修学旅行一日目-夜- (姫×主)


その日、7時に夕食を取り、その後自由時間になった
は、昼間のガムのお礼を言おうとまどかの部屋に向かっていた
どこか売店なんかで会えたらいいな、と
色んなところをウロウロしてみたけれど、まどかの姿は見えず
それで仕方なく、部屋へと向かっていた
どうも、ひとりで男子の それも違うクラスの男子の部屋へ行くというのは気が進まない
恥ずかしいし、どうしていいかわからなくなるから
「あの・・・」
ノックして、出てきた顔にほっとした
和馬が、驚いた顔でそこにいた
「姫条くんいる?」
「あいつなら肝試しに行ったぜ
 お前も行くんだろ? オレも行くから一緒に行こうぜ」
「え? 私は・・・」
まどかに話があるだけだ、と
言う前に手を掴まれてしまった
「鈴鹿くんっ
 私、肝試しは・・・・・・」
引っ張られながらオタオタと、
嫌だと主張するも和馬は聞いてはおらず
「大丈夫だって
 ただの散歩道なんだから、来なきゃ損だろ
 だいたい女子足りないんだよ、男同志で回んの嫌なんだよな」
楽し気に、笑ってそう言った
「でも・・・暗いでしょ?」
「懐中電灯持っていくから平気だろ
 そんなに怖がんなよ
 高校生にもなっておばけが怖いなんてみっともないぜ?」
「そ・・・そなこといったって・・・・」
少しだけ泣きそうになりながらも、
和馬の押しに抵抗できず、
二人はホテルの側の散歩道までやってきた
ガヤガヤと、何人かの生徒達が楽しそうにしている
(あ・・・なんか明るい・・・)
少しだけホッとした
「遅かったなー、鈴鹿」
「おー、片付けやらされてさー」
見渡すと、のクラスの男子も女子も何人かいて
和馬の言うとおり、圧倒的に女子の方が少なかった
「お、さん、来てくれたんだね〜」
「女子いないからすぐ回ってくるよ」
「私・・・姫条くんに話が・・・」
の主張は、修学旅行で妙にテンションの上がっている皆には聞いてはもらえず
来た途端に、出発待ちしていた男子が一人寄ってきた
さん、オレとね」
「え?」
顔も名前も知らないその男子生徒に、は戸惑って和馬を見た
「何言ってんだよ、まだクジひいてないだろ」
「女子は引かないで来た順に回るんだよ
 足りないんだからしょーがないだろー」
和馬とその男子生徒が言い合うのに、困ってしまって
なのに姫条は探しても、ここにはいないようで
は不安な気持ちで、溜め息をついた
ここに来たらいると思っていたのに
それに何だか、早速出発させられそうだし
「ルールはつきあたりの休憩所のベンチからカプセルを持ってくること
 そんで、左の道から帰ってきて
 右は裏庭に出る道らしくて先生に出るなって言われてるから間違えないようにな」
進行の子が説明しているのを聞いて 妙にそわそわとした気分になった
帰ってきた子達の顔を見ても、本当にただの散歩道で
たいしたことはないように思えるのだけれど
なんとなく、知らない人と二人で夜の道を歩くというのが不安で
どうしようもなく、は居心地わるかった
(姫条くんだったら良かったのに・・・)
もしくは、和馬ならまだよかった
どれくらい歩くんだろう
知らない人相手に、何を話したらいいんだろう

