意識  (鈴×主)


大会や試合や練習の都合に関係なく、試験はやってくる
バスケ部諸君も、この一週間は机に向かってお勉強
耐えて耐えて、ようやく本日終了
チャイムとともに解放されて、和馬は大きくのびをした
出来なんかどうだっていい
魔の時間が終わった
起きてる時間全部をバスケに使ったってかまわないくらい、自由になった

「バスケ部 今度の大会いい線いきそうなんだって?」
「おうよ、俺がいるからな」
ざわざわと騒がしい廊下
試験から解放された生徒達が、楽し気に歩いている
運動部はクラブに走っていくし、バイト組はあくびをかみ殺しながら学校を出ていく
喧噪に似た雰囲気に、和馬は思わずにんまりと笑みを浮かべた
ああ、ようやく日常に帰ってきた
そんな気がする
息苦しかった一週間
家に戻ってから走り込みなんかをやったけど、ボールを追い掛けてないと物足りない
ボールに触ってシュートして、それから

「じぁあ、またな」

廊下を一緒に歩いていた友達
手をふってかけていった彼に、笑って手を振り返してそれから
何気なく、身体の真横
隣のクラスの開け放たれたドアの方を見た
風が、そこから吹いてきたからかもしれない
髪をさらっていく強い風
視界に映ったのは、喧噪の廊下とは別世界であるかのような教室
窓から入る光に 半分透けてしまいそうになってるの姿
そこで、目を閉じて、まるで

「・・・眠ってんのか・・・?

教室には誰もいなかった
一歩入ると、廊下のざわめきは急に遠くなった
ああ、ここは別世界みたいだ
が無防備に眠っている
机につっぷして
いつもはポニーテールにしている髪が さら、と頬にかかっていた
髪をおろしてるのなんか珍しい
いつもと印象が違って、何故か心がソワソワした
(・・・ほんとに寝てんのか・・・?)
鼓動が速くなっていくのがわかった
走ったわけでもないのに息苦しい
目の前のは、和馬の知っているではなかった
いつものは、こんな風に無防備じゃない
あいつはしっかりしてて、男友達が多くて、女に慕われてて
スポーツが得意で、それから

(・・・もっとがさつだ・・・)

まるで眠り姫みたいだ
無意識に、手をそっと伸ばしていた
明るい色の髪が、窓から入る陽にきらきらしている
指先で触れた
さら、としていた
驚いて、手をひっこめる
(びっくりした・・・)
そんな風に 髪がさらっとすべっていくとは思わなかった
バカみたいに、心臓がバクバクいっている
ぎゅ、と
の髪に一瞬ふれた手を、強く握りしめた
は相変わらず、目を閉じている
「何してんだ俺・・・」
呼吸をするのを忘れていた
苦しいはずだ
静かに、そっと息をつく
手は、ぎゅっと握ったままだった
喧噪から遠い教室で一人、握りこぶし
変なの
何、やってんだろう

もう一度、を見下ろした
起きる気配はない
それで、少しだけ安心してもう一度静かに呼吸した
別に、息をしたくらいでは は起きはしないだろうけれど

10分程して、チャイムが鳴った
「・・・っ」
弾かれたようにが飛び起きる
側で、窓の外を見ていた和馬は 突然起き上がったに笑っていった
「お前、心臓止まるぞ」
「へ・・・っ?」
ずっと腕を敷いて寝ていたから、の左頬に 赤く痕がついている
「お前寝すぎ」
「昨日徹夜だったんだもんー」
が、大きくノビをした
腕も、頬と同じように赤い痕がついていた
おかしくなる
ようやく呼吸が楽になる
「成果あったのかよ」
「うーん・・・数学と理科はダメな気がする」
「赤点2個なら上等だろ」
俺なんか3個は確実、と
言って こちらを向いたを見つめた
赤くなったの頬
手を、伸ばした
届いて触れた

「・・・え・・・・・」
「赤くなってる」

の頬は熱かった
それから、柔らかかった
女って、こんなに柔らかいのかと 心のどこかで思った
また呼吸を忘れた

「痕ついてんぞ」
「あは・・・爆睡してたから・・・」

驚いたみたいなの顔
でもすぐに、いつもみたいに笑った
和馬はまだ、呼吸を止めてる

いつまでも見ていたいと思った、だから起こさなかった
触れたいと思った、だから手を伸ばした
意識する
という存在を
確実に、他の誰とも違う形で 和馬はを意識する
呼吸もできなくなるほどに


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