宣戦布告 (尽×主)


には、彼氏がいる
成績優秀で品行方正な、二宮拓也サン
先生方に受けはいいみたいだけど、俺から言わせればそれだけの男
なんでがあんなのとつきあってるのかわからないけど、
去年の夏くらいからつき合いはじめて、もうすぐ一年になるらしい
今はと同じクラスで、
と一緒に委員なんかをやってるんだって
文化祭委員なんて、似合いもしない
勉強ができるからってだけじゃ、そーゆうのはつとまらないと思うけど

「尽? どーしたの?」
、辞書貸して」

昼休み、突然クラスにやってきた尽に、は驚いて食べていた弁当を置いてドアのところまで出てきた
「辞書? 英語?」
「うん、忘れてきたんだ」
「珍しいわねぇ、尽が忘れ物するなんて」
にっこり笑って自分の席に戻っていったの、その後ろ姿を見る
あれ弟? と
一緒に弁当を食べていた女の子達がこちらを見るので ぺこりと頭を下げて笑いかけて
それから、鞄の中をがさごそと探しているに近付いていった男を見た
(ふーん、あれが)
あれが、の彼氏の二宮拓也?
成績優秀で先生に人気があって?
(たいしたこと、ないじゃん)
親し気な二人
困ったような顔をしたに、彼が自分の辞書を差し出した
それを持って、が帰ってくる
「ごめん尽、私も家に忘れてきたみたい」
うん、知ってる
の辞書は、机の本棚にたててあった
今朝、ちゃんと確認した
ってドジ」
「なによー、あんたも借りにきといて」
はい、と
彼の辞書が差し出される
「拓也くんが貸してくれたから綺麗に使ってね?」
うん、そうくると思ったよ
成績優秀な二宮拓也サンはきっと辞書は忘れず持ってきてるだろうから
「いいの? 借りても」
「いいよ」
にっこり笑ったに、尽も笑い返した
「じゃあ あとで返しにくるよ
 二宮サンにそう言っといて」
「うん」
また笑ったを可愛いと思う
屈託なく笑うその顔
家で見せてるみたいな、ちょっとお姉さんぶってる顔
本当は抜けてて頼り無くて、目が放せないような てんで子供なのに
まるでしっかりしてますって顔してこっちを見てる
「ありがと、
本当はほっぺか、唇にしたいけど
さすがにここじゃ人目がありすぎるから、と
の手をとって、そっと唇で触れた
「つ・・・尽っ」
途端に真っ赤になる
怒ったに、尽は笑ってその手を放した
「大丈夫だって、誰も見てないよ」
可愛くて仕方ない
ドアのところで真っ赤になって怒ってるのを、一度だけ振り向いて確認した
可愛い
大好きな
二宮サンなんかには、渡さない

放課後、教室の前で一人でいる拓也を呼び止めて 尽は辞書を差し出した
「ありがとうございました」
「いや、役にたってよかったよ
 さんまで忘れてるから ちょっとおかしくなっちゃったよ」
姉弟だからやることが似てるね、と
その言葉に尽はにこりと笑った
「いつもがお世話になってます
 あいつ すごい抜けててドジだから二宮サンにもいっぱい迷惑かけてるんだろーなぁ
 ほんと、すみません」
「あ、そんなことないよ
 さんに僕も助けられてること多いし、彼女意外にしっかりしてるよ?」
「でも、結構甘えただから手かかるでしょ?
 あ、でも他人にはそんなに気、許したりしてないかなぁ
 ほんとはそんなことないのに、変にしっかり見せようとしてたりするし」
にこり、
また笑って、尽は相手を見た
これは最初のご挨拶
今まで尽の届かなかった世界で、をかすめとっていった拓也への、宣戦布告
は渡さない
挑戦的な目に、気付いたのだろうか
その言葉の棘に、拓也は少しだけ眉を寄せた
頭のいい二宮サン
気づかないはずないよね
俺はアナタから、を奪ってやる

冷戦に似た最初の出会いは、の登場でス、と幕引かれた
「あれ? 尽、辞書返しに来たの?」
「うん、はもう帰る?
 俺も帰るから一緒に帰ろうよ」
「うん、帰るよ」
教室に入って鞄を取ってきたに手を差し出す
「・・・?」
「それ」
のお気に入りのくまのキーホルダーのついた鞄と、
重そうに持っている体操服s シューズの入った紙袋
それを両方持って、代わりに自転車の鍵をポイ、と投げて渡した
「拓也くん、また明日ね」
「ああ、また明日」
ひらひらと、手ぶらで手を振ったと、
当然のようにの荷物を持つ尽とを、交互に見て 拓也はほんの少し苦笑した
の弟
まったくそうは思わせない、一人の男として宣戦布告に来た尽
これは気をつけないと、と
拓也はため息に似たつぶやきをこぼした
楽し気に何かを話しながら、遠ざかっていく二人を見ながら

二宮拓也サン
あなたには渡さない
誰にもは、渡さない


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理