「じゃ、出発してね〜」
いわれて、は仕方なく 最初に寄ってきたその男子生徒と出発した
彼は手に懐中電灯を持っていたけれど、とりあえずあたりには灯りがついていて明るかった
「楽しみだね
 カプセルにはそのカップルへのプレゼントが入ってるんだってさ」
「そうなの?」
「企画してた奴らがいってた
 あの100円入れて出てくるガチャガチャのオモチャだって言ってたけど
 なんか楽しみだよな」
遊びを考えさせたら姫条は天才だよ、と
彼の口から出た名前に どき、と
は胸が鳴ったのを感じた
(そっか・・・姫条くん達のクラス主催なんだ・・・)
そういえば進行していたのもまどかのクラスの人だったっけ
2.3人で仕切っていて、忙しそうだったけれど
そして、その中にまどかはいなかったんだけれど
「姫条くん、どこにいったんだろ」
今、ここらを他の女の子と回っているのだろうか
ありえる話ではある
けっこう長い散歩コースだから、5分に1カップル位の割合で出発していたし
まどかがちょうどコースを回っているところだという可能性は高かった
(はぁ・・・・・)
うつむきがちに、歩いていく
時々側でガサ、という音がするたびにビクッとする
キー、というような音が遠くから聞こえることもあるし
ザワザワと、木が妙な音をたてるのも気になった
(やっぱ来るんじゃなかったよ〜)
内心ビビりながらも、とりあえず表面は笑顔で会話をして
は早くコースが終わることを祈っていた
早く早く帰りたい
ああ、また側で変な音がする

最初、明るかった道も、だんだんと暗くなっていった
「危ないから手、つなぐね」
「え?!」
突然、手をとられ、は真っ赤になった
その顔に、相手がにこっと笑って
彼はそのまま懐中電灯もつけずに、どんどんと歩いた
急に早足になって、
も慌てて足を早めた
途端、あたりがひらけて、ベンチがいくつも並んだ休憩所になる
(あ・・・・良かった、やっと半分だ・・・)
あとはカプセルを取って帰るだけ
キョロキョロと、
暗い中 目をこらした
途端、キャアアーーーーーーーーーーーッ、と
ものすごい悲鳴が上がり、
同時に側のしげみから白いものがザザァ、と立ち上がった
「きゃあああっっ」
心臓が、飛び出すかと思う程にびっくりして
身体が凍ったようになった
だが、次の瞬間には腕を引かれて
「逃げよう、さんっ」
彼の声のままに、
彼に手を引かれるままに走った
何が何だか、わからなかった

しばらく走って苦しくなった頃、ようやく彼が足をゆるめた
「ね・・・ねぇ・・・・」
あんまり急で、
あんまり怖くてびっくりして、
走ってきてしまったけれど
よく考えたらこちらは 来てはいけないと言われた右側の道ではないか
このまま進めば、裏庭に出て
皆のいる場所にはたどり着けないんじゃないのか
「ねぇ・・・こっちの道じゃないよね・・・」
乱れた息を整えながら、
まだドキドキしているのを必死で抑えながら
は無言で歩いている彼に言った
「ね、戻らなきゃ・・・」
ここらは草がいっぱいで歩きにくいし、暗い
彼は手に持ったままの懐中電灯をつけてくれないし
何より先程から黙ったままで、なんだか怖い
「ねぇ・・・・・」
不安に、泣きそうになっては足を止めた
「ねぇ・・・戻ろうよ・・・」
それで、ようやく彼が振り向いた
暗いのに慣れた目に、少しだけ彼の顔を見えた
さん、つきあってる人いるの?」
「・・・・・え?」
突然、
こんな時に不似合いな台詞を言われ、
は一瞬キョトンとした
「今、誰かとつきあってる?
 例えば・・・・姫条とかと」
その名前に、またドキっとした
「ど・・・とうして?」
ドキドキしている
さっきの驚きと恐怖のドキドキとはまた違うドキドキが胸を支配している
どうしてまどかの名前が出てくるのだろう
それは、自分だけの片思いで
誰にも言わずに、あたためているものなのに
「いや、なんとなくさ
 つきあってないんだね?」
「・・・うん」
彼の意図が解らずに、
は不安気に答えた
側で木がザワザワと音をたてて、
それではまたびくっと身を固くした
「ね・・・戻ろうよ・・・・」
怖い
さっきまでの道とはずれているから、余計に
本気で、泣きたくなった
どうしてこんなところで、こん話をしているのだろう
「もどろ・・・」
さん」
言葉を遮られ、
は半ば、涙目になりながら彼を見た
「オレ さんが好きだ
 オレとつきあってほしい」
彼は、思いもかけない言葉を告げた
また木が、嫌な音をたてた

