うたたね (尽×主)


尽がの部屋のドアを開けると、いつもは飛んでくる声が聞こえてこなかった
・・・?」
夜の9時
今日は用事(女)で一緒に帰れなかったから、そのお詫びにと思っての好きなケーキを買って帰ってきたんだけれど
それで、部屋まで来たんだけれど
「・・・なんだ、」
いつもなら、ノックもせずに部屋に入ると 決まって「ノックくらいしなさい」なんて言うのに
今日はベッドの上で 雑誌を開いたまま眠っている
部屋にはノリのいい、人気歌手のCDが流れていて、それで尽は苦笑した
「寝てるのか」

ポスン、と
ベッドに腰掛けて、姉の寝顔を見下ろした
高校2年にしては、幼い顔
眠っているからなおさら、無防備で その姿は尽を妙な気分にさせた
独占欲に似たもの
誰にも、見せたくないと思う気持ち
(のこんな顔見れるのは、とりあえず俺だけだよな)
その髪に触れてみる
毎朝毎朝、セットが決まらないなどとわめきながらドライヤーをあてている髪
今は風呂あがりで、少しだけ湿っていた
愛しさが、溢れ出す
・・・」
その名前を呼んでみる
はじめて、と呼んだのはいつだっただろう
引っ越しで、こちらに戻ってきて、と別々の学校になって
それからすぐだったように思える
高校の制服に身を包んで、坂道を友達と楽しそうに下りてきたの姿を見て なんだか無性に腹立たしかったから
中学の制服なんて着てる自分が、から遠くて仕方ない気がして、切なかったから

、好きだよ」
つぶやいてみる
いつも、冗談ばっかりとあしらわれる言葉
誰よりも、真剣なんだけどな
たくさんいる彼女なんかより、全然こっちが本命なんだけど
姉弟というだけで、それは美しい姉弟愛に摺り替えられてしまうんだろう
普通、こういう感情は「愛」や「恋」には置き換えられない
もう一度、髪に触れた
それから、ゆっくりと唇にキスをした
大好きな
いつからなんて、もう覚えてないけれど
中学に入る頃には、が笑うと嬉しかったし、泣くと悲しかった
背がに追い付いて、力がより強くなって
そうしたら、なんて小さな存在なんだろう、と
俺が守ってやらないと、と
いつしか思うようになって、それから
それから想いを自覚しはじめた
たくさんの女の子達には抱かない「特別」な愛おしさ
彼女より、大切だと思える人
ああ、この人が好きなんだ、と
自覚して、そんな自分に驚いて、苦笑した
相手は血の繋がった姉だっていうのに

あたたかい唇
ふ・・・、と離れるとは少しだけ息を吐いて、何かをつぶやいた
「ん・・・」
起きるかな、と思ったけれど、が一度寝たら ちょっとやそっとじゃ起きないのも知ってる
「拓也・・・くん」
ぽつり、
幸せそうな寝顔から、一番嫌いな男の名前がつぶやかれる
「・・・ひどいなぁ」
もう一度、キスをした
二人がどんなキスをして、どんな風な恋人なのか知らないけれど
間違えないでよ
今、に触れてるのは、俺なのに

弟だから、多分には理解できないこの想い
それでも、ずっとずっとこの胸にある愛おしさは消せず、諦めることもできず
近すぎて、忘れることもできなくて
「好きだよ、
誰よりも、と
つぶやいて尽は微笑した
手に入れる気でいる
誰にも渡さない
だから今は、ゆっくり、おやすみ


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