意識 (尽×主)


軽快な音楽は心浮き足立つ

夜、尽の部屋の前を通りかかったの耳に、聞き慣れた音楽が聞こえてきた
「・・・尽?」
ノックして、そっとドアをあけると、尽が本を片手に部屋のまん中に立っている
「あ、
「何してんの?」
どこか民俗音楽風の、
でも心がうきうきするような、くすぐったいようなこの曲
「これ、どうしたの?」
たとえばキャンプの夜だとかを連想させるこの曲は、はばたき学園では体育祭で使われる
「フォークダスンをやろうと思ってね」
「・・・・いつ?」
尽の手にあるのは、フォークダンスについての解説本
そんなものどこから見つけてきたのか、踊りのステップや足さばきなんかがこまかく図解されている
「後夜祭で」
一曲が終わると、続けてまた違う、だが同じくフォークダンスに使われる曲が始まった
「あ、これもなんか聞いたことあるね」
「うん、けど、踊り方知ってる?」
「知らない・・・」
俺も、と
尽は開いているページを指した
はばたき学園の体育祭のフォークダンスには1曲しか使われない
他の曲は、聞いたことがあっても踊りまでは知らなかった
尽も、
「今勉強してたんだけどね」
なかなか一人だとよくわからなくて、と
尽は本をベッドに投げ出すと、の手をとった
「え?」
「ちょっと手伝ってよ、文化祭委員さん」
そのまま身体ごとひきよせられ、もう片方の手も取られた
「わっ、私知らないよ〜」
「いいから、いうとおりにして」
えーと、と
本に視線を走らせながら、尽があーだこーだと動くのに、ついていきながらはドキドキしているのをどうしようもなかった
同時にちょっとわくわくする
後夜祭でフォークダンス?
尽の企画書や、委員に配られた予定表にはキャンプファイヤーをすると書かれていた
当日のゴミを全部集めて、それを燃やす
その周りで、踊るのだろうか
それこそ、学年なんか関係なく
好きな人めあてで、いつ回ってくるのかドキドキしながら
「ねっ、でもこんなの突然やったってみんな知らないよ?」
「そーだね、みんなで練習しないとね」
くるっ、と尽に身体を回されながら、はその顔を見上げた
「練習するって?」
「昼休みに」
にこり
尽は相変わらずの悪戯な目で こちらを見つめ返すと楽し気に言った
「学校の許可は取ってあるんだ
 文化祭までの一ヶ月間、昼休みの放送でこの曲流していいって」
学校中にはり紙をして、生徒達の参加を促しての、校庭や中庭でのフォークダンスの練習
自由参加の、昼休みの小さな企画
「え? なんか楽しそう・・・」
「だろ? 当日ちゃんと踊れた方が楽しいだろうしね」
オクラホマミクサー、コロブチカ、ベダビッド、フレンドシップミクサー、マイムマイム
本を見て、これならできそうだといくつか選んだ
放送部の子に協力してもらって、音楽もそろえた
今、文化祭ムードで盛り上がっているこの時期なら、昼休みの自由参加の練習にもある程度の人数が集まるだろうと思う
行事ってのは、当日よりもその過程が楽しいのだから
それが有意義であった程、終わった後 心に残るものが大きいのだから
「尽って色んなこと考え付くのねぇ」
感心したように、が言った
「え?」
「だって前例があるならまだわかるけど、こんなのやるの尽がはじめてなのに
 昼休みに練習とか、ゴミ燃やしてキャンプファイヤーとか」
よく考えつくね、と
その言葉に 尽はくすと笑った
「そりゃを喜ばせるためならね」
「え?」
悪戯な目がこちらを見ている
「どうしたらが喜んでくれるだろうって考えるから」
自然と、は赤くなって尽の顔をまじまじと見つめた
「もぉ・・・はずかしいこと言わないでよ」
ドキドキ、と
心臓が鳴っている
どうしようもない位に居心地わるくて、はつないでいた手をぱっと放した
「がんばってねっ、私 そろそろ寝る・・・」
このドキドキの正体がわからなくて、
なのに、最近これを尽に対して重傷な程に感じている
相手は弟だってのに
年下の生意気な、血の繋がった
「逃げないでよ、
ぱし、と
強い力が、の手を取った
ドキ、
また心臓が跳ね上がる
立ち止まった途端、その腕は強く引かれ 身体ごと尽へと引き寄せられた
よろめいたのを、支えられる
まるで後ろから抱きすくめられるように は尽の腕の中におさまった
ぎゅっ、と
尽の両腕が、強く強くを抱く
「ちょ・・・・、尽・・・」
誰もいないのに、囁くように声を上げたら すぐ側で尽が僅かに笑った
、俺のこと意識してるの?」
「え?!!」
ぴくん、と身体が反応したのが、尽に伝わってしまっただろうか
意識している
いつからか、は尽を意識してしまっている
尽がに触れる度
好きだと言うたび
のために、と何かをするたび
彼にドキドキして、どうしようもない自分がいる
この不思議な、感情
普通、弟相手には持たないもの
「嬉しいな」
尽の腕に力がこもって、は身動きもできずに ただされるがままになっていた
言葉が出ない
動けない
だけど、強い腕は安心して、なんだか妙に気持ちよかった
「だって、と俺は世界で一番近しい存在だもん」
気持ちいいはずだよ、と
囁きと同時に、熱いキスがおりてきた
抗う気持ちなんか起こらなくて
ただ、目をとじて応えたに、尽は何度も繰り返し口付けた
優しくて、でも彼の存在を主張する強いキス
「尽・・・」
吐息がもれる
頭がぐらぐらする
何度も何度も舌でかき回されて、思考がマヒしだしたを支えながら 尽はそっと囁いた
「好きだよ、
 誰よりも」

ふわふわと、心踊るような音楽が遠くに聞こえる
尽の腕に抱かれながら、はいい様のない気持ちでいた
意識してしまった尽のこと
何も恐れずに、好きだと言う彼
この部屋には二人きりだけれど、外に出れば二人には彼氏と彼女がいるのに
二人は姉弟なのに
「好きだよ、
心にある不安を言葉にはできず、はただ目を閉じて尽の言葉を聞いていた
好き、
この尽への想いが本当にそれなんだろうか
彼を大切だと想う気持ちや、この不思議な感覚も 血の繋がった者に対する愛情でしかないのではないか
考えだすと、不安に心が締め付けられるようで は小さく息を吐いた
今は、この優しいキスに溺れていたい
ここに二人きり、それだけでいい


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