一方、
が出発してからしばらくして、進行役の一人があれ?と
あたりを見回してつぶやいた
「今、 来てたよな?」
「さっき出てったぞ」
鈴鹿の言葉に しまっと、と
彼は溜め息をついてぼやいた
「あーあ、誰だよ 行かしたの
 姫条がキープしとけって言ってただろー
 あいつ、来たらキープしとくって条件でおどかし役してんだから」
「あ、忘れてた」
「バカ、怒るぞ、あいつ〜
 に熱上げてんだから、俺知〜らないっと」
「うわー、何で先に言わないんだよー」
「誰だよ、と出てった奴」
「えー、誰だっけ?」
「違うクラスの奴だろ」
「姫条が戻る前に帰ってきてくれたらいいのになぁ」
「あー・・・それがベストだな」
進行役のやりとりに、和馬はあからさまに嫌な顔をした
なんなんだ
キープしとけって、のことをモノみたいに
こんなことなら、意地でも自分がと回れば良かった
自分だって、のことを好きなのに
最近まどかばかりが、と仲良くなりつつあって
なんとなく、気に入らない
連れてくるんじゃなかった、と
和馬は溜め息をついた
その後ろで、聞き慣れた声が飛ぶ
「なに溜め息ついてんねん?
 せっかくの夜やのに楽しんでへんのか〜」
あ、と
進行役が一様にまどかを見て愛想笑いをした
「いやー姫条、トラブった」
「は? 何が?
 それより、来てへんの?」
「そのことなんだけどさ〜」
こーゆうの嫌いやからこーへんかもなぁ・・・」
「いや、来るには来たんだけどな」
「え? まじで?
 どこにおんねん、オレすぐ出発するわ〜」
「いや、だから・・・」
あはは、と
また愛想笑いを浮かべた進行役達に呆れて
和馬が続きを言った
はさっき別の奴と出てったぞ」
「はぁ? なんでやねんっ
 おまえら〜とはオレが行くって言っとったやろ〜」
和馬の言葉に、まどかが進行役達ににじりより
それから情けない声で天をあおいだ
「なんのために1時間も草むらにかくれておどかし役やってたと思ってんねん〜
 キープしとけって言うたやろ〜〜」
「いやいや、ごめんごめん
 忘れてたわけじゃないんだけどな、忙しくてさ
 ほら、けっこうココも大変で」
あはは、と
皆がスマンスマン、と落胆したようなまどかの肩をたたいた
「どーせすぐ戻ってくるから、そしたらにもっかい行ってもらえよ
 ちょっとだけ、待っててくれよな、姫条」
それで、まどかは溜め息をつくと、今迄担いでいた白い布を下ろした
「ま、しゃーないな
 んじゃ、には悪いけどもっかい行ってもらおーか」
やれやれ、と
大袈裟に溜め息をついてゴールの方を見つめた
その目が、なんとなく
いつものチャラチャラしたまどかとは違うようで
少しだけ、和馬はまどかに嫉妬した
多分 まどかもに本気なんだろうと思ったから
そして、こんな風に
を好きだから一緒に行きたい、と堂々と言えることがうらやましかった
自分は、とても言えはしないから

それからまどかは、5分程まっていたが 結局待切れず
とうとう懐中電灯をつかんで立ち上がった
「もーちょい待てよ、一周20分くらいで終わるんだし
 そろそろ帰ってくるって」
「待ってるの性に合わんねん
 逆流して途中でさらったる」
言って、まどかはゴール方向からコースを逆流して走ってゆき、
皆はその後ろ姿に苦笑した
「ま、それで気がすむならいいけどな」

カプセルを取って帰ってくるカップルに会いながら コースを逆流し、
まどかはあっという間に休憩所までたどりついた
「え?」
今迄に会ったカップルの中にはいなかった
だいぶん前に出発して、まだここにも辿り着いていないなんてあり得るだろうか
そろそろ帰ってきていてもおかしくない時間なのに
「なんでやねん・・・」
辺りを見回して、
ここでおどかし役をしている友達の名を呼んだ
「何だよ?」
「なぁ、来ーへんかった?」
?
 あー、来たな、悲鳴上げて逃げてった」
「は?」
「ここで脅かしたら悲鳴上げてそっちに走ってった」
「一人でか?」
「男も一緒に
 ってゆーか、男がひっぱって連れてったって感じか?」
そっち、と
指差した方を見て まどかは何となく嫌な予感がした
「こっちって裏庭やん」
「あれ、そーだっけ
 なんかここで座ってたら方向感覚なくなってさぁ
 元の道戻ったのかと思ってたけど・・・」
まずいな、と
二人して顔を見合わせた
瞬間、いてもたってもいられなくなって まどかは懐中電灯片手に右の道へと走り込んだ
が、何かなっていなければいいけれど

