わがまま (姫×主)


最初はが手に入ればそれでいいと思ってた
他の男になんかとられたくなかったから
側にいてほしかったから
オレだけを、見ててほしかったから
だけどいつか、それだけじゃ足りなくなる
もっともっと、求めてしまう

「えー?! なんであかんねん〜」
「明日は模試だって前から言ってたじゃない・・・」
とある土曜日
いつものように学校帰りに、二人は並んであるいていた
「せやったか〜?
 せっかくバイト休み取れたのに〜
 ここんとこ全然二人で遊んでへんやん〜・・・」
「う・・・ん
 姫条くんバイト忙しいもんね」
「せやねん・・・なんや一人やめたからなぁ・・・」
まどかは大きくため息をついて、隣のを見遣った
つきあいだして2ヶ月
色んな男が恋心を抱いていたを独占できて、
こうして毎日のように一緒に帰ったり電話をしたりできてまどかは満足している
満足している、はずだった

「なぁ、模試くらいさぼられへん?」
「え?! 無理だよ・・・」

困ったように、がまどかを見上げた
わかってる
一流大学に進むにとって、模試が大切だってことも
わざわざが前から模試だと言っていた日を忘れて、休みを取ってしまった自分がばかなんだってことも
たけど、最近ほんとうにデートをしていない
というよりは、久しぶりの休みなのだ
せっかく取った休みを、何もしないで家でごろごろしているなんてたえられない
せっかく、休みなのに

「あーあ」
結局、まどかはもんもんとした気分のまま 家に帰ってきた
は帰り際にごめんね、と
明日の模試のことを謝っていた
が悪いんじゃないけれど
それでも、不満がつのる
「オレより模試が大事なんや・・・」
言葉にはしなかったけれど
あまりに子供すぎると、自覚しているから余計に

次の日の昼前、携帯が鳴った
昔よく遊んだ女の子からだった
「なんや、久しぶりやな〜」
「姫条何してんの〜?
 暇だったら来ない〜?」
女の子からの誘い、というのがちょっと気にかかったけれど
(変な気はない、友達なんやから・・・)
自分に言い訳するように、まどかは携帯を握りしめた
「いくいく、どこにおんねん?」

そこにいたのは女の子ばっかり5人程
どの子も同じようなお色気の服そうで、まどかに愛想よく笑いかけた
「久しぶりよねっ、まどかとこんな風に遊ぶのって〜」
「そうそう、姫条つきあい悪いんだもん〜」
きゃらきゃらと笑う女の子達に まどかも笑った
懐かしい雰囲気
こういう風に軽い女の子達と遊ぶのが自分は好きだった
自分に気があることを隠さない女の子達との、まるでゲームみたいな恋愛ごっこ
「私まどかのこと好きだったのにショックだな〜」
「でも姫条と合うの? さんって〜」
悲愴感のない会話
軽いだけの、でもソワソワするような楽しい会話
「んー、微妙に合わんとこもあるんやけどな〜
 今日も模試やからってふられてん〜」
せっかくバイト休み取ったのに、と
冗談めかしく言ったら、女の子達は口々に言った
「えーっ、休みの日に模試〜?!!!
 そんな子つまんないよ〜やめちゃえば〜??」
チク、と
心の奥のどこかが痛んだけれど、まどかは笑った
「住む世界が違うんだと思うけどなぁ」
「休みの日はあそばないとねぇ」
姫条もそう思うでしょ、と
言われてまどかはうなずいた
それからまた笑った

夕方、どっと疲れて家に向かって歩きながら まどかは一人ため息をついた
大学受験に向けて、クラスも微妙な雰囲気になってきている
真面目な優等生達と、まどかのようにふらふらしている一派
お互いに、言わないけれど相容れないと感じていて
このあいだも、体育祭の出場競技決めでもめた
勉強のさまたげになるから競技練習なんかしている暇がないと言った男子生徒の言葉がまだ頭に残っている
彼の志望校は一流大学
もまた、そんなことを思って 体育祭競技には参加しないと言ったのだろうか

(あーあ・・・・・)

ため息をついた
のことは大好きだ
今日みたいに きゃぴきゃぴした子達と遊んでいるとつくづく思う
はあんなに積極的じゃないし、お色気でもないし、
その想いを武器に、迫ってきたりはしない
だけど、それでもまどかはの優しさが恋しくなる
の側にいすぎて、に甘やかされすぎたのか
たった何時間かあの子達といただけで、どっと疲れてしまった
楽しかったけど、どこか、何か違うと感じた
「姫条とさんは合わないって」
「そーかもしれへんなぁ・・・」
笑って言ったけれど、
合わない、は本当のことかもしれないけれど
だけどやっぱり自分が求めているのはで、それ意外の何でもない
たとえ合わなくたって
見ているものも、休みの日の予定がこんなにも合わなくたって
がええんやもん・・・ 」
つぶやいて、まどかは顔を上げた
その先に、がいて
それで、一気に身体に緊張に似たものが走った
家の前に、あきがいる

