秘密空間 (尽×主)


文化祭が終わり、後夜祭が終わって、ようやく一週間が過ぎた
体力も気力も使い果たしたというような尽にやっと訪れた、今日は予定のない日曜日

「尽」
「んー?」

同じく、予定を入れなかったは 昼すぎ尽の部屋をノックした
「そろそろ起きない?」
「んー・・・もぉ昼か・・・」
やはり疲れがたまっていたのか、珍しく自力では起きてこれなかった尽が、の声に重いまぶたを開けた
ふわぁ、と
大きく欠伸をして、それから微笑してに視線をやる
「今日はデートじゃないの?」
「うん、今日は家にいるの」
ふーん、と
言った尽のいるベッドへと腰掛けて、は隠し持っていた書類のような紙の束を膝に置いた
「尽にプレゼント」
「ん? 何?」
「こないだの文化祭のアンケート」
笑ったに、尽は驚いてその顔をみつめた
アンケートなんかやったっけ
後夜祭が終わった後は、一度総括の会議をしただけで、あとは日常に戻ったと思っていた
文化祭委員の仕事も、終わっている
「2年の文化祭委員がね、独自にアンケート取ったの」
強制ではなく自由返却のアンケートは、回収率70パーセント
多分、こんなにも皆の心を掴んだイベントも、生徒会長も今までになかった
こんな風に、反応が大きく返ってくる行事なんて他にない
「凄いでしょ? 誉めて」
「・・・うん、すごい」
ぽかん、と
尽は受け取った紙の束をめくりながら、自然顔がほころぶのを隠し切れなかった
どのアンケートにも「楽しかった」だの「また来年もやってほしい」だの
主催にとって何よりの反応が書いてある
微笑して、尽は嬉しそうにこちらを見ているに言った
「ありがとう、
「ううん、尽こそ、おつかれさま」
頬を染めて笑ってくれるに、愛おしさが溢れる
手をのばしたら届く距離
すぐそこで、自分を見ているに 尽はそっとキスをした
優しく、触れて、そのまま、舌をからめとった
の笑顔が見たかったから
に喜んでほしかったから
それだけのために頑張ってきた自分
これは何よりの褒美だ
「尽・・・」
「ありがと、
こんな風に笑ってくれて、認めてくれて、楽しかったと言ってくれて、
あげく他の生徒達の声まで持ってきてくれたなんて
こんな風に、してくれるなんて
「大好きだよ」
悪戯っぽく、その目を覗き込んだら は顔を真っ赤にさせて言葉をつまらせた
「大好きだよ、
もう一度、キスをする
何度でも、する
そのまま身体をベッドに押し倒して、何度も角度を変えて唇を重ねた
苦し気な吐息が漏れるたび、心が熱くなる
を好きだと感じる
抵抗しないから
最近のは、こうやって目を潤ませてこちらを見つめて、
抵抗もしないし、嫌だとも言わない
心が、ぐらぐらする
、そんな風だと止まらなくなるよ」
覗き込んだ瞳が、自分と同じように揺れているのがわかった
ああ、も想ってくれているんだろうか
「好きだよ」
呪文のように繰り返して、儀式のようにキスをする
お互いの体温を口移すように、想いの全てを伝えるように
尽はを抱きしめた
の腕も、そっと尽の背に回った

ここは、二人だけの空間

「気持ちいいや」
くす、と
突然尽がくすぐったそうにして、の髪にキスをした
って体温高いね、女の子だからかな」
「そう・・・かな」
抱き締められた腕は強くて、ドキドキした
頬をよせた胸は、まるで年上の男の子みたい
「尽ってほんとに男の子なんだね・・・」
「何を今さら」
「だって・・・」
毛布の中でじゃれあうようにして、抱きしめあったままベッドを転がる
「だってそういう風に見えないもん」
弟だし、と
言いかけて、その言葉は飲み込んだ
「男は基本的に女の子より強くできてるんだよ」
女の子を守るために作られたんだよ、きっと
「だったらいいのに」
「少なくとも俺はそうだよ」
クス、と微笑した尽に、はまた顔を真っ赤にさせた
秋の、少し肌寒い午後
こうして、静かな時間
二人抱き合ってベッドの毛布に潜り込んでいると、くすぐったくて幸せになる
時間が止まっている気がする
、好きだよ」
「・・・・うん」
囁きに、小さく答えたは、揺れる目でこちらを見上げている
初めて、肯定の言葉をもらった
それで、尽は一瞬 まるで惚けたようにのその視線を見つめ返していた
「好き・・・だよ」
「うん」
多分、天と地がひっくり返ったってこんな風な気持ちにはならない
驚いて
それから信じられなくて
嬉しいなんて気持ちは、そのあとでやっと出てきた
が、今腕の中で、この想いを受け入れてくれた
嘘みたいだと、思った
こんな禁忌の、想いが伝わるなんて

あとはただ、無言でを抱きしめた
けして手放さない
絶対に、側を離れない
愛しさが何倍にも跳ね上がって、胸が焦がれる程にを想った
ここにいる、自分に一番近しい存在
誰よりも愛しい人
好きになってはいけない人

でも、ここには二人しかいないから

「ね、ここでずっと暮らせればいいね」
「そうだね」
ベッドの中
お互いの体温をわけあって とても温かくて
ここには二人しかいない、二人の空間
誰もこの想いを咎めない
手をつないで、キスを繰り返して、
何度も何度も好きだと伝えて
二人、まどろみに落ちていく
秋の午後 幸せなひととき
今はここでおやすみ
大好きな、


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