修学旅行 (尽×主)


、ちょっといいかな」
朝ご飯の後、先生からの注意を聞いて解散した中、拓也がに声をかけた
修学旅行の、自由行動の日
「え・・・・?」
「ちょっと来てくれる?」
「え・・・でも・・・」
ざわざわと、誰もが好きな子を誘って観光にでかけよう、と心浮き足立っている時間
誰もと拓也に気を止めない
「来て、話があるんだ」
拓也は、微笑するとの手を取った
ドキ、と
不安が心に広がって、それでは動けなくなる
半ば無理矢理、腕を引かれて部屋を出た
拓也は、無言で廊下を歩いていった

話があるって言ったから、もしかしたらちゃんと別れてくれるのだろうか、と
は心のどこかで思っていた
別れて欲しいと言った日から、それでも僕はが好きだと ずっと言い続けて まだ恋人のふりを続けてきた拓也
苦しくて、切なくて、
の心は彼といると締め付けられるようになっていく
嫌いで別れたんじゃなかったのに、
今はもぅ、そんな拓也に想いは全て冷めてしまった
好きでもない人と、恋人同士のふりをして
そこに想いがないのに、周りさえ二人は恋人だと思っていればそれでいいのか
には、拓也が理解できなかった
そして、その理解できない行動は、この修学旅行まで続いていた
拓也の背中を見上げながら、は不安でいっぱいの心をなんとか落ち着かせようとした
尽、
尽が今、ここにいてくれたら
大丈夫だよって、言ってくれたら
こんなに恐いと思うことも、ないのに

人のいない廊下までを連れてきて、拓也はようやく止まった
強く引かれていた腕が痛い
ようやく解放されて、はおそるおそる拓也を見上げた
「あの・・・拓也くん・・・」
相変わらず微笑して、拓也はそこにいる
「今日の自由行動、誰かと回る?」
「え・・・? まだ決めてないけど・・・」
ドキン、と心が跳ねた
クラブの子と回ってもいいし、奈津実と二人でもいいなと思っていた
奈津実はまどかにアタックしてから決める、と
そう言ってた気がするから その結果次第、と
今は奈津実の返事待ちの状態だった
だからまだ誰ともちゃんとした約束はしていない
その言葉に、拓也はにこっと笑った
「そう、よかった
 だったらがいなくても、誰も探したりしないよね」
「え・・・?」
には、拓也の言葉の意味がすぐには理解できなかった
だが、続いてされた行為には 身体がとっさに拒否反応を示した
側の壁に背を押し付けられ、肩を掴まれて、キスされた
昔みたいな、優しいキスじゃない
無理矢理に、力ずくで奪っていくキス
それは、長く長く続いた
どれだけ嫌だと思っても、
どれだけもがいても、拓也はびくともしなかった
男の子って、強い
男の子ってずるい
嫌なのに、逃れられない
こんなキスに、何の意味があるんだろう

「どうしてこんなこと・・・するのよ・・・」
ようやく解放されたは、うつむいて声を絞り出した
咽から嗚咽が漏れる
泣きたくないのに、涙がこぼれた
無力な自分
逃げられない
「拓也くん・・・私拓也くんのこと好きだったけど、
 こんなことする拓也くんは、好きだなんて思えない」
声が震えた
だけど、どうしても言わなきゃならない気がした
「私、もう拓也くんのこと好きじゃない
 触られるのも嫌、こんなこと・・・しないで・・・」
この身体も心も尽のもの
他の人になんか触れさせたくない
「やめて・・・」
それでも、拓也は微笑しただけだった
落ち着き払った声で、優しい笑みをたたえながら言う
「でも、じゃ僕の力にはかなわないだろ?」
そのまま、その手が腕をつかみ、制服の上着にかかる
ゾク、と
瞬間言い様のない不快感がを襲った
嫌だ、
こんな風にされるのは
拓也に、触れられたくない