ーーーーーーーーーっ」
がさがさ、と
草ぼうぼうの道を走りながら まどかは辺りを探した
しばらく走ると、遠くに人影を見付けた
?」
「姫条くん・・・・・っ」
こちらを振り向いた影が揺れたのを遠目で確認して、まどかは走り寄る
途端に、人影が走り出した
「な・・・・なんやねんっ」
慌てて、影を追い掛けた
相手は足が遅く、
をひっぱっているせいか、まどかはすぐに二人に追い付いた
「姫条くんっ」
男にひっぱられながら、止まろうとしていたは まどかには泣いているように見えた
っ」
その腕を掴んで引き寄せると、はまどかの胸の中によろろ・・と寄り掛かり、同時に、の腕をひっぱりながら走っていた男もよろけて、その足が止まった
もう一方の手で、その男の腕をつかみ、
まどかはから男をひっぺがす
「おまえ、何逃げとんねん
 なんでこんなとこに連れ込んだりしてんねん
 ルール聞いとったんか? ええかげんなことすんなよっ」
その剣幕に、
相手がひるんだのを感じた
「姫条くん・・・・・」
「大丈夫か?
こいつに何かされんかったか?」
「だ・・・大丈夫・・・・・」
真っ赤になりながら、まどかの腕にだきしめられて
はどうしようもなくドキドキしながら答えた
強い力でひっぱられた時、痛かったけどすごくすごく安心した
今もしっかりと、だきしめてくれている腕が、
今までの不安や恐怖を消してくれた
今、は少しも怖いとは思わない
まどかが、側にいるから
「いや・・・ははは」
まどかに怒鳴りつけられて、男子生徒は乾いた笑いを浮かべ
それから、を見た
さんがオバケとか苦手って聞いたからさ」
そして今度はまどかを見た
「雑誌にさ、相手がドキドキしてる状況で告白とかしたら、オレにドキドキしてると錯角して告白が成功するって書いてあったんだよな」
だから、と
彼はまた笑った
「肝試しだったら怖いからさんドキドキするだろーし
 そしたらOKくれるかなー、なんてさ」
思ったわけ、と
その言葉に まどかは呆れてまじまじと相手の顔をみつめた
何をバカなことを言っているのだろう
それから、困ったようにうつむいたの顔を見た
とにもかくにも、こいつの言うとおりだとしたら、はここでこいつに告白されていたということか
だったら、はなんと答えるのだろうか
この様子じゃあ、返事はまだのようだし
「あの・・・ごめんなさい・・・・・」
小さな声で
はひどく戸惑った様子で言った
その言葉にホッとしながら、当然だと思いなおす
こんなバカげた告白で、がOKを出すわけがない
このバカのおかげで、結局が怖い目をみただけなのだから
「あー、やっぱダメか」
あはは、と
男はまた笑った
「ま、いいや
 ごめんね、変なこと言って」
そして、とても居心地悪そうにして それからまどかに一瞥をくれると、元の道へと走っていった
しばらくすると、足音も消えた

「・・・・・ほんまアホがおるもんやなぁ・・・・」
とりあえず、この逸れた道から元の休憩所に戻るために歩きながら、まどかはつぶやいた
ドキドキしている時に告白したら、自分にドキドキしていると錯角するから告白が上手くいく、だなんて
「そんなん本物とちゃうやんなぁ
 所詮錯角やろ、考えることが幼稚やねん」
ぎゅっと、の手を握りながら溜め息を吐く
はうつむいて、何も言わずについてきていて、
彼の告白に、少なからず動揺しているのが見てとれた
(チクショウ、あんなアホがあと何人おるんや・・・)
はモテる、と実感する
そして、取られたくないと痛感した
「そんなまがいもんのドキドキなんか何も意味あらへんやん
 自分でドキドキさすくらいの勢いがないとあかんやろ」
自分は、にドキドキする
は、どうなのだろう
今、何を考えているのだろう
二人でいて、少しでもドキドキしてくれていたらいいのに、と
まどかは苦笑した
うつむいたの顔は、よく見えない