?!!」
「・・・あ」
はうつむいて立っていて、まどかの声でこちらを見た
「どーしたんや?!!」
「あ・・・えと・・・
 模試って早く終わったら帰ってもいいらしくて・・・
 私、早目に終わったから・・・」
ぐらぐらと、心に不安に似たものがうまれた
「会いにきてくれたんか?」
「あ・・・うん・・・
 でも予定が入っちゃってたんだね、ごめんね・・・」
にこっと、
は笑ったけれど、その目は沈んだ色に揺れていた
「いつからいたんや・・・」
「え?
 あ・・・・ううん、そんなには・・・」
困ったように笑って、手をふった
は嘘をついている
「いつから待ってた?」
その手首を掴んだら、驚いたように目を見開いた
「あ・・・・・・・」
模試ってふつうは何時に終わるものだったっけ
今は夕方
何時間、ここで待っていたのか
と遊べなかったことに拗ねて、他の女の子と遊んでいた自分なんかを
、なんで電話せーへんねん」
無意識に、声が怒ったような色になった
「どんだけ待っててん?
 電話したら抜けてきたのにっ」
「そんな・・・だって・・・悪いから・・・」
の声が少しだけ震えた
うつむいて、はまた少しだけ笑った
「遊んでるのに 電話なんかしたら迷惑でしょう?」
優しい言葉
だけどそれは、まどかを不安にさせる
不満がつのる
「オレやつたら電話するで
 といたいから、電話する」
掴んだ腕に、勝手に力が入った
華奢な手首
「いたい・・・姫条くん・・・・」
がまどかを見上げた
途端にほろっと、その目から涙がこぼれた
「・・・・・・・・・・・・!!!!」

衝動
ひどい衝動が、まどかの心をいためた
は無理をしている
力一杯抱きしめて、その髪にキスをした
ここで待っている間、何を考えていただろう
昨日さんざん会えないことに 子供っぽいわがままを言ったから気にして
それで大事な模試だっていうのに、早くに終わらせてきてくれたのに
肝心のまどかはいない
どれだけ待っても、帰ってこない
「ごめんな・・・・・
多分、まどかが何をしているのか には想像がついただろうと思う
まどかは、二人がつきあいだしても相変わらずモテて
相変わらず女友達が多くて、
友達だからと、友達としてまどかは女の子と遊ぶことが多い
自分にしてみれば、男友達と半々
でも、恋人であるからしたら、それは多く感じられたことだろうと分かっていた
そして、
それでもは何も言わなかった
今のように

、オレ女の子と遊んでたんやで」
抱きしめたまま、言った
腕の中の大切な
誰にも取られたくなくて、側にいてほしくて、手をのばした
手に入れて、わがままになった
もっと欲しいと思った
好きだと、もっと言って欲しいと思った
どれだけ自分が想っても、同じだけの想いが返ってきていない気がした
は何も言わないから
まどかが女の子と遊んでいても、何も言わないから
「なぁ、
 オレが他の子と遊んでても、妬かへんの?」

ぐいっと、が自分から身を放した
うつむいた肩が、震えている
「だって・・・・友達なんでしょ?」
頼り無い声
「そんなの・・・」
言えない、と
だけど、ぽろぽろと雫が地面に落ちていった
「オレは妬くで
 が仲のええ鈴鹿とか、千晴とかいうやつとか・・・
 クラスの奴も、に話しかける男全部に」
不安の正体はわかっている
自分はこんなにも想っているのに、は想っていないから
の気持ちがわからないから
「わ・・・私は・・・・」
ふるふる、と
が首を横にふった
その手で顔を覆うようにして、それ以上は言葉をつむげなかった
・・・オレな、妬いてほしい・・・」
そっと、その震える身体に触れた
「オレばっかりを好きな気がしてたまらんくなる
 は、オレが他の子と遊んでてもそれが友達やったら何ともないんか?」
ふるふる、と
はもう一度首をふった
「せやったら・・・」
「だって・・・・っ」
また、涙が落ちた
「だって姫条くん・・・楽しそうなんだもんっ
 友達といるのにまで妬いて・・・そんなことでうっとうしいって思われたくないっ」

好きな人が、自分以外の女の子に笑顔を見せるのが平気なわけがない
つきあってるっていったって、まどかは今までに何人もの女の子とつきあってきているし
だから自分だって、いつまでも恋人でいられる保証はどこにもない
大好きだから、恐くなる
今日だって、恐かったから電話しなかった
ここへ来て、まどかがいなかったから きっと友達と遊びに行ってしまったんだとがっかりして
それから急に恐くなった
女の子といるかもしれないと思ったら、手にした携帯のボタンを押すことができなかった
ちょっと近所に出かけてるだけで、待っていたら帰ってくるかもしれない、と
それでここでもう2時間近く立っていた
不安は、胸をしめつけた
まどかを好きでいることは辛かった
自分だけが、こんなに好きなのかもしれないと思うから
自分もまた、まどかの中を通り過ぎていくだけのその他大勢なのかもしれないと思うから

、そんなことはありえへんから・・・」
まどかはもう一度、をだきしめた
今度はそっと、優しく
「な、だから、そんなにできた女でおらんでええねん
 他の子と遊ぶな、とか
 自分以外の女としゃべんな、とか・・・言うてーや
 そしたらオレ、に好きでいてもらえてるんやなぁって思えるから」
の髪をなでながら、まどかは苦笑した
昔はうんざりだった女の子の独占欲
それを求める日が来るなんか思ったこともなかったけれど
、オレ に妬いてほしいんやで」
そして、
「オレは我慢なんかせーへんで
 無理やってわかってても、言うからな
 オレ以外の男と喋んな、とか、オレ以外の男を見るな、とか」
いたずらっぽく付け足した
そう、不可能だとわかってる
友達なんだから
自分達は、世界で二人っきりなわけじゃないんだから
それでも、想いだけは伝えていたい
でないと、エスパーじゃないんだから相手の気持ちなんかわからない
「な、
 はもっと、オレにわがまま言うて」
腕の中で、小さくがうなずいたのを感じた
破顔して、まどかはもう一度だけ強くその身体を抱きしめる
お利口に、綺麗につきあえなくていい
わがままもやきもちも、独占欲も全部さらけだして、一緒にいたい
想いが一人だけのものでないと、確認したい
手に入れるだけじゃ、もうダメだ
今はもっと、もっとと望む
それは、だけを想っている自分の、わがまま


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