クリスマス (姫×主)


クリスマスの夜
寒い冬の道を、まどかは全速力で駆けていた

「だぁぁっ、もぉこんな時間やんっ」
昼までで終わるはずだったバイト
それが昼過ぎ、メーカーの部品に欠陥品が出たという電話一本で急きょ残業決定
さっきまで倉庫で部品の点検をしいられていた
「はよ行かな終わってまう〜〜〜」
バイト代は2割り増しでもらったものの、今日はクリスマスパーティ
一番の目的であるとのダンスを逃したら何の意味もない、と
まどかは理事長宅までのダッシュをかれこれ15分も続けていた
(あーもー、しんどいねんっ、遠いねんっ)
やっと坂を駆け上がり、ででんっと建つその屋敷に足を踏み入れて、まどかは大きく息を吐いた
バイト先から直行したけれど、時間はもうあとわずかしかない
始まって3時間程で終わるパーティの、もう2時間以上は余裕でたっているのだ
熱気に似た空気に包まれた会場に足を踏み入れて、まどかは目当ての姿を探した
は今日はどんな格好で着ているのだろう
もう誰かと踊っただろうか
今、誰といるのだろうか
キョロキョロと、しばらく探していると、クラスメイトが笑って言った
探してんの? 向こうに鈴鹿達といたよ」
それで、まっすぐに彼の指した方へと歩くと テーブルの側に楽し気に話しているを見付けた
とりまきは、鈴鹿と珠美と、バスケ部の男数名
っ」
ぶんぶんと、手を振ってかけよると、がこちらを見てぱっと顔を輝かせた
ああ、笑ってる
もしかして、待っててくれたのだろうか、と
一瞬まどかの心が明るくなった
「おせーな、姫条
 何やってたんだよ、しかも何だよその格好」
同じ様にこちらを見て顔をしかめて鈴鹿に、まどかは溜め息まじりに笑った
「バイトやバイト
 なんや急に欠陥品探しやらされてなぁ、慌てて来たから手洗うくらいしかできんかったわ」
着替える暇なんかあるか、と
言った言葉に、誰かがおかしそうに笑った
「そんなことより、
 踊ろうや、そのためにダッシュしてきてんから」
「え・・・・・」
白いふわっとしたドレスに身を包んだキレイな
まるで天使みたいなその白い手を取って、まどかはを抱き寄せた
「おい・・・・さんは俺達と話してんだぞ・・・」
「姫条、おまえなぁ・・・」
外野のブーイングが聞こえたけれど、まどかには当然耳を貸す気などなく、
とまどっているの手をひいて、そのままダンスの輪の中に混じった
音楽が心地よく響いていて、
抱き寄せたの身体があたたかくて、無性に気持ちが高ぶった
こんな日に、を他の誰かのところへ置いておくなんてできるわけがない
ここに来たからには一人占めだ、と
まどかは溢れそうな想いに、その肩をぎゅっと抱いた
「きゃっ・・・・」
ぽす・・・と、
自分の胸のあたりにが顔をうずめる形になって
赤くなったを見下ろして、まどかはちょっとだけ笑った
可愛い
大好きな
腕の中にいるこの存在を、ずっとずっとこうやって抱きしめていたい
・・・・」
また、ぎゅっと腕に力を入れた
するとまたぽすっ、とがまどかの胸に顔をうずめて、
今度はクスクスと笑った
「ん? どした?」
「ふふ、姫条くん  オイルの匂いがする」
顔を上げたの顔に、まどかがあわててを少しだけ放した
「うわっち、ごめん
 そーや、ドレス着てんのにオレ バイトのままやから汚れるわ」
バイトが終わって速攻来たから、当然スーツに着替える暇もなく
そのままつなぎで来たのだった
こんなに綺麗な服をきているを抱きしめたりしたら、が汚れてしまう
今頃気付いて、まどかは申し訳なさそうにを見た
「ごめんな、気回らんと・・・」
「ううんっ、平気」
だがは笑って、それからきゅっとまどかの服を握った
心なしかの方から身を寄せている気がするのは、気のせいだろうか
くすくすと、は笑って楽しそうに言った
「姫条くん クリスマスまでバイトなんて大変ね」
おつかれさま、と
その言葉に、まどかはまた愛しくなってを抱き寄せた
「んー、しかしアレやな
 やっぱドレスの女の子につなぎの男は不釣り合いやなぁ」
ツースでバイトしたら良かったか、と
笑っていうと、は大真面目な顔でぶんぶんと首を振って、言った
「そんなことないっ、姫条くん格好いいよ」
それから頬を真っ赤にそめて、
まどかが嬉しくて口許がゆるむ頃には すっかりうつむいてしまっていた
それでも、なんだかとても嬉しくて
まどかはぎゅっとを抱きしめた
ああ、本当に天使みたいだなぁ、なんて
ガラにもなく思ってみたりしながら

その夜、結局パーティが終わるまでをほぼ独占していたまどかは、帰りもさっさとを連れて理事長宅を後にした
、これプレゼントやねん」
「え?」
帰り道、歩きながら渡されたものに驚いたような顔をしたに、まどかはにっと笑ってみせた
「え? 私に・・・・?」
「せやで、お返しはデート1回なっ」
「いいの・・・? もらっちゃって」
「もちろんや、のために選んだんやから」
先週、へのプレゼントとして選んだもの
ピンクサファイアのネックレス
ホワイトゴールドのチェーンとデザイントップによく合ったピンク色の石がとてもとても気に入って、に似合いそうだなぁと一目惚れしたのだ
箱を開けて、それを取り出したが嬉しそうに頬を染めた
「ありがとう、すごく可愛いっ」
「どういたしまして」
きっと似合うだろうなぁ、と
思っていたら店員が笑って言った
「ピンクサファイアは、女の子に素敵な恋をさせてくれる石なんですよ」
素敵な恋
それはもちろん自分とだろう、と
そこまで思い上がっているわけではないけれど、そういういわれだというのも気に入った
「かしてみ、つけたる」
から、その華奢なネックレスを受け取って、くるりと後ろを向いたその首に腕を回した
微かな音をさせて、それがの身を飾ると まどかの気分はとても満たされた
「なんかええなぁ、がオレのあげたもん身につけてくれてるのって」
首元に輝く石
レベルの高い男性と、誠実なおつきあいをする・・・と、
その石は、そういう恋を導くのだとか
何度も嬉しそうに礼を言うに、まどかはにこりと笑った
「近い未来にそうなったらええなぁ」
この石が二人を結んでくれるかもしれない
そのためには、につりあうようなレベルの高い男であることが条件なのだけれど

クリスマスの夜
ひそやかに、ピンクの石に願などかけて まどかはの手をしっかりと握って歩いた
寒い夜に、それでも二人は温かい


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