体育祭 (姫×主)


本日は晴天なり

今日は体育祭
朝から委員が忙しく走り回り、軽快な音楽がグラウンドに響きわたる
3年生は、いわばチームのまとめ役
それでなくても高校生活最後の体育祭に、がぜん気合いが入るってものだ

まどかの出場競技は100メートル走と学年男女混合リレー
どのクラスも陸上部やサッカー部を出してくる、いわば勝負どころの競技
出ているメンツも足に自信のある顔ぶれで、そんな中まどかだけが帰宅部である
「姫条で勝てるのかよ」
気合い一発、とはちまきを締めなおしたまどかに、そんな声が聞こえたきた
(あん?)
振り返ると、競技には参加しないと言った一派が、イスに座って話している
「これ点数でかいのに、負けたら優勝逃すんじゃないの?」
「ま、どーでもいいけど」
不快な会話
競技決めの時言った、勉強のさまたげになるから体育祭の競技には出ない、という彼らの言葉が蘇った
「おーおー、言うてくれるやん」
イライラしたものが腹にたまっていく
人それぞれ
勉強が大事で、だから競技練習なんかやってられないという人もいれば
勉強なんかやってるより、こういうお祭りごとに力を入れたい人もいる
どちらかといえば後者なまどかには、「勉強の邪魔になるから」なんて言葉は理解できない
だけど、それでも人それぞれ、と
この怒りに似た感情を押し殺していたのだけれど

「ほんなら、おたくらが走ってこれば?」
まどかと彼らの険悪な雰囲気に、周りで何人かが反応した
「おたくらが勉強したいんはわかるけどな
 せやったら来んといてくれるか? 気合いいれてるこっちの志気が下がるわ」
文句だけ言って、あげく「どーでもいい」と言うのなら
応援もせずに、ただ座って喋っているだけなのなら
「来んでええで
 オレらはオレらだけで楽しむから、帰って受験勉強でもしとったら?」
同意の声が多くしたのは、やはり誰もが不愉快に思っていたからか
彼等が居心地悪そうに顔を背けたのを見て、まどかは大きく息を吐いた
せっかくの行事なのだから、思い出を作りたい
そう思うのは、受験をする予定がない気楽な者の言い分にすぎないのだろうか
そして、あの男子生徒達のように、競技に参加していないもまた この体育祭を無駄な時間だと思っているのだろうか

スタート地点に並びながら、まどかは応援席を見た
はいない
朝から数人の女子と一緒に姿が見えず、それで妙な気分になったのだ
どこか不満に似た気分
は体育祭なんて、と
この日を楽しむ気がないのかもしれない
(あーあ・・・つまらん)
100メートル走は午前の部の大目玉
これをでタイムのいい上位5名が午後の部で決勝を行う
(の応援があったら絶対決勝残れんのになぁ)
つまらない、と思う
面倒だ、といいながらも おしつけられた100メートル走には気合いが入っていたのに
スポーツならクラブをやってる奴にも負けない、と
自信があるからなおさらに、にいいとこ見せたいと思ったのだ
陸上部の奴らよりもいいタイムを出したりしたらそれこそ、格好いい、なんて言ってもらえるんじゃないか、とか
思っていたのに
思っていたのに
(肝心の、おらんし・・・)
まどかはやれやれと、ため息をついた

それから何人もが走って、まどかの番まであと2人となった
同じクラスから出た女子は結局決勝に残るタイムは出せず、クラスの期待はまどかにかかっている
「姫条ーーーーーーっ」
応援席から、声が飛んできた
目玉の競技だけあって、どの応援席からも怒声に似た声が飛んでくる
カラフルなポンポンが飛んだり跳ねたり、賑やかなことこの上ない
が、まどかの気持ちは冷める一方で、
どうせ頑張ったっては見てないし、などと不満をたれていた丁度その時
「姫条ーーー、こっち見ろーーーっ」
やる気の冷めかけていたまどかは、何なんだ、と
その声援に応援席に顔を向けた
「お前が気合い入れれるように用意したチアリーダーだぞーーーっ」
「・・・・・はぁ?」

一瞬、よくわからなかった
悪友の声、盛り上がる応援席
その一番前に、がいる
なぜか、チアリーディング部のユニフォームを着て、恥ずかしそうに立っている
「ほらっ、、応援っ」
「あ・・・あの、姫条くんがんばってっ」
の顔が真っ赤なのが、ここからでもわかる
そして、
この突然の状況に言葉もないまどかの顔もまた、赤くなった
「姫条ーーーっ
 おまえこれで決勝残らなかったらさんと別れろよーーーっ」
「気合い入れろーーー」
悪友の声が飛んでくる
何を勝手なことを、と
だが、一気に 冷めていた気持ちが上昇した
そうか、このためには朝からいなかったのか
競技を押し付けられて あまり乗り気じゃないまどかをやる気にさせようと
誰が言い出したのかこんな余興が用意されたわけだ
「あかん、見とれて走れんかもしれんーーーっ」
「あほかーーーっ、走れーーーーっ」
ぎゃーぎゃー、と声が飛んでくる
真っ赤になりながらも、胸の前で一生懸命ポンポンを振っているに、自然口元がゆるんだ
(あかん、嬉しすぎや)
気持ちが一気に盛り上がって、
嫌な気分が全てふっとんだ
大好きな
が、体育祭なんて、と
そんな気持ちでいないでいてくれたことが、
こうして自分の応援のために一生懸命声を上げていることが、今は何よりも嬉しい

結局、見事に上位5人の中に入ったまどかは、決勝に進出した
「お疲れさまっ」
戻ってきたまどかにが駆け寄る
、なんでそんな格好してんねん〜びっくりしたでっ」
興奮さめやらぬままに、公衆の面前で抱きしめると、が真っ赤な顔をした
「え・・・と、私今年は応援団なの」
「は? 応援団?」
「今年は最後の体育祭だから絶対優勝したいねって女の子達みんなで言ってたの
 それで、運動得意な子は競技で頑張って、苦手な子は応援団で頑張ることにしたの」
それで、自分は応援団なんだと は笑った
「はー、女の子って大人やなぁ・・・
 男なんか勉強の邪魔になるから〜とか言ってリタイヤしとる奴おんねんで?」
しげしげと、を見つめる
見られて、照れたように短いスカートを気にしながら は少し笑った
「せっかくの体育祭だから楽しまなきゃ損なのにね」
そして、と
は今も応援席で大声を張り上げながら応援しているまどかの悪友を見遣った
「みんなはやる気まんまんだね」
彼らの気迫に押されて、こんな格好にさせられてしまったけれど
まどかのためだから、と
その言葉に、結局従ってしまった自分だけれど
「私の応援・・・ちょっとは効いた?」
恥ずかし気に、伺うように言ったに、まどかは笑った
「効いた効いた
 実はほんまにやる気なくしててんで〜」
がいないから、と
それは言わなかったけれど、
恥ずかしそうに、それでも破顔したを愛しいと思って
それからもう一度 ぎゅうっと抱きしめた
「決勝も応援たのむで
 1位取ってくるからな」
そして、と
悪戯な顔でつけたしてみる
「1位取れたら、キス1回な」
ス、と
指でほんの少しだけ の唇に触れて まどかは笑った
真っ赤になったに満足しながら、勝てる気がするとひとりごちる
そう、勝てる気がする
がこうやって、まどかのことを見ている限りは
こうやって側で、笑っていてくれるかぎりは


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