修学旅行2 (尽×主)


修学旅行の夜、奈津実とはホテルの庭を歩いていた
「ね・・・あんたの新しい好きな人って・・・誰?」
「え?」
さっきまで、まくら投げをしていた
奈津実とお風呂あがりに歩いていたら、側のドアが開いて中からまどかが顔を出して
寄ってけへん? なんて言うからそのまま中に入って
1時間程まくら投げで盛り上がった
二人が部屋に入った時にはもぅ男子が2チームに別れて戦いを繰り広げており
驚いて立ちすくんだところを、まどかに手を引かれた
はこっちチームな」
そして、そのまま
なんかなりゆきで、奈津実は向こうのチーム
楽し気にまどかとまくらのぶつけあいをしていたけれど
それ以来、奈津実は時々沈んだような顔をする

「え・・・?」
「だから、あんた好きな人ができたから二宮と別れたって言ってたでしょ?
 それ、誰?」
「・・・・・・」
突然、意を決したように切り出した奈津実に、は一瞬戸惑った
相手は血の繋がった弟
そんなこと言えなかった
言ったら奈津実は何て言うだろう
ばかじゃないの、と笑うか
嘘だと、信じないか
「・・・」
答えられないに、奈津実が大きくため息をつく
「あんたさぁ、昨日の自由行動 姫条と回ったんだって?」
「え?
 あ・・・うん、たまたま会って・・・」
突然、話題が変えられたのに は驚いて顔を上げた
拓也に襲われたのを助けてくれたまどか
部屋へ戻ると言ったを、無理矢理連れ出して 色んなところを見せてくれた
地元の強みや、なんて言って
昼前からの遅れた出発だったのに、そんなハンデ全く感じない程楽しかった
まどかのおかげで、昨日はあんなに恐かった思いに落ち込むことはなかった
「私ちょっと出発遅れちゃって・・・」
そこまで言って、はハッとした
そういえば奈津実はまどかを誘うと言っていた
まどかが出かけずに、あの廊下に助けにきてくれたということは
「あ・・・・」
言葉を飲み込んだに、奈津実が苦笑した
「いや、別にあんたが悪いとか言ってないよ?
 なんかあいつ誘ったときボーっとしててあんまあたしの話聞いてなくてさ
 かと思ったら用事思い出したからとかいって走ってってさー
 ちょっと部屋の前で待ってたんだけど戻ってこなかったから 他の男子とでかけたのかなーなんて思ってたんだけどさ」
奈津実は、普段からは考えられないような表情で、
うつむきがちに、力なく笑った
「他の子があんたと姫条が一緒にいるの見たって言ってたから」
言いにくそうに、奈津実が笑う
それで、は胸がぎゅっとなるのを感じた
そうだった
奈津実はまどかが好きで、自由行動に誘うんだとはりきっていたのに
自分はそれどころじゃなくて、そんなことにも気づかなかった
自分とまどかが一緒にいたということは、奈津実は好きな人と一緒に回れなかったということなのに
「ご・・・ごめんね・・・」
声が震えた
親友の好きな人と、何も考えずに過ごした昨日という日
楽しかったけれど、奈津実はきっと嫌な思いでいっぱいだったんだろう
どうして二人が、とか
自分が先に誘ったのに、とか
「あはは、別にあんたに謝ってほしいとかじゃなくてさっ
 あんたも・・・その・・・姫条のこと好きなのかな・・・って」
奈津実が、顔をあげてこちらを見上げた
どき、とする
違う
が好きなのは、尽だから
でも、言いたくても言えなかった
だって、尽は、好きになってはいけない相手だから
「・・・・あの・・・奈津実・・・」
それでも、まどかでないということだけは言っておかなければ、と
が息を吸い込んだ時
「きゃっ?!!」
「え?」
隣で悲鳴を上げた奈津実と、
ドサァ、という衝撃とともにふっとんできたものに は息を止めた
拓也が、そこに倒れている

「ちょ・・・何?」
「いつつ・・・・」
奈津実と、奈津実の足下に倒れた拓也が同時に声を上げた
そして、起き上がった拓也に歩み寄る影
「まどかくん・・・」
「姫条?! あんた何やってんの?!」
冷たい目をしたまどかが、拓也の胸ぐらをつかみ、殴り飛ばそうと腕を振り上げる
それに、も奈津実も息を呑んだ
だけど、まどかは拓也を殴らなかった

・・・」
「な・・・何・・・してるの・・・?」
驚いたように、まどかがを見上げた
震える声で、この状況を問いかけたに、まどかは掴んでいた拓也の胸ぐらを乱暴に放す
そうして、立ち上がった
困ったような、驚いたような顔をしていた
「なんや、何してんねや、こんなとこで」
消灯はとっくに過ぎたで、と
いつものように軽く笑ったまどかの、よく見ると、その口の端が切れている
ここで二人で喧嘩をしてたんだろうか
まどかはともかく、拓也が人を殴ったりするなど考えられなかったけれど
「あんたこそ こんなとこで殴り合い?!!
 先生にバレたら停学ものよ?!!」
全く状況がわからない中、奈津実が声を荒げた
「せやな
 女の子は見つからんうちにはよ戻り」
だがまどかは笑う
そして、土の上に座ったまま まどかを睨み付けている拓也を一瞥した
「俺はまだこいつと話があるんや」
「話って殴り合ってるだけじゃない」
ぐい、と袖でぬぐった口の端の鮮血に、まどかが苦笑する
「こんなヤワ兄ちゃんに殴られるとは思わんかったわ」
「姫条っ」
部屋へ戻ろう、と
奈津実の声が涙声になった
どうして、の元彼氏とまどかが殴り合いなんかしているのか
まどかはにばかり声をかけるし、自分の言葉なんか聞いてはいない
昨日だって、自分が誘った時はうんと言わなかったのに その後と回っていたなんて
さっきだって、まっ先に自分のチームにを引き入れて
飛んでくる枕から を守ったりなんかして楽しそうで
「姫条・・・」
だが、奈津実の言葉は、まどかには届かなかった
、はよ戻り」
震えて、声も出ないに まどかは笑った
優しくて、相手のことを思い遣ってる声だった
ズキン
心が痛む
まどかの中で、自分よりもの方が特別なんだろうかと思った
悲しかった

その夜、部屋へ戻ってもはどこかうわの空で震えているようだった
、寝よっか・・・」
「あ・・うん・・・」
二人分のふとんをしいて、それに潜り込む
電気を消そうとした時に、の携帯が鳴った
はっとして、がようやく我に返り、その携帯を持って部屋を出ていきかける
その横顔は、迷子になっていたのをようやくのを探し出してもらえたような子供のような
そんな顔だった
「あ・・・奈津実、先に寝ててね・・・」
こちらを見た奈津実に少しだけ笑った顔は、今にも泣き出しそうで
うん、と
答えたけれど、奈津実は眠れなかった
震えていたに、そんな顔をさせる電話の相手は誰なんだろう
もしかして、やっはりまどかなんだろうか
奈津実はまどかが大好きで、だけども大好きで
だから苦しかった
わからなくてどうしようもなくて、辛かった

次の日、自由行動にまどかも拓也もいなかった
「二人は問題行動を起こした罰として先に帰した」
氷室はそう言っただけで、それ以上は言わず
結局も奈津実も、沈んだ気持ちのまま その日を過ごした
修学旅行が終わろうとしている
それぞれの心に、不安と戸惑いを残しながら
その関係に、きしみを作りながら


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