しばらく歩くと休憩所に出た
は、また何かが出るかもしれないとびびっていたが おどかし役の子はもうひきあげたらしく今度は何も出てこなかった
すんなりとカプセルの置いてあるベンチに辿り着く
「もぉほとんどないなぁ・・・」
腕時計を見ながら まどかがつぶやいた
そろそろ終わりの時間だ
修学旅行は就寝が早いから、と
ぼやいて を見下ろした
、好きなん取りや」
肝試しの証拠品で、カップルへのプレゼント
中に何が入っているか まどかは覚えている
色々悩んで、いくつかにはけっこういいものを入れたりしたのだ
映画のペアチケットとか、プールの招待券とか
男女がバッチリ仲良くなる修学旅行の、これまた定番の肝試し
好きな相手と廻りたい、と
クジを操作している子もいた
そんなカップルにはやはり、この後くっついてほしい、と
あれこれ考えていろんなものを入れたのだ
中にはオモチャもあるのだけれど
(ええやつはほとんど売れたなぁ・・・)
残っているのは赤と青とオレンジのカプセル
は、迷わずオレンジのを手に取った
「お・・・・・」
オレンジは、まどかの好きな色だった
それをが手にとったことが、まどかにはなんとなく嬉しかった
「開けてみーや」
「うん」
パカ、と
カプセルをあけると 中からコロン、と
銀色の指輪が出てきた
赤い小さなガラス玉のついたオモチャの指輪
それでも、は嬉しかった
「わぁ・・・」
可愛い、と
言って笑ったに、まどかは満足する
好きな色のカプセルには、なんとなく好きなものを入れたのだ
指輪も、オモチャだけれどなんだか可愛かったから
そして、
それをが喜んでくれたのが嬉しかった
「はめたろか? お姫様」
「え・・・・・」
まどかがの右手を取って、その薬指にオモチャの指輪をス・・・とはめた
「ぴったり・・・」
うれしくなる
そして、本当にドキドキしている
真っ赤になって、それでも嬉しそうに笑っているに まどかもまたドキドキした
が好きだと、感じた
「左手は本物においとかなあかんから、右手な」
これはオモチャやし、と
まどかは、そのの手をス・・・と口許へと運び
指輪をはめた薬指に、軽く唇を触れた
「?!!!」
とたんに、どうしようもない程にドクン、と
心臓が跳ねて
「あ・・・・」
は真っ赤になって、まどかを見上げた
まどかはただ、無言で笑っただけだった

ドキドキがおさまらないまま、
手をつないで二人して左の道を歩いた
繋がれた手が熱い
顔も火照って胸もドキドキして どうしようもない
本当にどうしようもなくて、はただまどかについて歩いた
まどかはというと、いつも通りに楽しそうに話をして
時々を見下ろして、悪戯っぽく笑った
(き・・・姫条くんってわかんない・・・)
さっきのは、彼にとったら何でもないことなのだろうか
手に、とはいえ
さっきのアレはキスだったし
そんなこと、今までされたこともなかったから本当にびっくりしたのに
まどかは平気そうにしていて、
今もいつもみたいに不敵に笑っている
(・・・・わかんないや・・・・・・)
ただ、このドキドキは不快じゃなく、
まどかが側にいるから、夜の道も怖くなかった
こんなにも違うんだなぁ、と
は感じて、そしてそっと苦笑した
本当に、まどかが好きでたまらない
こんなにも、ドキドキするのはまどかにだけだ
強く強く、そう感じた
胸が、あたたかかった

その日手に入れたオモチャの指輪は の宝物になった
修学旅行の間中、それはの指に光っている


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理