一週間後 (姫×主)


その日、まどかのバイトが終わるまでの間 は近くの図書館で時間をつぶそう、と
雑誌を手に空いている席に座った
人が少ないこの時間、ここにいるのはほんの2.3人
時計をチラ、と見て まどかからのメールが入ったらすぐに気付くように携帯を机の上に置いて
は雑誌のページをめくった
新しいケーキ屋だとか、新しいお店だとか
まどかと行きたいなぁ、なんて思いながら見るのは楽しい
新しいもの好きなまどかは、たいていそういう話には乗ってくれたし、いつも「じゃあ今度行こう」と言って連れていってくれた
全てを許した、あの旅行から1週間
まどかのことを想うたびに、胸がドキドキして、大好きだと再確認する
まどかへの、想いが増していくのが 自分でわかる
幸せな気持ちになる
唯一、和馬のことだけを除いて

突然、思考を遮るようにドカっと側の席に座った人がいた
机の上に分厚い辞書を置いて、がさがさとノートなんかを広げていく
「・・・?」
チラ、と
顔を上げて、相手を見た
同時に彼も こちらを見た

「・・・え?」
「・・・・・・・

和馬がいた
あの旅行から初めて顔を合わす和馬に、思わずの身体が緊張する
「よぉ・・・」
ばつ悪気な顔をして和馬は言い、それからフ、と目をそらす
「あのさ・・・」
「え?」
不安なドキドキが響いている
彼に触れられてから、和馬を恐いと感じる
男の子の力は強くて、自分にはどうしようもなくて
だからとても恐かった
まどか以外の人に触れられるのは嫌だから、自分はまどかのものでありたいから
だから今は、和馬が恐い

「悪かったな・・・こないだは」
ぱりぱり、と頭をかきながら和馬は言った
「ごめんな、俺・・・なんかとんでもないことして・・・」
返事もできず、和馬を見ているに、彼は辛そうな顔を一瞬見せた
「俺、おまえのこと好きだから・・・
 おまえにそーゆう顔されると辛い
 お前に軽蔑されるようなことしたけど、・・・・辛い」
ごめん、と
もう一度言った和馬に、はううん、と
無意識に首を振った
大好きな和馬
大切な友達
ごめんね、と
つぶやいたら 和馬は情けないような顔をして笑った
「なんでお前が謝るんだよ」
「え・・・・」
クシャッ、と
和馬の表情が柔らかくなって、それには一気に安心した
「お前ってほんと・・・」
独り言みたいなつぶやき
その後で、かわいいな、なんて言葉が聞こえて は少しだけ赤くなった
また和馬が笑った

それから、どうやら夏休みの宿題をやりに来ていたらしい和馬を手伝って は文法やら漢字やらを教えつつ、いつもみたいな時間を過ごした
和馬はいつもの和馬だったし、も彼に告白される前のような気持ちでいられた
(ごめんね・・・)
彼の気持ちには応えてあげられないけれど
もしそれを和馬が許してくれるのなら、和馬とは友達でいたい
彼のちょっと後先考えないような性格が好きだし
自分も辛いだろうに、それでもごめん、と
そう言ってくれる素直さが好きだから

1時間程して、携帯が静かに振動した
「あ・・・」
まどかからのメール
今終わった、と
待っていた連絡が入った
「ああ、俺のことは気にしなくていいぜ
 おかげで進んだし、後はなんとかするから」
明るく言った和馬に、は安心して笑った
「うん・・・ごめんね」
「いいよ、いけよ」
ヒラヒラ、と手を振った和馬に は笑いかけて開いたままの雑誌を手にとる
同じようにばいばい、と手を振って そのまま図書館を出ていった
後ろで、切な気に苦笑した和馬の姿は見えなかった

「よ、一週間ぶりやな」
「うん・・・」
駅の側でまどかと合流したは、その顔をまともに見れずに少しうつむいて笑った
心が軽い
大好きなまどかと、それから和馬
彼を想って苦しかったけれど、彼はあのことを謝ってくれた
友達でいることを、許してくれた
彼を失わなくてすんだ
「なんや、ちゃんとこっちみー?」
「え・・・」
恥ずかしくて、
旅行でのことで、マトモにまどかの顔を見れなかったに まどかは意地悪く笑って すい、と顎をあげさせた
強いまどかの手
触れられてドキ、とする
「なんや機嫌良さそうやん?」
「え・・・・・?」
心情を見抜かれているのか
同じく御機嫌に笑ったまどかは、にス、と口付けた
「?!!!」
駅の前
人通りのまん中
「き・・・姫条くん・・・っ」
の顔見たら 思い出した」
悪戯な目が見下ろしている
その言葉に思い当たって、は今度は顔を真っ赤にさせてうつむいた
「ぎゅぅーって目つぶって、可愛かったで」
「もぉっ、恥ずかしいからやめてっ」
あの旅行から一週間
まだ昨日のように思い出せる まどかの腕の感触
彼に抱かれた夜
真っ赤になったを まどかは満足そうに抱き寄せた
「さて、ほんなら今日はどこに行こーか?」
「・・・・」
未だドキドキがおさまらず、
和馬の暗い影もなく
は頬を染めたまま、まどかを見て言った
「新しいお店ができたんだって・・・」
「そーか、そら行っとかななぁ」
陽に焼けた、快活な笑顔
誰もが格好いいと言う、容姿
肩を抱かれて は幸せに微笑した
まどかがここにいる
自分に触れていてくれる
それだけで、嬉しい
この時間が、ずっと続けばいいと願う

夏の日
おりてくる陽射しは、二人と同じくらいに熱い


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