本気宣言 (姫×主)


秋の心地いい風の吹く日曜日
まどかは同じクラスの友達とダブルデートを楽しんでいた
気の合う悪友と、美人の女の子二人
楽しい休日だった
昼過ぎに、あのカフェの前さえ通りかからなければ

「あれ、あそこにいるのってさんだろ」
「え?!」
、と
その名前に反応して、まどかは辺りを見回した
本日の相手は、クラスメイトの女の子
それはわかっていても、の名前を聞くとどうしても反応してしまう
だが、辺りにそんな人影はない
「どこにおんねん?」
「あれ、あそこのオープンカフェのところ」
友達の指指す先には、落ち着いたオャレなカフェがあり
そこのオープンテラスのテーブルにらしき少女が見えた
「あ、ほんまや・・・」
やっと、見付けたまどかの表情が、ふと暗くなる
「わ、あれ彼氏かなぁ」
「ちょっと格好いいね、あの人」
の向かいには、顔の知らない男がいる
学ランを着ているということは、他校の生徒か
なんにせよ、まどかにとって気分のいい光景ではなかった
「まぁ、あんだけ美人だったら彼氏くらいいるだろ」
心情を知ってか、友達が苦笑して言った
「お前にさんはつり合わないわなぁ」
「・・・なんでやねん」
「え〜だって、さん優等生でしょ?
 バカっぽい姫条にはアタシ達みたいなのの方が合うよぉ」
「そうそう」
女の子達にまでいわれて、まどかは溜め息をついた
もう一度だけを見遣る
相手の男と楽し気に話していて、それに妬いた
本当に、つきあっているのだろうか
の口から、あんな他校の彼氏のことなんて聞いたこともなかったけれど

どんよりと、暗い気持ちでまどかはその後を過ごした
「もぉ姫条なんか急にノリ悪くなったよ〜」
「何ぼーっとしてんの?」
女の子達の抗議に愛想笑いを返しつつ、
さっきのあの男のことが頭から離れない
笑っていた
自分以外の男といる時でも、あんな風に楽しそうにしているのが気に入らなかった
そして、ふ、と苦笑する
自分もこうやって、他の女の子と遊んだりしているのだけれど
の比ではない程に、チャラチャラ遊びまくっているんだけれど

家に帰ってからも、どうしようもなく沈んだ気持ちになって
まどかは迷った挙げ句、結局に電話した
「姫条くん? どうしたの?」
戸惑ったような、それでも明るい いつものの声が聞こえた
「声、聞きたなってん」
不思議そうな受話器の向こうのに、言ってみる
「今日、何しとった?」
天気も良かったし、と
その言葉にの声が弾んだ
「今日はね、友達と映画を見たよ
 姫条くん気にしてたやつ、あれ良かったよ」
そういえば、少し前雑誌に載ってたのをおもしろそうだと言ったのを覚えていたようで
の声にまどかは苦笑して、小さく溜め息をついた
(友達やんな・・・・・)
らしくなく、こんなことで戸惑っているけれど
まどかは心を決めた
こんなにも、こんなにものことばかりで
せっかくの休日も楽しくなくて
が、他の男といるのが我慢ならないというのなら
「なぁ、
 俺な、もぉ他の子とは遊ばんことにしたから」
「え?」
突然の言葉に、が驚いた声を上げて、その意味を理解しきれずに受話器の向こうで黙った
「もぉ他の女の子とは遊んだりせーへん
 決めたんや」
「え? ・・・・・・え?」
言ったら、すっとした
そう、
に本気なのだ
ハマっているだけ、とか
ちょっと新鮮だったから、とか
美人だから、とか
そういうのではなくて、なんかもう
「オレ、に本気やから」
言い切って、まどかはようやく息を吐いた
まるで告白みたいなこの言葉も、には意味がわからないだろうが
それでも、
「ど・・・どーゆうこと?」
「ええねんええねん、わからんくても
 オレの自己満足やねん、言いたかってん」
笑って、言って電話を切った
誰かを本気で好きだなんて、思ったことがなかったけれど
恋愛はゲームみたいなもので、
女の子は、その賞品みたいなもので
色んな子に興味があって、どの子も同じくらい好きで
遊びたい時に、遊んで
束縛されずに、自由気ままにお互いいられて
そういうのが、良かったけれど
今までずっと、そんな恋愛しかしてこなかったけど
(あかん、だけは別格や・・・)
あんな男に取られるのは嫌だった
が、自分以外の男に笑いかけるのも嫌だった
誰かに本気になるということは、
きっと面倒で、煩わしいことも多くて
かなわなかったりした時に、イライラしたり苦しくなったりするんだろうけれど
それでも
「ええねん、もぉ覚悟は決めたんや」
それでも、を誰かに取られるよりはマシだと思った
が欲しかった
自分だけのものにしたかった
だからもう、他の女の子はいらない

次の日、学校ではささやかな噂になっていた
の彼氏が他校にいて、
昨日デートしていた、と
クラスで女の子達が騒いでいた
「うるせぇな」
不機嫌を露に、和馬が溜め息を吐く
「あんな外人がの彼氏なわけあるか」
「ん? なんやおまえ、知ってんのか? あの男のこと」
鞄を机に置いて、隣の和馬を見遣ると、頬づえをついたまま大袈裟に溜め息をついて和馬は言った
「きら高のやつだろ
 前にきら高と試合した時に、と応援に来てたよ
 メル友か何か知らねえけど、彼氏じゃねーよ
 だいたいあいつ日本語マトモじゃねぇし、英語使うしやな奴なんだぜ」
「・・・外人さんには見えんかったで?」
「向こうで暮らしてたんじゃねーの?」
「ふーん・・・」
チラ、と
ふてくされている和馬を見て、まどかは苦笑した
そういえば、和馬もを好きだったから こういう噂は気分が悪いんだろうと思う
ありがたい情報だったけれど、それでもまどかの心は落ち着いていた
「まぁ、女の子は噂話が好きやからなぁ」
余裕たっぷりに言って、席につきひとつ大きくノビをした
心を決めてしまえば楽だった
にたとえ彼氏がいようとも、関係ないと思う
この気持ちが本気だと、もう認めてしまったから
その男から奪えばいいこと
攫っていってしまえばいいこと
この想いに従えばいいこと
今までのように、無理矢理に抑えていたのに比べたらなんて楽なんだろうと
まどかは笑った
が好きだと、
これからは、誰に何の遠慮もなく言える

 


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