしてやろーかなぁ)
いつもいつも起こされ役のは、時々乱暴に布団を剥ぎ取られたりする
最近は寒いから、そんなことをされたら本当に辛い
それを尽にも味あわせてやろう、と
ぽふん、と布団の端に手を置いた
それで、違和感に気付く
なんだか、ここだけ温かい気がする

「尽・・・?」
そういえば、勘のいい尽が が部屋に入って起きなかったことなんか今までなかった
なのに、こんなに近付いても眠っているなんて何かが変だ
「尽・・・どうしたの?」
具合でも悪いのだろうか
そう思って、そっと屈み込み、その顔を覗き込んだ
苦し気な表情で 尽は目を閉じていた

「やだ・・・熱ある・・・っ」
触れた頬は熱かった
慌てて、母親を呼びに行こうとして
だがはその手を掴まれて動けなくなかった
「尽・・・っ
 起きたの・・・?」
熱で潤んだ目が、すこしだけ笑った
が触れたから目を覚ましてしまったんだろうか
掴まれた手が熱いのに、の動揺はますますひどくなっていく
「ごめん、・・・」
「な、何が?!
 尽すごい熱があるの
 まってて、今お母さん呼んでくるから・・・っ」
オロオロと、
今にも泣き出しそうになりながら が言うと 尽はいつもみたいに苦笑してをみつめた
「母さん達でかけたよ、朝早くに」
「え?!!」
「昨日、そう言ってた」
「あっ・・・」
失念していたことに言葉をなくして、は尽の側へと膝をついく
どうしよう
こんなに熱があったら、医者に行かないと
このままどんどん悪化したらどうしよう
自分はどうしたらいいのか、こんな時全然わからない
「ごめん、今日デートだったのに」
「なっ、何言ってんのよっ
 そんなのいいよぉ・・・尽・・・大丈夫?」
「大丈夫だよ」
言って、尽は笑った
こんな熱くらい、尽にとったらどうってことないんだけれど
寝ていたら下がるとわかっているんだけれど
こんなにも心配してくれるが可愛くて
これごときで泣きそうになっているのが、少しだけ嬉しくて
尽はそっと、起き上がってを抱き寄せた
「おっ、起きない方がいいよっ」
「平気だよ」
多分、昨日寒い中、ろくに上着もきないでを探していてくれたから
雪なんかふって、少し濡れて
なのにが泣き止むまで、ずっと抱いててくれたから
「私のせいだね・・・ごめんね・・・」
「どうしてさ、のせいじゃないよ」
「けど・・・っ」
ほろっと、こぼれたの涙に 尽は苦笑して
その涙にそっと口付けた
ぎゅう、と抱きついてくるが可愛い
火照った身体に、の肌があたるのが気持ちいい
が看病してくれたら すぐ治るよ」
「うん・・・っ、看病する」
決意の眼差しでそう言ったに、尽はくすくすと笑った
熱で苦しいのも、が側にいれば本当に治る気がする

その後、は持てる限りのスキルを使い、お粥なんかを作ってくれた
「あんまり食欲ないんだけどな」
「だめ、風邪の時はちゃんと食べるのっ」
「はい・・・」
ここぞとばかりに、お姉さんぶるの まるで母親みたいな口ぶりにこっそり苦笑しつつ
尽はあつあつのおかゆにスプーンを入れた
は料理とかめったにしないから、きっとこれを作るのも大変だっただろう、と
その苦労がなんだか伺える
ベッドの端に腰掛けて、心配そうにこちらを見ているに 少し笑ってスプーンを口にもっていった
そして、瞬間声を上げる
「あちっ」
「あっ・・・大丈夫?」
「あ・・っつー・・・・」
思わずスプーンを落としそうになるような熱さ
これは人に出す温度じゃないと思いつつ、火傷した唇に触れようと尽が伸ばした手に の手が重なった
「ん・・・」
チュ、と
身を乗り出して、が自分から尽に口付けた
いつもは恥ずかしがって絶対にしないのに
ゆっくりと重ねられた唇の感触に、不覚にも尽はドキ、とした
やがて離れると、今度はおそるおそる そのやけどした辺りをぺろ、と
の舌がためらいがちに舐めていった
「う・・・」
熱があるからか
が、普段からは考えられない行動に出ているからか
たまらなくなって、尽はの身体を抱きしめた
「ああ、もぉ、そんなことしたら風邪がうつるだろっ」
だったら抱きしめるな、と
自分に思いつつ、あんまり可愛くて放せない
「ごめんね・・・熱すぎたね」
「うん・・・でも大丈夫」
おろおろ、と
は尽の顔を覗き込み、もう一度だけそっと尽にキスをした
「私がふーふーしてあげる」
「ふーふー・・・?」
こんな風にしてもらえるならたまには風邪もいいかな、なんて
思った尽の横で、がスプーンにお粥をすくって 息をふきかけて冷まし出した
それに、また尽は赤面する
今度はちょっと別の意味で
「ちょ・・・いいよ、
「だめ、また火傷するでしょ」
「大丈夫だから・・・」
「はい、あーんして」
「う・・・・」
すっかり保護者気分のと、
キスは嬉しくても そういうのは恥ずかしい年頃の尽と
しばらくみつめあって、結局尽がまけた
「はい、あーんは」
言われるままに、あむっ、と口をあけ 殺人的に熱かったのを冷ましてもらったお粥を口に入れる
食べるとほんのり梅の味がして、思った以上においしかった
(、実は料理上手いのかな・・・)
そんなことを考えながら またふーふーとスプーンですくった粥を冷ましてくれているを見遣る
いつもはてんで、頼り無くて泣き虫で
さっきだってうろたえて、どうしようもなかっただけれど
「私もたまにはしっかりしたとこ見せとかなきゃ」
「・・・うん、新鮮でいいよ」
たまには、と
付け加えて、尽は 差し出されたスプーンにまた口を開けた
くすぐったくて、恥ずかしいけれど たまになら
たまになら、いい
こういうのも
いつもと違う、日曜日も

窓の外は、昨日の雪がうっすら積もってキラキラしていて
二人きりの部屋、今は眠った尽の側で がその髪を撫でている
いつもと逆
でも想いは同じ
二人はどんな時も、こうやって二人で一緒にいる


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