修学旅行-思い出- (姫×主)


修学旅行の自由行動の日
はまどかに誘われて、まどかと行動をともにしていた
「いやぁ、と回るとどこでも楽しいなぁ」
朝一番に迎えに来たまどかは、とりあえずの観光コースを熱心に案内してくれて 昼過ぎに大半の見学を終えた
「なんか雨降ってきそうやなぁ・・・」
空模様がなんだか妖しい
朝は晴れていたのに、今は曇天
見上げてもうん、とあいづちを打った
まどかといる時間は楽しくて、
周りのことなんか見えなくなってしまう程夢中になった
逆にまどかはきっと、自分を楽しませようとめいっぱい気を使ってくれたのだろう
それにふと気付いて、少しだけ申し訳ない気分になる
この曇天にも、は今まで気づいていなかったのだから
「どした? 」
「ううん、楽しかった」
ありがとう、と
その言葉にまどかが笑う
「ええねんええねん、
 こんなとこ何回も来てつまらんなーって思ってたけどな
 と一緒やってのがポイントやねん
 俺も楽しかったしな」
場所じゃないねん、相手やねん、と
少し照れたようなその顔に、ぽつっと
最初の雨が降り出した
「うわ・・・降ってきたな」
慌てて、空を見上げる
同時に腕を掴まれた
「きゃっ」
「走るで、
 これはひどくなりそうや」
「えぇ?!!」
まどかが駆け出したのに、慌ててついて走った
に合わせて少しはゆっくり走ってくれているのだろうが
それでもまどかの足は早くて
引かれている腕が離れてしまったら、きっと追いつけないだろうと思った
悠長に考えている隙は本当はなかったのだけれど

「うわー、あっという間やったなぁ・・・」
必死に走って、近くの茶店に駆け込んだすぐ後に、雨は土砂降りになった
「すごい・・・・」
なんとか、そんなに濡れずにすんだものの この雨では帰れない
「おねぇちゃーん、お茶2つ〜」
そんなことはどうでもいいのか、さっそく店に上がってまどかが奥に声をかけた
「姫条くん・・・」
「せっかくやし雨止むまでお茶していこ〜や
 ここ本格的でうまいって有名なんやで」
オレの友達の間で、と
まどかがにっと笑う
和風な茶店
晴れている時には外でもお茶が飲めるようで、なんとなく京都という雰囲気が出ている
店の隅には雑貨もおいてあるようで少しだけ興味をそそった
これはこれでいいかもしれない
思い掛けないことだったけれど、まどかといるとどんな状況でも楽しくなる
まどかには、その場を楽しむ才能があると思う
「はいはい、修学旅行なん?」
店の老婆がお茶を二つ運んできた
「せやねん、いきなり降られて困ってんねん」
「ほんなら止むまで雨宿りしていったらええ」
「そーさしてもらうわ」
にこっと、
いつもの調子のまどかに、は感心して溜め息をついた
いつも思うけれど、まどかは誰が相手でもよく話す
ポンポンと言葉が出てきて、相手を楽しませてしまう何かを持っている
すごいなぁ、と
感心してると、いぶかし気にじっと顔をみつめられた
「何見てんねん?
 何かついてるか?」
「え・・・ううん」
慌てて、お茶を手にとった
こんなにもまどかのことばかり考えている自分を見透かされそうで恥ずかしかった
今はお茶に集中しよう
そんなことを考えて、手の中の器を見た
抹茶だろうか
いい薫りが広がった
「ん・・・にがっ」
だが味は想像とは違っていて、
思わず声を上げたに、まどかが面白そうに笑った
「あはは、はじめてなんか?」
「うん・・・」
古い木の机には、まどかの注文したみたらしだんごが並ぶ
「オススメやで」
「うん」
なんだか、照れくさかった
まどかはにこにこしてこっちを見ていて、自分の反応を楽しんでいる
「・・・は・・・恥ずかしい・・・」
うつむいたら、また可笑しそうに笑われた
「なんかが嬉しそうなん見てるのが好きやねん
 こっちまで嬉しくなるやん
 今度は大阪に来たいなぁ
 もっといっぱい案内してやるのになぁ・・・」
相変わらず、まどかはこちらをじっと見ていて
その視線を感じて真っ赤になりながらも も笑って答えた
「うん、いつか来たいね・・・」
まどかの町
きっと活気があって、楽しい町なんだろうなと思う

しばらくしても雨は止まなかった
「まずいなぁ・・・そろそろ戻らんと集合時間に間に合わんな」
時計を見てまどかはいうと、そのまま席を立って店の奥へと消えていった
「・・・・」
雨は少しはマシになったものの、こんな中帰ったらバス停につく前にビショ濡れになってしまう
(どうしよう・・・・)
それでも、集合時間におくれるわけにはいかなかったから、
はソワソワとまどかの消えてしまった奥を見遣った
やっぱり濡れるのを覚悟で走るしかないのだろうか

しばらくして戻ってきたまどかは、手に古い番傘を持っていた
「なぁに? それ」
「傘貸してってゆうたら、これくれた」
「え?」
広げると、一体何年前のものなのか
あちこちに痛みがあったが、それでもちゃんと傘の形はしていた
「なんや風情あんなぁ・・・」
「すごい・・・はじめてみた」
「なんにしても、アイアイ傘やで
 さ、かえろ」
「うん」
見送りに出てくれた店の人に礼を言って、二人年代物の傘を手に店を出る
雨のしずくが傘にあたってパララと軽快な音をたてた
それが新鮮で、妙にくすぐったかった
まどかの腕がの肩をだいている
「もちっとくっつきって、濡れるやろ」
「う・・・うん」
されるがままに、抱かれて
は真っ赤になってうつむく
本当にまどかは、簡単に身体に触れるからドキドキして仕方がないのだ
まどかには普通のことでも、こっちには大変なことなのに
好きな人に抱き寄せられて、平気な顔なんてできないのに
「いやぁ、たまには雨もええなぁ」
「うん・・・・」
まどかは御機嫌で
もくすぐったく、それでも幸せで
二人、パララの音を聞きながらバス停まで歩いた
素敵な、思い出になった

結局、集合時間ぎりぎりで、ホテルについた途端二人ともダッシュでクラスの列に並んだ
(ギリギリセーフだぁ・・・)
息を整えて、点呼を受け、順番に解散していくのを見ていると、まどかの横を通っていった
ぽいっと、
何か白いものがに投げられる
慌てて受け取ってまどかを見ると、片目を閉じてまどかは笑った
先生の目の光る中、渡されたそれを慌てて隠して、
はまどかの後ろ姿をもう一度見つめた
こういう風に特別扱いしてくれて、
いつでも見ていてくれるのにドキドキして、
そして、彼が大好きだと痛感する
その白い袋を手の中でこっそり見ると、まどかの字で「おそろい」と書かれてあった
中には陶器でできたビーズの携帯ストラップ
袋があの茶店のものだったから、傘を借りにいった時に買ってくれたんだろうか
ブルーの柄がとても気に入った
は、手の中でぎゅっとそれを握って こみあげてくる嬉しさに顔を赤くした
まどかが、大好きだ
こういう、ちょっと格好つけなところも

修学旅行の思い出にアイアイ傘と、お揃いのストラップ
の携帯にはブルー
まどかの携帯には赤
揺れて、あの日の記憶をとどめおく


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