理想の彼女 (鈴×主)


どっちかっていったら、私は大雑把な性格だし
おしとやかでもないし、女の子らしいわけじゃない
じっとしてるのが苦手だし、気は短いし
料理も掃除も洗濯も裁縫も、苦手
オシャレに興味がないわけじゃないけど、
流行りの服より、新しいバッシュが欲しかったり
男の子とデートするより、クラブに出て練習してたい
そういうのって、「理想の彼女」には程遠いみたい
少なくとも、あいつは私みたいなのは好みじゃないらしい

「鈴鹿〜、彼女また来てるぜ〜」
練習中、男子のコートからヒューヒューと声が上がった
丁度、私はコートから出たところで
紅白戦をしてるメンバーのチェックに入ったとこだった
背中に、男子達の動きを感じながら 体育館の入り口のところを見た
「可愛いなぁ、さんは
 こないだつきあってた奴と別れたんだってさ〜オレ立候補しようかな〜」
「ばーか、誰がお前なんか相手にするかよ〜」
ケラケラと、楽し気な声が聞こえる
噂の対象は最近、よく練習を見に来る同じクラスの 
ふわふわの髪がとっても可愛い、いわば学年のアイドル
いつもにこにこ笑ってて、恥ずかしがりやで、ちょっと内気
ああいうのを、女の子らしいって言うんだろうなって思う
そんな子
「鈴鹿〜おまえ最近さんと仲いいよな〜」
「別にそんなんじゃねーよ、うるせーなぁ」
「お前らつきあってんの?」
「ば・・・ばかっ、何言ってんだよっ」
練習中にバカなことばっかり言って、と
溜め息をつきつつ、コートに目を戻した
鈴鹿が誰を好きで、誰とつきあおうがかまわないけれど
なんとなく、気になる
と鈴鹿は最近ほんとうに仲がいいから

練習の後、鈴鹿とが何か話してるのを見た
別に、どうでもいいんだけど
そういえば、今日のモップがけ当番は鈴鹿じゃなかったっけ?

「鈴鹿ーーー !!!
 だべってないで早くしろよっ」
案の定、先輩からどやされて、鈴鹿はまだ話があるといった様子のに困ったように何か言った
(やれやれ)
どう見ても、普通の雰囲気じゃない様子
本当につきあってたりするのかなぁ、なんて
普段の鈴鹿からは想像できなくて、少しだけ苦笑した
「俺、当番だから」
「でも・・・・私・・・・」
見て見ぬふりをして、通りすぎても良かったんだけど
なんだか今にも泣き出しそうなの様子に、そうもいかない気がしたんだな
「鈴鹿、当番代わってあげるよ
 あんたさっさと帰りな」
驚いた顔でこっちを見たに少しだけ笑って、
ぐずぐずしてる鈴鹿の背中を押して、体育館から追い出した
おせっかいな気もするけど
あんなところで立ち話しされると、気になるじゃない

それから30分程して、モップがけが終わった頃に 鈴鹿が体育館に戻ってきた
「何? あんた帰ったんじゃないの?」
「いや・・・あいつ送って戻ってきた」
「なんで?」
「なんでって・・・お前に当番押し付けちまったから・・・」
息を切らしてる様子に、呆れた
を家まで送って、わざわざ走って戻ってきたってこと?
別によかったのに
それにもう終わったし
「なんだよ、可愛くねーなぁ
 せっかく戻ってきたのによぉ・・・」
「可愛くなくてすみませんねぇ」
ロッカーにモップを片付けながら、悪態をつくと鈴鹿が大きく溜め息をついた
「ごめんな
 あいつ、なんか別れた男のことで悩んでたから・・・相談乗ってただけなんだ」
パリパリと頭をかきながら、言うのがなんかおかしくて
別に聞いてもいないのに、そんな説明してるのが笑えて
「別に聞いてないでしょ」
軽く言ったら、また困ったような怒ったような声で奴は言った
「おまえってほんと可愛くない奴〜」

それから、夕方の道を鈴鹿の自転車で二人乗りして帰った
「お〜ラクチン〜」
「落ちるなよ」
「誰に言ってんのよ〜」
ケタケタと、いつもみたいに笑って
いつもみたいにバスケとかテレビとかの話をして
でも、ちょっとだけ気分が沈んでた
私は可愛くない女の子で、友達
鈴鹿の顔見てたら、鈴鹿がのことを好きなのが なんかわかった気がした
ああいう、ふわふわした女の子が鈴鹿は好きなんだなぁ、なんて
ちょっとだけ切なかった
別に、鈴鹿が誰を好きでも関係ないんだけど

「なぁなぁ、さぁ
 つきあってた奴と別れたんだけど、その男がまだのこと好きなんだってさ
 けど、はもう好きじゃないんだって」
「へぇ」
って呼ぶのも、
なんか照れくさそうに女の子の話なんかするのも、
知らない素顔
鈴鹿も恋愛なんかするんだ、なんて
言ったら振り落とされそうになった
「あっぶないな〜!!!」
「おまえなぁっ、人が真剣に言ってんのにっ」
「ちゃんと聞いてるでしょーっ
 いいじゃん、は未練ないならアタックすれば〜?」
「でも、そんな急に・・・なんか都合良すぎだろ?
 あいつ別れたばっかりで、俺に色々相談してたのに」
「そぉ? いいんじゃない? 別にそんなの気にしなくても」
「お前にはわかんねーんだよ、恋愛のことなんか」
「だったら何で私に言うわけ?」
鈴鹿の肩に手を置いて、
夏のはじまりの風を受けながら、ちょっとだけ
やっぱりちょっとだけ切なくなった
どうせ私は女の子らしくないから
恋愛のことなんか、わかんないよ
「私、好きな人なんかいないもん、わかんないよっ」
大声で言った
自転車をこぎながら、鈴鹿が笑った
胸が、ぎゅっとなった

坂道で、自転車から下りて、鈴鹿の背中を押して走る
二人して駆け上がりながら 少しだけがうらやましかった
ああいう風に可愛かったら、こんな風に想ってもらえるんだなぁなんて
はやっぱ可愛いもんなぁ、なんて
鈴鹿に言ってもらえるんだなぁとか
思って、それから苦笑した
そんなこと、考えても仕方ないんだけど

「今日、助かったよ、ありがと」
「いいよ、そんなの」
家まで送ってもらって、
暗くなった道を鈴鹿は帰っていった
「お前、いい奴」
「どういたしまして」
手を振って、奴の姿が見えなくなってから家に入った
いい奴、なんて
まるで男友達に言ってるみたい
所詮その程度か、なんて
やっぱりちょっと、胸がぎゅっとなった
鈴鹿なんて、どうでもいいはずなのに

理想の女の子
あんな風にふわふわなのがいいんだって
少なくとも、あんな風にはなれない私は、鈴鹿の理想の彼女にはなれない


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