拓也の力は強くて、がどんなにもがいても外れなかった
たくし上げられる制服に、下着があらわになる
首筋に、胸元に、
くちづけられて、そこに小さな赤い花がさいた
「いやっ、やめて・・・っ」
こんな場所で
誰かが来たら、とか 誰かに見られたら、とか思わないのか
むしろ、その方が彼にとっては都合がいいのか
「あまり大きな声を出したら本当に誰か来るよ」
おとなしくして、と
囁いた声は、やっぱりいつもと同じ 穏やかな声だった
「嫌・・・・・っ」
「無駄だよ、
 じゃ、僕の力にはかなわない」
だが、その瞬間
誰もいない静かな廊下に、呆れたような、怒ったような
声が響いた

「ほんまに、悪趣味やなぁ」

こんな独特の喋り方をするのは、クラスで1人しかいない
「まどかくん・・・」
「さっさと手ぇ離せ
 警察呼んだらレイプ罪で死刑やで」
ヒラヒラ、と手にもった携帯を弄びながら、軽い口調でいうその表情は、見たこともない位に厳しいものだった
拓也の手から、すっと力が抜ける
「君も暇だね、人の邪魔ばかりして・・・」
ため息と一緒に、冷たい声が吐き出された
「別れた女強姦しようとしてる奴には言われとぉないな」
軽蔑と、怒りの混ざった眼差しで、まどかは拓也を見遣ると 冷たく微笑した
「はよ消えろ
 ムカムカして今にも殴り倒しそうや」
見たことのないようなきつい顔のまどかと、
やれやれ、といった様子でため息をついた拓也
しばらく二人は黙っていたが、やがて拓也がの側から離れた
そのまま、何も言わずに廊下の向こうへ消えていくのを はただ呆然と見送った
急に、力が抜けた

「ほんま、あいつアブナイな」
「ありが・・と、まどかくん・・・」
へたへた、とその場に座り込んだに、まどかは苦笑した
朝食の後、奈津実に捕まって この後一緒に回ろうと言われた
別に予定もなかったし、いいかな、なんて思っていた所に に話しかける拓也の姿が目に映った
なんか様子が変だと思って
二人が部屋を出ていくのに、嫌な予感がした
目の前の奈津実が、何か言って、京都の観光マップなんかを持ち出して
楽しそうに笑うのに、曖昧な返事を返しつつ
どうしても、気になって仕方がなかった
拓也が、みんなが思っているより温和で品行方正な男でないことは なんとなくわかっていたから

「大丈夫か? たてるか?」
「ちょ・・・と・・・無理・・・」
ごしごし、と涙を拭って、は力なく笑った
まどかが来てくれなかったら、あのまま拓也に何をされていたか
想像しただけでぞっとした
緊張していた身体から、ようやく力が抜けて 今度は立てなくなってしまった
「えへへ・・・ごめんね・・・
 きてくれて・・・ありがとう・・・」
本当に恐かった
拒絶は何の力も持たなかった
圧倒的に押さえ付けられて、制服も下着もぐちゃぐちゃ
身体に、キスの痕がふたつついた
それが、気持ち悪くて、仕方なかった
「ほんまアブナイやっちゃな
 目離したら何するかわからん」
まだ僅かに震えている身体を、まどかがぎゅっと抱きしめてくれた
「え・・・」
「こーしてたら、ちょっとは安心せーへん?
 俺は襲ったりせーへんから、落ち着くまでこーしとき」
ぽんぽん、と軽く背中を叩かれて
優しい言葉をかけられて、
は小さくうなずいた
温かくて強いまどかの腕が、妙に妙に安心した

その日、もうみんなでかけてガランとしたホテルを、とまどかは昼前に出た
どうせだから、ちょっとでも観光しようと
まだ不安な顔をしていたを外へと連れ出して、まどかは笑った
「大丈夫やって
 あんな奴からは俺が守ったるから」
俺が側にいるかぎり、あんな奴には指一本触れさせへん、と
強気の発言に はようやく微笑した
(尽みたい・・・)
自信家で、いつも快活に笑ってて、守ってやる、なんて言うのが二人よく似ていて
はようやく心か落ち着いた気がした
まどかの優しさに、今は甘えていたい

波瀾の修学旅行
はまだ、尽の元には戻れない


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