VS.姫条 (尽×主)


が倒れた
授業中、当てられて、立ち上がって
2歩くらい歩いたところで、ふらっとなった
ずっとのことを見てたから、
それに今は席も近かったし
だから、伸ばした手が届いた
教室中、騒然とした中 自分の腕の中で気を失ったが何か言った気がした

「オレが保健室に連れていってくるわ」

想像より軽い身体
抱き上げて、そう言ったら チョークを持ったまま硬直していた先生は何度もうなずいた
「お願いね・・・」
と仲のいい女の子が、心配気にこちらを見ている
奈津実も、不安な顔をしてを見てる
その横を、を抱いて通り過ぎた
最近が元気がない理由を、まどかは知っていて、
その要因に自分が一枚噛んでいることもわかっていた
だけど、今は、蒼白な顔をして腕の中にいるのことしか考えられなかった

保健室のベッドにを寝かせて、授業に戻れという保険医を言い包め、まどかはの側に座った
軽い貧血だろうと言う先生の言葉に少し安心して、
静かにしていなさい、と注意を受け、そこにいることをとりあえずは許された
最近、心に深く根を下ろしている少女
自分はが、好きになっている
が拓也と別れてからは特に、ストップさせていた気持ちに拍車がかかったようで
修学旅行では、あんまりむかついて拓也を殴ってしまうほど
の気持ちなんか関係ない、と
は自分のものだと言った言葉に、理性がブチ切れてしまう程
「重症やな・・・」
そして、そのせいで 最近と奈津実の仲がぎくしゃくしてるのも知っていた
奈津実は自分に気がある
明るくて、ノリが良くて、趣味も考え方もよく似ていたから 奈津実とは1年の頃から仲が良かった
そして、そんな奈津実といつもセットかのように一緒にいるにも、自然目がいった
チアリーディング部のお色気な応援を「あの可愛い子」といって目当てで見にいったこともある程
まどかにとっては、ひそかにお気に入りだった
彼氏がいて、二人はラブラブだと奈津実に聞かされてから その想いはそれ以上育つことはなく
お気に入りはお気に入りのまま、止まっていたのだけれど

(なんか、守ってやりたくなるんよな・・・こーゆうタイプ)
別れた男に、何度もしつこく迫られているのを見たら まどかじゃなくても助けるだろう
相手の男にイライラして、腹を立てて
もう別れたのに、と泣くを 守ってやりたいと思うだろう
いつも笑ってて、文化祭の時なんかは委員で頑張ってたしっかり者
なのにあんな風に無防備に泣くのを見たら
どうして、と
切な気にうつむくのを見たら
(止めろゆー方が難しいわ・・・)
想いは止まらない
だから、実はまどかは拓也の気持ちもまぁ、理解はできる
行動があまりにも自分勝手で恐いな、と思うけれど

眠っているの顔を見ていたら、あっという間に時間が過ぎて、チャイムが鳴った
休み時間になると、先生が様子を見にきたり、女の子達が見舞いにきたり
まどかは自然 保健室から追いやられて ため息を吐きながら教室へと戻った
窓際に、奈津実がいて、その姿に苦笑する
いつもいつも一緒にいたと奈津実
あの子しっかりしてるようでボーっとしてるから、と奈津実は笑い、
奈津実ってあんなだけど、実は寂しがり屋なんだよ、とは笑った
それで、まどかは思ったのだ
女の子の友情って、固いんだなぁ、なんて

「様子、見に行かへんの?」
「え? ああ、うん・・・
 今いっぱい行ったでしょ? あたしは後でゆっくり行こうかなって」
声をかけたら、奈津実は驚いたように顔を上げて笑った
曖昧な笑顔
自分が話し掛けたりするのに、その頬が染まるのは可愛いと思う
気の合う、いい友達
それなら奈津実がベストなんだけど
「せやな、あとでゆっくり会うたった方がええかもな
 どうせ今はまだ寝てるし」
「うん」
自分の行動や言葉が、奈津実を傷つけて、二人の仲を裂いているのか
それに苦笑しながら、まどかはそこから離れた
わかっていても、この想いもまた止められないのだ

次の授業中、どうしてもが気になったまどかは、授業をぬけて保健室へと来た
丁度、保険医が出ていくのが見えたから チャンスと思いそっと中に入る
それで、ピタ、と動きを止めた
眠っているに、尽がそっと口付けるのが見えた

「・・・なんやえらい親密やん、自分ら」
「大切な人だからね」

尽は、まどかの存在に驚きもせずに言った
心配気に 視線をへと戻して、少し微笑する
「最近あんまり眠ってなかったみたいだから、ダウンしちゃったんだね
 誰かさんがばっかりにかまうから、友情に亀裂はいっちゃってんだよ」
尽の声は、悔しいくらいに落ち着いていた
「・・・そんなん言われても、好きになってもーたもんはしょーがないわな」
見下ろすと、尽はの髪をなでながら 静かに小さく息を吐いた
考えたこともなかったけれど
もしかして、尽はが好きなのだろうか
姉、という以上に 想っているのか
その仕種や表情からは、そういう空気が漂ってきた
「そうだね、好きになったものはしょうがない」
くす、と尽が笑う
そして、彼は振り返ってまっすぐにまどかを見て 言った
「だから姫条サン
 あなたにも、は渡さないよ」

それからふ、と目を覚ましたに尽はそっとキスをした
「大丈夫、今車呼んでるからね
 連れて帰ってあげるから、は眠ってていいよ」
ボンヤリしたの視界には、たぶん尽しか映っていないのだろう
一度ふわっと笑って、はまた目を閉じた
まどかには、見せたことのない無防備な笑顔だった

窓から車が遠ざかっていくのを見ながら まどかはため息をついた
相手は血の繋がった姉やろ、と
言いたくても言えなかった言葉
同じ想いを持っているからこそ、その気持ちがわかるから それは言葉にしても無駄な気がした
大事なものを壊さないよう
を抱き上げて、連れて帰った尽
安心して、また眠りに堕ちた
ため息がまたこぼれた
この先どうなるのか、まどかにはわからなかった
ただ想いはそれでも、増していく


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